12 フクロウとしゃべる
俺は州都スラーツというその近くでは最大規模の都市に拠点を移した。
理由はいくつかある。
まず、元の拠点の町メーピルにいると、ガストルたちと顔を合わせることがあって、気まずいこと。これが要因として大きい。
それと、ポポロと一緒の宿泊が可能な宿が一つしかなくて、あんまり環境がよくなかった。建物全体が獣臭いのだ……。ほかにペット同伴可の宿がないからって、臭くてもいいだろと足下を見てる気がする。
ペット可の宿自体は遠征した時などに泊ったことがあったが、悪臭なんて感じなかったぞ。たんにメーピルの宿の手入れが行き届いてない!
最後に、大きな都市のほうがレアイベントが起こるのではと判断したのだ。
もしもレアイベントが全部起こる体質に俺がなっているとしたら、栄えてる都市のほうがレアイベントを経験できる可能性は上がるはずだ。
まあ、何もないフィールドで起こるレアイベントもあるはずだが、割合としては都市のほうがイベントは起きやすいのは間違いない。
月光草の群落を見つけて生活の不安がなくなった今、「ゲーレジェ」ユーザーとしてレアイベントをたくさん見るという目的が芽生えてきた。
もちろん剣士としても成長したいところだが、BランクからAランクになるわかりやすい道筋というのは、よくわからないんだよな。
Bランクに到達できる奴の数も限られているので、わかりやすい攻略法が確立されてない。
で、俺はポポロとともに州都スラーツにやってきた。
「おっ、あの剣士、肩にフクロウ載せてるな」
「かわい~」
「フクロウっていうと、魔法使いっぽいのにな」
市街地を歩いてるだけで、ものすごく注目される。
フクロウの影響力、とんでもないな。
肩に載せるとかなり重いんだけど……重装備で戦闘するのと比べるとまだマシだ。
たしかにフクロウだと使い魔っぽくはある。
実のところ、ポポロが何者かもよくわからないのだ。
これは冒険者ギルドの人間から聞いた話なのだが、あの高山地帯はフクロウ系の魔物はほぼ出現しないらしい。なので、フクロウとエンカウントする時点で特殊なことだったようだ。
というわけで、ポポロがあのへんの野生の魔物かどうかも謎なのだ。
クマ食いフクロウというフクロウ系統の魔物はいたとは思う。前世のゲームの知識でもそれはわかる。しかし、ポポロがそれと同じ種なのか、実はわからない。この世界では攻略ウィキを開いて画像確認もできないしな。
ちなみにスラーツに来るまでの間、ポポロはちょくちょくどこかに飛んでいった。
それでも俺がまた移動するという時間になると、ちゃんと戻ってくる。
おそらくエサでも食べに行ってるんだろう。
ポポロの気持ちはまだはっきりとはわかってないが、常に俺のそばにいてもらう必要はないし、ちょうどいい距離感だと思っている。
「ポポロ、これからもお前にとってちょうどいい距離感でいてくれ。俺からは拘束したりはしないから」
「ポポポ」
おそらく「わかってる」と言ってくれたと思う。
まあ、拘束する方法もないんだけど。魔法で召喚した使い魔とかを除けば、「ゲーレジェ」の世界で魔物を完全に使役する手段はない。
ペット可の宿をいくつか見て回って、一番清潔そうなところを定宿に決めた。
これができるのも経済力のおかげだ。バイトーラ天使教は本当に3000万ゴールドをぽんと出してくれた。
さすがにそんな大金持ち歩いて移動したら盗賊に狙われるので、大半は銀行に預けているが。
俺はポポロを肩に載せたまま、部屋に入った。
ポポロは自分から床に下りた。ようやく肩が軽くなった。
「いや~、ほんとにポポロさまさまだ。群落を見つけてくれてありがとうな」
自分の部屋だから動物に話しかけても何も変ではない。
「武器も鎧もいいものに新調したぞ。文句なしのBランク冒険者だな。ポポロは幸運を呼ぶ青い鳥だな。青色じゃないけど」
「いえ、幸運を呼ぶのはどっちかというとアルクさんのほうですよ」
「まあ、【幸運値】がカンストしてるのはそうだけどさ、データがあるわけじゃないし、実際のところ、偶然なのかどうかはまだわからないんだよな」
「そこは私にはわかりませんが、アルクさんが仕えるに足る冒険者というのは、わずかな手合わせだけでも確信できました。短時間でも、私は自分の勘には絶対の自信があります」
「そう言ってもらえるとうれしいな――――あれ?」
俺、誰と話してるんだ?
当たり前だが、部屋には俺とポポロしかいない。
……。…………。
「なあ、ポポロ、お前、人の言葉話せるのか?」
「厳密には話せるようになったというのが正確ですね。ポポポしかしゃべられないのでは不便なので」
「それはそうだけど……。どこで練習したんだよ」
「アルクさんのいないところで発音の練習をしていました。この都市に来るまでの間も、けっこう離れている時間はあったでしょう?」
マジか……。
「フクロウって本当に知能が高いんだな……」
「いえ、フクロウというより私が特殊なだけかもしれませんが。ほかのフクロウと遊ぶのも楽しくなかったので」
「たしかに、ここまで知能の高いフクロウは周囲にいないか」
ドラゴンも魔法も存在する世界ではあるのだが、フクロウとしゃべったことはない。変な感じだ。
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