表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真面目だけが取り柄の特待生は、自由なおぼっちゃまに憧れる  作者: 四葉ひろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/22

13

遅くなりました〜。

 そうは言っても長期休暇はやってくる。いよいよクリスも私たちも地元に帰ることになった。


「じゃあ、今まで本当にありがとう。このノートもありがとう。絶対受かってみせるから」


 クリスが私が作ったノートを抱えて言った。

 その脇からファミルが顔を出す。


「俺とアンナで時々様子を見に行って手紙で知らせるから」

「え! 私も?」


 驚いているアンナちゃんとクリスとファミルはみんなファミルの家の馬車で帰るらしい。馬車の中でも勉強だぞ、と笑うファミルだったけど、クリスは嫌がることなくうなずいている。


「でも、手紙書くね。エミリちゃん」

「俺は書けない! でも土産は持ってくる」


 アンナちゃんとガイ君が交互に言う。


「うん。私も書くね」


 みんなと別れて、私も実家に向けて出発だ。ユナが超がつく豪華馬車で送ってくれるって言ったけど、そんなのが我が家に横付けされたら大変な騒ぎになってしまうので、丁重にお断りして今回は船で帰ることにした。学校から港までの乗り合い馬車に乗って、北方航路の船に乗る。


 私の実家はこの国の北東部の港町だ。ごく普通の規模の港で、父が開業している小さな医院を家族で手伝っている。といっても一人娘の私が学園に入った今は母だけだけれど。忙しい時期は農閑期の農家の皆さんや悪天候時の漁師の皆さんなんかにも手伝っていただいてとりあえず順調だ。私が王侯貴族も通う学園の片隅に籍を置けるくらいには。


 実家に帰るとやっぱり家の手伝いに駆り出される。とは言っても、お湯を沸かしたり、待合室のおばあちゃん達の話し相手をしたり。

 赤ちゃんの時から可愛がってくれているおばあちゃん達は、私が休みのたびに帰ってくるのを楽しみにしてくれている。


 今日も一通りの掃除と雑用を終えたら、待合室で常連のおばあちゃん達の話し相手だ。


「エミリちゃんが帰ってきてくれて嬉しいわ。いつまでいられるの?」

「夏の間はいられると思うよ。学校が始まるのに合わせて帰るから」

「いいわねえ。エミリちゃんなんだか綺麗になったものね。楽しんでるんでしょう」

「うん。楽しいよ。今年は新しい友達もたくさんできたし」

「まあ、そうなの?青春ねえ。好きな人もできたんでしょ」

「え!」

 おばあちゃん達が一斉に、あらあらまあまあ若いっていいわねえと沸いた。

「いやいや。なんで勝手に盛り上がってるの?そんな人いないよ」


 必死で否定しながら何故かクリスの顔が浮かんだ。勉強捗っているかな?


「やっぱりエミリがいるとおばあちゃん達も楽しそうねえ」


 お母さんがやってきた。手持っているのは……。


「エミリ、お友達から手紙が来ているわよ」


 お母さんが差し出す手紙はユナの家の紋章が入ったものとファミルの家の紋章が入ったものだった。

 私はパッと立ち上がる。


「今日はもういいから、部屋に上がって読みなさいな」

「うん! ありがとう」


 おばあちゃん達に挨拶をすると医院の二階にある自室に向かう。まずはユナの手紙からだ。


 ユナは長期休みを利用して帝国との国境に近い避暑地に行っているらしい。そこに公爵家の別邸があるそうだ。ユナと友人になってから長期休みにもらう手紙のたびに、違う「別邸」にいるけれど、いったいどういうことなのか。気にはなるけど、きっと聞いても理解できそうもないから深くは考えないことにしている。ちなみに私からの手紙はいつも本邸に送っているけれど、ユナの元にきちんと届く。公爵家ってすごい。

 今年はユナが滞在する別邸に婚約者様が来て交流を深めているらしい。

 ユナの婚約者は隣国である帝国の皇子でユナも結婚したら隣国に行ってしまう。でも、皇族の結婚となると大変なことらしく、まだ十年くらいは婚約者のままの予定だそうだ。

 国も違い、立場もある二人が頻繁に会うのは難しく、こうやって長期休みにはどちらかが非公式に相手を訪問して交流を深めているのだそうだ。


「婚約者に会えなくて寂しいでしょう?」


 と、以前他の友達が聞いていたことがある。ユナはにっこり笑って、


「そう言う感じじゃないのよね。戦友みたいな関係なの」


 と言っていた。高貴な方には色々あるんだろうなあ。


 ユナの手紙は別邸での日常のこと、早く学園で会いたいと書いて締め括られていた。後で返事を書こう。


 その前にーー。

 ファミルの方の封筒を開ける。


 中にはファミルの細々としたクリスの勉強の進捗状況が書かれた手紙と、アンナちゃんの休暇の間のクリスの様子が書かれた手紙、そしてクリスからの短い手紙が入っていた。


 長期休暇中、クリスは領地に帰って、時期を合わせて帰ってきてくれることになった騎士団のお兄さんに剣術を見てもらったり、口頭試問に臨む姿勢などを教えてもらっているらしい。クリスのご両親は、成績が上がったクリスにいたく感激して、教えてくれた「先生」に会いたがっている……って貴族様に会いに行くとか無理だから!! と言う私の声が聞こえたかのように


「平民の私にもとても優しくしてくださるから、エミリちゃんも安心して次の休みには遊びにきてね」


 とアンナちゃんが書いてくれている。その横にファミルの字で、うちの馬車出すから〜と落書きされている。

 

 手紙を読む限りクリスの勉強は順調なようだ。

 良かった。


 ああ、みんなに会いたいな。


 そう思いながら、クリスからの手紙を手に取る。

 クリスは長い文章を書くのもあまり得意じゃない。


「エミリ、元気? 俺は元気。早く休みが明けて会いたいな」

 

 一生懸命、書いてくれただろう手紙を見たら胸がふわっと暖かくなった。クリスの笑った顔が瞼に浮かぶ。


 私も早く会いたいな。

 長期休みはあと一ヶ月だ。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ