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捨てステータス【幸運値】が高いだけのザコとして追放された剣士、レアイベントをすべて発生させて無双する  作者: 森田季節


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13 ポポロの真の姿

「アルクさん、夢を見ますか?」


 ポポロに尋ねられた。人の言葉でしゃべってもらえるとこっちもありがたい。



「そりゃ、見ることもあるさ。むしろ、フクロウも夢って見るんだな」


 そういえば、猫も犬も夢を見るって言うよな。ある程度の知能があれば、どんな動物でも見るものなのだろうか。



「私はこんな夢を見ました。おそらく神であろう人の形をした方々が、私を『ゲーレジェ』の世界に加えるかどうか悩んでいて、結局、魔物使いという職業に影響が出すぎるので実装は見送ろうという結論に至る――という夢です」





 そ、それって……「ゲーレジェ」開発スタッフの夢なんじゃないのか……?




 そういや、こんなフクロウの魔物の存在が思い出せない。ゲームにいたなら覚えていそうなものだ。


 開発段階でゲームの実装が見送られたキャラが俺の前にいるということか?




 いや、でも、フクロウの魔物が仲間になるぐらいでゲームバランスに影響が出るとは思えない。たしかに人の言葉はしゃべれるけど、その程度のことで見送るか?



「あの、ずっと下を向いて話されていると、首も疲れますよね」

「たしかに、ポポロのサイズだと下を向くしかないからな。でも、そこまで気を遣わなくていいぞ」


 俺は中腰になってみる。こういうのは動物側に人間が合わせるのが自然だ。



「このまま話すのはアルクさんが疲れそうですし、姿を変えましょう」

「姿を変える? 巨大化でもするのか?」

「いえ、違います。お見せしたほうが早いですよね」





 次の瞬間、俺の前にはフクロウではなく、黒髪のメイドさんが立っていた。





「えっ? ええっ?」


 俺は呆然とした。ただ、ポポロ(と呼ぶのも違和感あるけど)のほうは落ち着き払っている。フクロウ形態の時の様子をそのまま人にしたような雰囲気だ。


「え、ええと……ポポロってことでいいよな……?」


「そうですね。人の姿をとれます。私はアルクさんに仕えているようなものなので、この姿にしました」



 平然とアルクは言った。

 そりゃ、こんなもの実装したら魔物使いを使うユーザーが激増して、ゲームに影響出そうだな……。




「自分が特殊な存在だということは感覚的にわかっていました。それで、偶然、アルクさんを見つけたのですが、ああ、この人なら受け入れてくれそうだな。幸運を呼ぶ存在だなとわかったんです。力も私の攻撃を難なく耐えるほどでしたし」


「幸運を呼ぶ存在か。皮肉なものだな」

「どのへんが皮肉なのですか?」


 メイド姿になったポポロが首を傾げた。たしかにわかるわけがないよな。


「いや、とある地域ではフクロウは福を呼ぶ動物だと言われてるんだよ」



【幸運値】がカンストしてる俺のところにポポロが来たというのも、よくできた偶然だと思う。




 どうでもいいが、ポポロはやけに胸がデカいな。

 自然と視線がメイド服の胸のあたりに目がいってしまう。いや、これはあれだ、ほら……人の顔をずっと見てしゃべるのは失礼だから、視線をちょっと落とすのはマナーのはず……。


「胸のあたりに視線がいってますね」

「あっ、悪い……。やっぱりこういうのって見られてるほうはわかるんだな……。これは、顔を凝視して話すのもおかしいから視線を落としてるだけで本当に他意はない」


「わかっていますよ。ただ、私はこれからもアルクさんに仕えるつもりですから、顔を見つめられても失礼とか思いませんので」

「わかった。そう言ってもらえると助かる」


 とはいえ、顔もいいんだよな。いわゆるビジュがいいというやつか。

 こんなメイドさんが街を歩いてたら、みんな振り向くだろう。風が吹いたらほどよく長い黒髪もなびきそうだ。


「頭、撫でてみますか?」


 ポポロに尋ねられた。


「いや、いい」

「フクロウの時は撫でていましたよね」

「見た目の違いは大事なんだよ。あと、お前、わかってて言ってるだろ」

「実を言うと、少しわかっています。この姿で頭を撫でてくださいと言うとアルクさんは照れるだろうなと」


「お前、淡々とした表情でも、内心ではいろいろわかってるタイプだな……」



 冗談はさておき――

 パーティー的な意味でも仲間が一人増えたと解釈していいのだろうか。

 非常に重要なことなので確認しておく必要がある。



「なあ、ポポロ、ステータスを見ることってできるか?」


 人間のキャラだという扱いなら、ステータスを確認できるはずなのだ。



「ステータスとは何でしょうか?」


 たしかにいきなり言われても意味わからないか。前世でも一度も言われたことのないセリフかもしれん。


「ステータスを見ようと念じてみてくれ。数字みたいなのが表示されないか?」


「ああ、出てきました。これがステータスというものですか。読み上げてますね」





=====

ポポロ レベル15 冒険者ランク?

HP 86/86

MP 0/0

攻撃  82

防御  65

敏捷 106

知力  25

精神  13

容姿  97

幸運値298


スキル

飛行・高速移動・突き刺し・突風・鑑定(植物)

=====



「おっ……けっこう強いな……」


 少なくとも前パーティーの誰よりも強いと思う。


「アルクさんのお褒めにあずかり、光栄です」


 ポポロは丁重に礼をした。どこかでそういう仕草も覚えたんだろう。フクロウの姿でけっこういろんな人間と会ってきただろうし。


「すでにCランク冒険者の力はあるな。あと、【容姿】もすごい数字だと思う」

「毛並みには自信がありますから」


 いや、そういうことで言ったんじゃないんだが、ポポロはフクロウ界でもモテるんだろうか?


【容姿】がほぼ3桁の数字ということは、雑なたとえをすると、学年一の美少女ぐらいのランクだと考えていい。俺、この世界で学校に行ってないから変なたとえだが。



 もっとも、そんなものなんて全部最後のところで霞むんだけどな。



「【幸運値】が298ってなんだこれ……。俺が言うのもなんだけど、バグに近い数字だぞ」

「バグ? 虫ですか?」

「いや、違う。無茶苦茶すごいってこと」


 やっぱり人の姿をしててもあくまでも中身はフクロウだな。

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