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捨てステータス【幸運値】が高いだけのザコとして追放された剣士、レアイベントをすべて発生させて無双する  作者: 森田季節


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25 たぶん独占欲です

 バンティスがポポロに視線を向けた。


「それで、そちらのメイド姿の女性は――」

「ポポロと申します」


 ポポロが丁重に礼をする。カーテシーに少し近い。


「職業は盗賊ですが、アルクさんの秘書官の生活のサポートをするのが仕事です。将来的には秘書官のような役割を果たせればと考えています」

「そうか、そうか。君もどうやらなかなかの使い手のようだな。空気でわかる」



 Aランクだとそんなこともわかるんだな。



「それと、マヒア女神様にお仕えする教会騎士です」

「教会騎士!? どう見てもメイドだが……。えっ? アルクに仕えるメイドが騎士なのかね?」




 ネームドキャラが無茶苦茶困ってる!




「というか、教会騎士ということは貴族だね……。失礼をお許しください……」





 そうか、バンティスはAランク冒険者だけど、別に騎士とかに叙任されて貴族階級になってるわけじゃないんだな。ということは身分に関してはバンティスよりポポロのほうが偉くなってるのか。




 いや、そんなことより、あこがれのAランク冒険者が自分のメイドにぺこぺこするところなんて見たくないぞ!




「あっ、お気になさらず。メイドの姿で貴族というわかりづらいことをしてる私が悪いのです。駆け出しの冒険者だとお考えください」



「と言われても……貴族の方がここにいるという考えがなかったもので……。しかもアルクに騎士に推薦されることもあるかもと激励したの、すごく恥ずかしくなってきたな……。すでに部屋に騎士がいたとは……」




 バンティスが気まずそうな顔をしている。

 やめてくれ! かっこいい冒険者の姿でいてくれ!




「本当に、ポポロのことは一回脇に置いてください! 誰だって混乱しますから!」




 バグみたいな設定の奴がいると、やっぱりみんな困惑するんだな。




「こ、こほん……。わかった。ポポロさんのことは見てない前提で話を戻そう……」




 ほんとに申し訳ない……。

 あと、この世界ってやっぱり貴族の影響力って大きいんだな。Aランク冒険者でも貴族でないなら貴族には頭を下げないといけないのか。




「アルク、試合では君は気負わずにやれることをやるといい。対戦カードもまだ決まってないしな」

「はい。最善を尽くします」



「ちなみに、対戦カードはプロフィールを元に王がお決めになる。なので、どういう対戦カードになるかはわからない。不利な試合になってもこっちを恨んでくれるなよ」

「じゃあ、ひそかに王を恨むことにします」




 お互い気の利いたことを言えた。

 ネームドキャラとこんなやりとりができるの、ゲームのファンとして普通にうれしい。



「それでは、いい試合を見せてくれ」




 バンティスは優雅に控え室から去っていった。



 けっこう年齢がいっているはずなのに、十分にかっこいい。ステータスは知らないが【容姿】の数字も高いんじゃないか。



 ちなみにポポロがバンティスのことをずっと見つめていた。見つめるというとロマンティックだが、むしろ銃の照準を合わせているというような感じだ。



 別にポポロがバンティスを恨む理由なんて何もないと思うけどな。やっぱり本音としては貴族扱いしてほしかったんだろうか?






「悪い人ではないようですね」

「当たり前だろ。すごい大物なんだ。俺がBランク冒険者になれたのもバンティスさんに会えたおかげだ」



「ほうほう。そうですか」

「お前、なんか嫌なことでもあるのか? あんまりバンティスさんをいいように思ってないだろ」




 メイドが何を考えてるか確認するのも俺の仕事だろう。




「いえ、なぜか……アルクさんの理解者という顔をしているのが、少し鼻につきました……」


 ポポロが顔を窓のほうに向けた。

 俺から視線をそらしたいらしい。



「自分でも不思議なのですが……これは嫉妬でしょうか……? フクロウの時は抱いたことのない感情なのでよくわからないんです」

「えっ! 嫉妬?」



 ポポロも自分で言ったものの、いまいち納得がいってないようだった。



「別に私はフクロウではないアルクさんに恋心を抱いてるわけではないのですが……ないのですよ?」

「あ、うん、そこはそんなに疑ってない。俺も意識はしてないし」




 年頃の女子と旅をしてたらもうちょっとドキドキするかと思ったが、今までもポポロは従者に徹してたし。割と健全な関係で旅をできていると思う。




「いえ、そこはあっさり突っぱねないでください。女性に対して無礼です」

「なんか、身勝手だな……」



「それに、仮に恋心だとしても、バンティスという方に私がむっとするのもおかしいでしょう? だから、恋心ではないんです」

「まあ、それはそうだな」



「なのですが……でも、なんか鼻についたんですよね?」


 ポポロは首を横に少し傾けた。フクロウっぽいしぐさだ。


「アルクさん、これってどういう感情かわかりますか?」

「強いて言えば、独占欲か……? でも、どっちにしても、俺に尋ねることじゃないだろ」



「あ、それです、それです。フクロウとしてなんか寂しいなと……」




 そういうことか。フクロウ基準で見た時に飼い主が取られた気になったのか。




「すみません、アルクさん、少し構ってください」




 ポポロが俺の肩に顔を埋めてきた。



「やっぱり落ち着きます。巣に戻ってきたような感覚です」



 こ、これは……!

 意識してないみたいなことを言った直後で恥ずかしいが、女子にこういう仕草をされると変な気分にはなる!




 これはもうしょうがない。

 で、もうすぐ試合なのに気持ちがブレるのは困る。






「ポポロ、悪いんだがフクロウの姿になってくれないか」




 ポポロはすぐにフクロウになってくれた。



 俺はしばらくフクロウを抱っこして撫でてやった。



「ポポー、ポポポー♪」



 すごくうれしそうな声だな。


 これが正解だったらしい。そういや、魔物使いと魔物の関係って、親子みたいな時があるって攻略ウィキで読んだ気がするな。ポポロとの関係もそれに近いのだろう。



 俺は試合が始まるまで、ずっとポポロを撫で続けていた。



 試合直前まで動物を撫で続ける男……。バトル物の作品だったら、絶対に主人公サイドじゃなくて、こざかしい技を使ってくる敵サイドだな……。


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