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真面目だけが取り柄の特待生は、自由なおぼっちゃまに憧れる  作者: 四葉ひろ


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 クリスは強かった。


 一回戦と二回戦はあっという間に勝負がついた。こちらが心配する暇もなかった。


 ファミルも三回戦まで危なげなく勝ち上がったけど、これに勝ったらクリスと当たるという試合で負けた。負けても余裕な顔のファミルになんとなく恣意的なものを感じるけれど、ファミルが戦うたびに、心配で震えていたアンナちゃんが、そろそろ限界だったので、ちょうど良いタイミングだったとも言えた。


 一方クリスは、どんどん勝ち進んでいき、何と準決勝まで駒を進めた。でも勝ち進むに従って楽勝とは言えなくなってきた。

 連戦にだんだん息が上がってきている。


 準決勝の相手は同じ騎士科の生徒だ。


 この人、とても強い。

 多分学年で一、二を争うレベルだと思う。これまでの試合、全てあっという間に終わらせてきていた。どこかの騎士の一族の出なのかもしれない。ユナがいたらきっとわかったんだろうけど、あいにく今日は音楽コンクールのリハーサルで来ていない。


「始め!」


 審判の声が響く。


 クリスは、これまでと違い防戦一方だ。知らず知らず握りしめる私の手にそっとアンナちゃんの手が添えられる。そのアンナちゃんも心配顔だ。


 徐々にクリスが壁際に追いやられる。

 あっと言う間もなかった。


 下から払われたクリスの剣が宙を舞う。

 同時に相手の剣がクリスの喉元に突きつけられた。


「そこまで!」


 審判の声が試合終了を告げた。

 クリスが地面に膝をつく。そのまま悔しそうに地面を叩いた。


「クリス……」


 でもクリスは、顔を上げると立ち上がった。

 準決勝まで進むなんてすごいよ、クリス。お疲れ様ーー。


「ねえエミリちゃん」


 対戦表を見ていたアンナちゃんがパッと顔を上げた。


「ここ見て。なお準決勝の敗者による三位決定戦を行うこととする、だって。次の試合で負けた方と戦って勝ったら三位だよ!」


 嬉しそうに言ったアンナちゃんはハッとして口を押さえる。


「でも、心配だよね。体力も限界だろうし」

「うん」


 でも。


「クリスは戦いたいんじゃないかな」


 騎士科への編入試験が決まってから、クリスは本当に努力してきた。騎士科に転科してからもすごく努力したんだと思う。体つきを見れば私でもわかった。だから勝って終わって欲しい。


「そうだね。最後まで応援しよう」


 アンナちゃんはきっと、こうやって人が戦ったりするのを見るのは苦手だと思う。今日だってファミルが出なかったら見にこなかったかもしれない。でも、私の気持ちを汲んでくれている。


「うん。応援しよう」


 私はアンナちゃんを見て頷いた。


 準決勝の第二試合は実力の拮抗した騎士科の生徒同士の戦いだった。どちらもクリスに勝った生徒ほどは強くない気がする。希望的観測かもしれないけれど。クリスと比べてどうかは私にはわからなかった。


 結局、黒髪の方の生徒が決勝に駒を進めた。クリスの相手は負けた方の生徒だ。


 休憩を挟んで、決勝戦の前に三位決定戦が行われる。


 クリスが会場に出てきた。

 試合相手をまっすぐ見ている。


「始め!」


 もう聞き慣れた試合開始の合図が出された。


 お互いの剣の音が響く。二人ともかなり疲れているのはわかる。

 だけど、今度はクリスが徐々に押している。


「頑張って」


 小さな声で呟いた私の声はきっと届いていないだろう。

 だけどその時、一瞬相手の足元が揺れた。

 それをクリスは見逃さなかった。

 相手の剣を払い、喉元に剣を突きつける。


「そこまで!」


 わーっと会場が湧いた。


「すごいね! クリス、三位だよ!」


 アンナちゃんがぎゅっと私に抱きついてくる。


「うん」


 その時、クリスがこちらを見上げた。手をあげて、笑う。どうして私たちがわかるのか、それは確かにいつものクリスの笑顔だった。


「うん。良かった」


 私はクリスから目が離せないままアンナちゃんを抱きしめ返した。


 私たちは結局次の決勝戦まで見てから帰った。やっぱりというかなんというか、準決勝でクリスに勝った

生徒が決勝も危なげなく勝って優勝した。


 だけど大会後に行われた表彰式で三位だったクリスは記念のメダルをもらい、本当に晴れやかな笑顔だったから、きっと満足のいく結果だったんだと思う。


 夕焼けに染まる道をアンナちゃんと手を繋いで帰った。


 

 


 

 

 

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