表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てステータス【幸運値】が高いだけのザコとして追放された剣士、レアイベントをすべて発生させて無双する  作者: 森田季節


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/30

27 応援されている以上は勝つ

「ゲーレジェ」でBランク冒険者になるには、とにかく緻密な操作が必要になる。そのランクになると、ステータスの面で相手を圧倒することは無理だ。効率的なレベリングやステータス調整は全員がやっている。


 だかr、ゲームプレイングでの世界になる。動体視力も必要になる。



「ゲーレジェ」をプレイヤー時代の俺はCランク冒険者止まりだった。



 ほかのプレイヤーとパーティーを組んでダンジョンを攻略したりするのも無茶苦茶楽しかっが、Bランク冒険者になって御前試合なんてハレの場に出ることはなかった。



 CからBへの壁は厚い。越えられないプレイヤーのほうが多いし、俺も越えられなかった側だ。







 それを自分で「ゲーレジェ」の世界に転生して、Bランク冒険者としてここにいる。

 本当にうれしい。今の状況そのものがとんでもない幸運だ。





 まずは楽しもう。




 マヒア女神様、この場にいらっしゃっるでしょうか? ありがとうございます。



「くそっ! やはり呼ばれて来るだけのことはあるな! ここまで勝負がつかないか!」



 敵がいら立った声を出す。




 ――ゴインッ!


 ――バシイィン!





 お互いに木刀で多少危険な間合いでも突っ込んでいるが、決定打はない。

【幸運値】がカンストしていても、敵がすべって転んで自滅なんてことは起きないらしい。そりゃ、そんなことばかり発生してたら、幸運というより敵を不運にしてるだけか。





 と言いつつ、互角の相手なら、運が味方してあっさり勝てるかなとどこかで期待していた。

 世界で唯一の【幸運値】999☆だからな。ステータスに☆がついてる奴なんて俺しかいないだろ。




 剣と剣が何度もぶつかり続ける。


「ぜぇぜぇ……」


 だんだん息が上がってくるが、嫌な苦痛じゃない。



 だよな。剣士として戦えること自体が俺にとっての幸せだ。



 ある日突然、最強になったから幸せでしょと言われても、幸せと思えるかは別だ。おそらく過程が消滅してると人間は充実感を味わえない。



 なので、俺は剣士としての醍醐味をとことん味わっている。

 そうそう、こうやって激しい剣戟を繰り返して、強敵と戦いたかったんだ。



「はぁはぁ……アルクと言ったか。お前、いい顔をしてるな」




 俺の剣を受けて、じりじり下がりながらモルトーが言った。




「顔を褒められたことはないから、男に褒められてもうれしいですよ」

「冗談を言う余裕はあるみたいだな。戦うのが楽しくて仕方ないという顔って意味だ。お前みたいな奴はどんどん成長するから怖いんだよ」




 他人から見てもわかるぐらい俺は楽しめてるらしい。




「急成長したって言ったでしょ。だから、近いレベルの奴との実戦経験が少ないんですよ。やっぱりワクワクするものですね!」

「おいおい、Eランクから成長したのはウソじゃないってことか? ここに呼ばれるだけの有望株ではあるみたいだな」



 だな。ここに来られているだけでも上出来ではあるのだ。

 負けても悔いはないという言葉も別にウソじゃない。間違いなくいい経験ができてるし、爪痕ぐらいは残せてるだろう。





 実際、観客席からたまに歓声が上がるのが聞こえる。

 王族や貴族が俺の存在に気づいている。奇跡を起こして教会騎士に叙任されたポポロの横にいた、ただの剣士じゃないぞ。




「あのアルクという男、やりますな」

「さすがバンティスだ。まったく世に出てない冒険者を知っておる」

「あれだけ剣が使えるのに、全然知られてなかったなんて驚きね」




 こんなふうに褒められる冒険者になれる日が来るなんてな。

 俺は俺で、バンティスが推薦した謎の急成長冒険者だ。

 この反応ならバンティスの顔に泥を塗ることもなくなったしな。最低限の役目は果たせた。





 まだモルトーも大きな隙を見せるほど、疲弊しきってはいない。

 というよりお互いに疲弊しているから、隙に気づいてないのかもな。






 このままだとこっちが力負けするかな。

 それこそ奇跡でも起きない限り……。





 動き回っているうちに、ちょうど俺が出てきた通路の逆側に立っていた。




 その先に、ポポロの姿に目に入った。



 手を組んで目を閉じている。




 俺のために祈ってくれている。




「くそーっ! 負けてられるかよ!」




 負けても悔いはないなんて発想は取り消しだ。

 こんなに応援されてるのに、負けてたまるか。



【幸運値】なんて関係ない。実力で勝つ!



 敵のモルトーの太刀筋はオーソドックスだ。ステータス上の差はわからないが、勝ち目はある。



「くっ! そろそろ限界が近いかと思ったが……そうでもないか!」



 モルトーも決着をつけたいらしく、踏み込んでくる。






 敵が踏み込んでくるのに合わせて、俺も踏み込む。

 リスクはあるが、成功すれば一気にこちらのチャンスになる。




 で、そういうリスクなら俺は選ぶ。

【幸運値】を信じさせてもらう。




 モルトーの剣を俺は踏み込みながら――弾く。



「なっ!」



 賭けには勝った。



 俺は隙のできたモルトーの鎧を狙う。




「喰らえっ! 超刺突っっっ!」



「ぶはぁっ!」



 木刀の直撃を受けたモルトーが吹き飛ぶ。



 ほぼ同時にドラが鳴った。

 宮廷御前試合はお互いに戦えなくなるまでやる総力戦ではない。いい一撃が入れば、それで終わりだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ