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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第1章 少女が統べる国と嘱託補導員

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055 嘱託補導員と内緒の特権

 補導員。

 勿論、ここで言うそれは、子供の非行防止のために夜回りしたりするアレではない。

 ……余談だが、とりあえず今現在この世界においては、その辺りのことは警察の職務の一つとされていたり、地域住人が自然とやっていたりで特別な名称はついていない。


 それはともかく。

 この世界で補導員と言えば、暴れる少女化魔物(ロリータ)を鎮圧し、更生させる者のことを指す。

 父さんや村の人達が畑仕事以外にやっている仕事が正にそれに当たる。

 彼らが都市で自己紹介することがあれば、職業は補導員と言うことになるだろう。


「えっと、嘱託補導員って普通の補導員と何が違うんですか?」

「一般的な補導員はフリーランスなのです。斡旋所に張り出された少女化魔物鎮圧依頼から自分で選んで仕事をするのです。成果ベースなので基本、早い者勝ちなのです……」

「勿論、登録のランクと少女化魔物の脅威度によって選択に制限はあるゾ」

「逆にランクを上げて優秀な補導員になれば、指名で依頼されることもあるのです……」

「お前の父親のようにナ」


 さすがは父さん。

 まあ、実力的にさもありなんというところだが。


「対して、嘱託補導員は特定の組織、企業、団体専属の補導員なのです……」

「少女化魔物の力、複合発露(エクスコンプレックス)は様々な面で有用だからナ。斡旋所を介さず、直接手に入れたいと思う者がいてもおかしくはないダロ?」

「ただ、相応の情報網がなければ斡旋所を出し抜けないですし、複合発露が有用なものかも分からないので結局公的機関の嘱託補導員以外はほぼ存在しないです……」


 これまでの話は何となく理解したが、前提として一つ聞き忘れたことがあった。

 流れである程度想像がつくが、一応確認しておこう。


「気になってたんですけど、鎮圧された少女化魔物ってどうなるんですか?」

「斡旋所の依頼であれば、斡旋所が責任を持って教育した後、各々の能力に適した仕事が紹介されます。斡旋所を介さない場合は依頼元の責任で教育することになるのです……」

「国の認定を受けていない教育機関出身の少女化魔物が問題を起こした場合、教育を施した機関は厳しく罰せられるゾ。その辺も民間の嘱託補導員が少ない理由の一つだナ」


 いずれにせよ、捕らえられた少女化魔物は基本的に依頼元に引き渡される訳だ。

 サユキのような例は、例外中の例外なのだろう。

 それこそ、俺が救世の転生者だから彼女らが色々手を回してくれていたのかもしれない。


「で、俺が所属するのは――」

「当然、我がホウゲツ学園だゾ」


 トリリス様の答えに驚くことなく頷く。

 職員寮まで用意して貰っていて違ったら逆にビックリだ。


「国直属の教育機関だから情報網も民間の比ではないし、自ら少女化魔物の教育も行える最高の環境。そんな場所で働く嘱託補導員はエリートと言って過言ではないゾ」


 小さな胸を張りながら全力で自画自賛したトリリス様は、更に「待遇も最高レベルだゾ」と自信満々につけ加えた。


「生徒とのマッチングを行って数多くの少女征服者(ロリコン)を輩出していることもあり、学園では多種多様な少女化魔物にニーズがあります……」


 ポジティブな部分ばかり言うトリリス様の補足をするように口を開くディームさん。


「他の組織とは違って色々な複合発露と対峙しなければならないので、補導員に求められる能力も多彩なのです。待遇相応の危険もあると理解しておいて欲しいのです……」


 正直、ちゃんとネガティブな面も教えてくれる方が信用できる。

 実際、ディームさんの話は納得がいく話だし。

 軍事、医療、工業、治水、土木工事、害獣駆除などなど。

 各々の分野で必要とされる複合発露は基本的に絞られ、故にそれを有する少女化魔物への対処方法も基本的に一定のはず。

 特定の分野のみを担う組織に所属する補導員なら、相性のいい能力に特化していれば十分以上の働きができるだろう。


 しかし、教育機関たるホウゲツ学園では、それこそ教育のためにも全分野を網羅していなければならない。必然、補導員にはあらゆる状況に対応する力が必要となる訳だ。


「でも、まあ、それもいい鍛錬になるか」

「その通りだゾ。そして、ここからが一番のメリットだゾ」

「通常、鎮圧した少女化魔物は一度所属組織に引き渡して貰うですが、救世の転生者であるイサクは有用だと判断したら、その場で契約の交渉をして貰って構わないのです……」

「内緒の特権だゾ」


 シーッと人差し指を口に当てるトリリス様。

 これから先、救世の転生者として困難に挑むなら可能な限り少女化魔物と契約して複合発露を得るべきなのは確かだ。ありがたい配慮ではある。

 精々、有効活用させて貰うとしよう。


「トリリス、そろそろ。なのです……」

「おっと、そうだったナ。イサク、腹は空いたカ?」

「ええ、それはもう。余計な体力を使わせられたので」


 内心、唐突な質問の意図が分からず首を傾げながらも、率直に答えておく。

 その方がトリリス様は好きだろう。


「うんうん。いい調子だゾ」


 案の定、彼女は嬉しそうに二度頷き、それから言葉を続ける。


「まあ、それはさて置き……如何にお前が転生者であるとは言え、表向きは新人補導員だからナ。軽く新人研修を受けて貰う必要があるのだゾ」


 新人研修か。まあ、当然だな。けど――。


「それと俺の腹の空き具合に何の関係が?」

「これから、イサクを指導する先輩補導員と昼食の約束をしているのです……」

「成程」

「ただ、相手はお前が救世の転生者だとは知らないからナ。内緒の特権も含めて、そうと感づかれるようなことは言わないように気をつけるのだゾ」

「……分かりました」


 元からそのつもりだし、超長距離から暗殺可能な祈望之器(ディザイアード)の話を聞けば尚更だ。


「よし。では、行くゾ」


 そしてトリリス様は立ち上がり、先頭を切って部屋を出る。その後に俺達も続く。


「ところで焼肉で構わなかったカ? 奴の好物だから許容してくれると助かるゾ」

「ええ。大丈夫ですよ。…………あ、牛タンってあります?」


 カルビやロースっぽい牛の肉なら、家で食べたことがあるけども。

 転生してから十七年。牛タンもそうだが、ハラミやモツも見かけてすらいない。

 昔狩った熊とかなら、余すところなく食べたが。

 あれは少なくとも正統派の味ではなかった。

 それだけに、食べられるものなら久々に食べたいところだが……。


「勿論! 希少部位も揃えている最高級店だゾ!」

「イサクの前世の店と遜色ないはずなのです……」


 へえ。それは楽しみだ。

 前を歩きつつ軽く振り返って口にした二人の言葉に、心の中で期待を抱く。

 そうしながら、俺達はトリリス様とディームさんについていった。

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