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真面目だけが取り柄の特待生は、自由なおぼっちゃまに憧れる  作者: 四葉ひろ


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20/22

番外編 友のデートと俺の弱み 2

ここからは、ガイ君メインです。

 こんなことになるとはーー。


「キャサリン・ファデスです。七さいです!」


 元気よく挨拶をするキャスを、友人達がぽかんと見ている。


「ガイの()()()()()()です。よろしくおねがいします」


 友人達の視線が痛い。俺はキャスを抱き上げた。


「……キャスの親父はうちの番頭で俺の親父とは親友同士だ。キャスが生まれた時に、親父達の間で婚約が結ばれたんだ」


 俺は決して幼女趣味ではない。そもそも婚約を結んだ時は乳児だったし。そこの男子二人と公爵令嬢! そんな目で俺を見るなよ。

 

「かわいい!」

「キャサリンちゃん、こんにちは」

 キャスを覗き込むエミリとアンナが天使に見える。

 キャスはキョトンとした顔で二人を見ると爆弾を投下した。


「……おねえさんたちは、ガイのこいびとですか?」

「え?」

 あー、頭いてー。誰だ、キャスに変なこと吹き込んだの。まあ想像はつくけどな、あのクソ親父。


「キャス。このお姉さんたちは、他の人の恋人だ。ちなみにあっちのお姉さんも他の人の婚約者だ」

「そうなの? おじさまが、がくえんにはガイのこいびとがいるかもしれないなあ。キャスのライバルだなあっていってたよ」


 ーー今度帰ったら覚えとけよ。


「まあ、うふふ」

「えー、かわいい。キャサリンちゃんのライバルじゃなくてごめんね」

「え? 私も?」


 ユナとエミリとアンナ。女三人は、すっかりキャスと馴染んでいる。


 冬を越え、今年度最後の行事がファミリーデーだ。家族を学園に招待して、学園での生活を見てもらう。と言っても学園全体でガーデンパーティーのようなものだ。芸術科が音楽会を開いたり、騎士科が演武を行ったりするけれど、それも一部の時間だけ。今日ばかりは学園内に出店がたくさん出ているので、食べ物を買ったりしながら、家族に自分の友人を紹介したり、施設を見せて回ったりする。

 うちは親父がちょうど大事な商談で来れないってことで番頭のファデスが娘のキャスを連れてきた。商業科の教員に友人がいるとかで、娘を俺に託すとファデスはどこかに消えていった。まったくどいつもこいつもうちの大人は。


 俺はキャスを連れていつものメンバーの溜まり場にやってきた。そして、冒頭のやりとりだ。


「お前ら、家族は?」


「殿下が来たがったんだけど、警備が大変になるから断ったの。そうしたらうちの両親も遠慮して今回はパス」

 ユナのうちは、今この学園で一番身分が高いからなあ。かえって気を使うのかもな。婚約者である隣国の皇子が来ちゃったら、もっと大変だっただろうし。身分が高いのも大変だ。


「俺らは、アンナんちの父ちゃんが、ファミルとアンナが一緒にいるのを見て大パニックでさ。ファミルの父上と俺の両親とアンナんちで、談話室に押し込んできた」

 おいおい、いいのか、クリス。まあアンナの家から見たら、ファミルのうちは主人の家のさらに主人だ。娘が付き合っていたら仰天するだろうなあ。みんな結局ファミルの侯爵領の人間だし、クリスの両親がいい緩衝材になるといいけどな。


「うちの両親はアンナのこと気に入ってるから大丈夫だと思うんだけど、クリスがエミリを紹介する暇がなかったのが申し訳ないな」

「え? そんな! うちも今、流行病が出ちゃって来れてないからいいよ! 大丈夫」

 ファミルの言葉に、エミリが慌てている。

 あー、東の方で冬に流行り始めた流行風邪がまだ落ち着いてないのか。医者も大変だなあ。


 というわけで、俺たちはいつものメンバーとキャスで行動することになった。

 

 見知らぬ場所とお祭りのような雰囲気と優しいお姉さんたちにすっかり興奮しているキャスは、お菓子を買ってもらったり、大道芸を見たり、広場を走り回ったりと忙しい。


 エミリとアンナは子ども好きのようで、嫌な顔もせずキャスに付き合ってくれている。


「あ、キャサリンちゃん、取れかかってるよ」


 エミリが直してくれた髪飾りは、先日クリスとエミリのデートを尾行した時に、ユナに半分強制的に買わされたものだ。休みに帰ったら他の土産と一緒に渡すつもりだったけど、思いがけず今日会えたので先に渡したのだ。


「ありがとう! あ、エミリちゃんもかみかざりついてるね」

「う、うん。そうだね」


 エミリが赤くなっている。エミリが付けてる髪飾りもデートの時にクリスに買ってもらったやつだからな。もう付き合って半年近いのに、いつまでもラブラブでうらやましいこった。


 微笑ましく見守る俺の前でキャスがエミリの耳に口を近づけて内緒話をしている。すっかり仲良しだな。


「あ、ふうせん!」


 広場の端を流れる川に架かる橋の向こうで、どこかの店が風船を配っている。子どもたちが近づいてもらっている。


「もらってきていい?」

「ああ。一緒に行くか」

「だいじょうぶ。みんなひとりだもん。わたしもいってくる」

「じゃあ、私たち飲み物をもらってくるから橋の向こうまで一緒にいきましょう」


 アンナとファミルが、立ち上がって一緒に行ってくれる。


「帰りは一人で帰って来れるか?」

「だいじょうぶ!」


 アンナと手を繋いで、嬉しそうに歩いていく。橋の上まで来るとこちらに向かって手を振るので、応えて振り返す。


「溺愛してるなー」

「何? お前がエミリを?」

「ばーか」

 

 クリスが芝生に寝っ転がる。

 今日は、すっかり春の陽気で、このファミリーデーが終われば、今年度もほぼおしまいだ。一応修了式のようなものはあるけれど、成績優秀者で表彰されるだろうエミリや後期の間にますます腕を上げて優秀騎士に選ばれるかもしれないクリスのような一部の生徒を除いては、別に残っていなくてもいい。今日のファミリーデーで来た家族と一緒に帰る生徒も多いのだ。


「ガイ君、キャサリンちゃんと一緒に帰るの?」

「うーん。うちのバカ親父が、キャス達が来るって知らせたのが今朝でさ。土産も何も買ってないしな」

「何日か滞在してもらったら」

「まあ、聞いてみるよ」


 一緒に帰ると伝えたら、キャスは喜ぶだろうな。

 俺は、キャスの喜ぶ顔を思い浮かべた。


 

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