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真面目だけが取り柄の特待生は、自由なおぼっちゃまに憧れる  作者: 四葉ひろ


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19/22

番外編 友のデートと俺の弱み 1

後日談やデートの様子が見たいと言っていただいたので、ちょっとだけ書きました。今回はデート編です。

 俺には、婚約者がいる。

 生まれた時から決められた婚約者がーー。




「なあ、楽しいか? これ」

 俺は路地の壁に半分身を隠すようにして、目だけはターゲットを見失わないように大通りを見つめたまま言った。

「ええ。とっても」

 にっこり笑う令嬢の後ろにはいかつい護衛騎士たち。これ、本当にばれてないんだろうか。


 今日は、念願の街ブラデート。って俺のじゃないけど。


 俺は、大通りをちょっと挙動不審気味に、でも楽しそうに歩くカップルを見つめた。


 俺の親友クリス・アドラーは、この度、無事数年越しの片想いを実らせ特待科の才女エミリ・プラナーと付き合うことになった。

 まあ付き合い始める経緯は長いので省略するけど、今日は付き合う前から約束していた街デートの日なのだ。


「見たいわ」


 そう言ったのは、エミリの親友、今をときめくシエルユナ・コーゲンハイト公爵令嬢。通称ユナだ。いいねいいねと乗ってきたのは、クリスの幼馴染でエミリと同じ特待科のファミル・ゼルデンブルグ侯爵子息。

「え、悪いよ」

 と言ったのは俺と同じ常識的な平民アンナ・ハンクスだけど、ただただ面倒くさいと思った俺も含めて発言権は強くないので、公爵令嬢付きの護衛騎士さん達も巻き込み、こうやってクリスの初めてのデート尾行大作戦を決行中なのだ。

 

 ファミルは、大通りまで来ると、

「やっぱり、見てるだけじゃつまんないね。行こう、アンナ」

 と言いだし、戸惑うアンナを引っ張って、あっという間にどこかに消えた。

 あいつ、俺たちを利用したな。アンナを直接誘っても、身分差を気にするアンナが、絶対遠慮して頷かないのをわかってるからな。


 と言うわけで、今、付き合いたての初々しい二人を見守っているのは、ユナと俺と護衛騎士さん達だ。なかなかにシュールな絵面だと思う。

 

「あ、見て。クリスが手を繋ぎたそうよ。……まあ。エミリったら、帽子を押さえている場合じゃないわ。クリスの手が宙に浮いちゃったじゃない」


 お姫様は楽しそうだ。


 楽しそうな二人は、時々笑い合いながら、屋台に近づいていく。クリスが串焼きを二本持つと、近くの噴水脇のベンチに腰掛けた。串焼きを受け取ったエミリと二人並んで美味しそうに食べているのを見ていたら、何だかお腹が空いてきた。


「なあ。腹減らねえ?」

「減らないわ。お昼食べてきたじゃない。まだ三時よ」

「じゃあおやつの時間じゃねえか」

「あとで何かご馳走するから、ちょっと我慢して」


 はいはい。

 女子にはとても優しいユナは、俺やクリスには結構厳しい。

 仕方なく、俺たちは尾行を続けた。


 串焼きを食べ終わった二人は、露店を見て回ることにしたようだ。順番に露店を回ってマグカップを手に取ってみたり、古本を眺めたりしている。

 いくつかの店を回ったあと、小さなアクセサリーを売っている露店の前で立ち止まった。髪飾りを当ててみるエミリを見るクリスの顔は本当に幸せそうで、俺は何だか腹の底あたりがむず痒くなってきた。おやつを食べ損ねたからかもしれない。

 気に入った髪飾りを見つけたようで、財布を出すクリスにエミリがブンブンと手を振っている。どうやら遠慮しているようだ。


「まあ、買わせたらいいのに。ほら見て。あの髪飾りクリスの瞳の色よ」


 クリスとファミルとアンナは同じ地方出身で同じような髪の色、瞳の色をしている。厳密には、ちょっとずつ違うけど、みんな金髪から明るい茶髪、瞳は青色系でクリスはちょっと濃い。東の方の出身のエミリはもっと赤みがかった茶色い髪にブラウンの瞳だ。

 貴族はよく、自分の瞳や髪の色のアクセサリーを恋人や妻に送る。クリスもさすがは貴族の息子だな。

 金色の台座に濃いブルーの宝石のついた髪飾りはエミリによく似合っていた。

 クリスは遠慮するエミリを無視して真っ赤な顔で会計を済ます。お釣りを多めにもらって驚いているから、露天のおじさんが初々しい二人にサービスしたんだろう。

 クリスが、エミリの髪に髪飾りをつけてやろうと四苦八苦している。エミリが笑いながら手を添えて髪留めをとめた。


 二人は今度は、革細工の店に寄る。エミリがクリスに買うようだ。もう俺には、クリスが嬉しすぎて尻尾を振りまくる犬にしか見えない。まあ、幸せそうで何よりだ。


 買い物を終えた二人は、小高い丘につながる小道に向かった。俺たちも移動するーー。


「さ、帰りましょう」


 ユナが言い出す。


「え?」

「いつまでも、他人様のデートを眺めているものじゃあないわ」

「……」


 納得いかない。納得はいかないがーー。


「さっきまでいた路地の脇にあったカフェに入りたいわ。ご馳走するから一緒にいきましょう」


 確かに、いつまでも人のデート見てるより、旨いもん食いたい。


 俺たちは、クリス達を見守るのは終わりにして移動することにした。

 ーーふと、さっきまで二人がいた露店に目が止まる。


 黒地に赤い実があしらわれた髪飾り。

 俺たち西の民の赤い髪に黒い瞳を連想させる。


「ーー買ったら? 婚約者へのいいお土産になるわ」


 ギョッとしてユナを見る。何で知ってるんだ。

 エミリが、

「ユナは何でも知ってるんだよー」

 と言っていたのを思い出した。いやいや、成績トップはエミリだろと思ったけど、こう言うことか。公爵家の情報網恐るべし。


「あいつには、まだ早いよ」


 年下の婚約者の顔を思い出す。


「あらあら。女の子はあっという間に大きくなるわよ。いいから買っておきなさいな」


 半ば強引に買わされる。まあ、次に帰った時に他のお土産と一緒に渡そう。喜ぶかな。まあ喜びはするだろうな。


 俺は髪飾りを店主から受け取ると、今度こそ食欲を満たすべく歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっと帰ったか」

「え?」

「いや、なんでもない。坂道大丈夫?」


 思わず漏れた独り言を不思議そうに聞き返すエミリに笑いかける。大丈夫、と言って笑う顔が可愛い。


 あー、辛い訓練頑張ってよかったあ。


 俺は、しみじみそう思った。

 いつもの仲間が、ついてきているのは気づいていた。ガイがお前は隠密か?と言うレベルでぴたっと壁に張り付いてこっちをうかがってるのには笑いそうになったけど、みんなが見てると気づいたらエミリが恥ずかしがって、あんなことやこんなことができなくなると思い、必死で我慢した。


 エミリと付き合い始めるまでには、みんなに大変お世話になったし、心配もかけたし、不義理もしたし、最初のデートをこっそりつけられるくらい文句は言えないだろう。

 問題はユナさんについてきていた護衛騎士だ。絶対兄貴の知り合いがいる。次に会った時に絶対いじられる。 

 はあ、と思わずため息をもらした俺を心配そうにエミリが見上げた。


「疲れちゃった? やっぱり訓練で疲れてーー」

「いやいやいやいや、大丈夫! さあもう少しだ。元気よく行こう」

 腕を振って歩き出した俺にエミリがあははと笑った。


 そして高台にある見晴らし台に着いた。


「わあ、すごい」


 エミリが目を輝かせる。

 ちょうど夕暮れ時、ここからは夕陽に染まる街とその奥の丘の上にある学園が見渡せる。


「ここの景色をエミリに見せたかったんだ」


 俺がそう言うとエミリが振り返って笑った。

「ありがとう。とっても綺麗」


 俺はたまらない気持ちになった。綺麗なのは夕陽に照らされたエミリだ。

 ずっと可愛いなと思っていた。でもファミルに紹介してくれと頼んだときは、ここまで好きになるなんて思ってなかった。


 俺は、一歩エミリに近付いて、その頬に手を当てた。俺もエミリも真っ赤だけど、夕陽のせいではないと思う。


 ガイは、珍しくいいタイミングで引き上げた。


 重なった二つの影を見ている者はいなかったから。


次回は授業参観??編です。近日中には。

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