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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第1章 少女が統べる国と嘱託補導員

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054 学園長トリリスと副学園長ディーム

「何だ、失礼な反応だゾ! 君!」


 いきなり深く溜息をついた俺に、プンプンと怒る学園長トリリス様。

 二次性徴後の姿である少女化魔物(ロリータ)としては珍しく成長途中の俺よりも小さい体を揺らし、少々不釣り合いな大きさの机をバンバンと叩いている。

 癇癪を起した子供のようで、ちょっと可愛い気もしないでもない。

 いや、やっぱりしない。

 細かい嫌がらせを数々受けたので、イラッとするだけだ。


 おかっぱ頭に着物姿と、フォルムだけなら座敷童子のようで愛らしいのに。

 これまでの所業で台なしとしか言いようがない。

 髪も瞳も土属性の茶色ではなく黒だったら如何にも座敷童子なのに、とかミノタウロスの少女化魔物に対しては難癖以外の何ものでもない考えまで浮かぶ程だ。


「常識的に考えると、トリリスの方が余程失礼なのです……」


 と、机の横に静かに佇んでいた少女が蚊の鳴くような小さな声で呟く。

 折角味方をしてくれたのに、心の中でそれこそ失礼にも程があることを考えてしまって少し申し訳なく思う。ちょっと落ち着こう。


「えっと、貴方は?」

「私は亜人(シルキー)の少女化魔物、ディームなのです。副学園長という立場からトリリスの輔佐をしているのです。よろしくです……」


 ぺこりと頭を下げるディームさん。

 髪も瞳も中々に珍しい属性の色をしている。

 悠属性の紫色。

 恐らく、複合発露もトリリス様に輪をかけて特殊なのだろう。

 前髪パッツンのセミロングで、着物に白いエプロンと昔の女給さんという感じだ。

 こちらからは特に被害を受けていないので、普通に可愛く思う。

 眠そうな顔や弱々しい声も趣がある。


「偽物ならいざ知らず、間違いなく本物である救世の転生者にあの仕打ち。トリリスは土下座して許しを乞うべきなのです……」


 そんな彼女は、トリリス様に対して淡々と弱々しく聞こえる声でチクチクと言う。

 ……あれ? 一応、トリリス様の方が立場は上のはずだよな?


「ディーム! うるさいゾ!」

「御覧になりましたですか。酷いパワハラ学園長なのです……」


 ディームと呼ばれた少女は、悪びれもせずに俺達に向けて言った。

 精神的な被害を受けていないと、結果としてパワハラ認定されなくなってしまうのではなかろうかと思うが、口には出さないでおく。

 とにもかくにも彼女。割と図太い性格らしい。


「ワタシ達は立場上(あやま)つ訳にはいかないのだゾ! あの方に託された使命を果たすためにも、イサクが間違いなく救世の転生者だと確認する必要があったのだからナ!」


 だから正しいことをした、と主張したいようだ。

 確かに、絶対に失敗できないということなら、力量も含めて念には念を入れて確かめておきたいと考えるのも理解できなくはない。


「それも半分以上嘘なのです。思い切り娯楽にしていたのです。そして、最後の(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)には少しビビってたのです。情けないのです……」

「ぐ、ぐヌ」


 真っ向から事実を告げていくディームさん。結構毒舌だな。

 しかし、まあ……半分以上嘘ということは真実も一部含むということ。

 それなら少しぐらい容認すべき……かもしれない。

 この国そのものもそうだが、俺も人外ロリには甘い。特に実際に対面すると。


「ともかく、今後も関係が続くのですから誠意を持って謝るべきなのです……」

「……そうだナ。今回はやり過ぎた。いくら五百年もの年月を重ねるとこれぐらいしか楽しみがないとは言えナ。イサク、本当に申し訳ないのだゾ」


 ディームさんに促され、立ち上がって頭を深々と下げるトリリス様。

 ……随分素直に謝ったな。

 この対応に限っては、イリュファから聞いていたイメージとは大違いだ。


「そうやって怒られて謝るところまで含めて、トリリスにとっては娯楽なのです……」


 俺の表情から考えを読んだのか、その理由を説明するディームさん。

 何だそりゃと思う。何とも高度なプレイだ。

 五百年も生きるとそんなに拗れるのか?

 怒られると分かっていても構って欲しくて悪戯する子供みたいだぞ。一周回って。


「浮き沈みがないと刺激にはならないからナ」


 と、ついさっきまで神妙に謝っていたとは思えないような、あっけらかんとした顔で言い出すトリリス様に開いた口が塞がらない。

 たとえ上辺だけだったとしても、もう少し長く続けろよと思う。

 関係を改善させようって気が感じられない。わざと煽っているのか?

 ……もしかしたら彼女は本当に、気安い、と言うよりも雑な感じで構って欲しくてやっているのかもしれない。


「それで後始末する私の身にもなれなのです……」

「何か今日は特に辛辣だゾ。一体どうした? それも日常へのスパイスになるから別に悪くないがナ」

「イサクに私達の普段のノリを理解して貰おうと思っただけなのです……」


 楽しげなトリリス様に淡々と返すディームさん。

 この学園長に五百年もつき合っている辺り、彼女も相当な曲者なのだろう。


「少しは慣れましたか? なのです……」

「えっと、うん、まあ」


 正直なところ理解や慣れというよりは、諦めに近い感情だが。

 少なくとも、俺が大人になって歩み寄らないと駄目そうだという気にはなった。

 この先、彼女らの協力が必要なのは確実だし。

 過去五度にわたって救世の転生者を導き、世界を救ってきたのは事実なのだろうから。

 …………完全に足元を見られてるな。


 けど、相手にとっても救世の転生者の存在が不可欠なのは事実。

 皮肉の一つぐらいは言っておいても構わないはずだ。


「立場に対する敬意が微塵もなくなるぐらいには」


 俺がそう言い放つと、トリリス様は何故だかいい笑顔を見せた。

 そういう鋭利な言葉が欲しかったと言わんばかりに。


「全然構わないゾ。ワタシ達は協力者にして世界を救う使命を持った同志。対等な立場だからナ。何なら、トリちゃんと呼んでくれてもいいゾ」

「私はディーちゃんでいいのです……」

「え、いや、それは――」

「冗談だゾ」「冗談なのです……」


 声を揃えて言う二人。五百年のつき合いだけある。

 しかし、何か急に距離が縮まった気がする。勝手に好感度が上がったみたいだ。

 やっぱり無遠慮な言葉をぶつけたからか? まあ、もういいや。このまま行こう。


「敬意はなくても構わないですが、フランクに話をすると救世の転生者だとばれかねないのです。表向きの立場相応の話し方にはしておいて欲しいのです……」


 一応、注意点もつけ加えてくれるディームさん。

 真面目に話し合いをする時は、彼女の方に話を振った方がいいかもしれない。


「やっぱり救世の転生者だってばれない方がいいんですよね?」

「勿論なのです。ガラテアに狙われかねませんし、今は危うい団体もいるのです。超長距離からの暗殺が可能な祈望之器(ディザイアード)もありますし、身バレはしない方が吉なのです……」


 暗殺用の祈望之器か。

 神話や伝説は割と血生臭いものだし、あって不思議ではない。

 第六位階のそれに狙われでもしたら、今の俺では一溜まりもないだろう。

 なるべく救世の転生者であることを明かさない方針は、間違っていなかったようだ。

 これからも気をつけよう。


「あの、お二人共そろそろ本題を」


 と、イリュファが申し訳なさそうに切り出す。

 やはり彼女の立場は少し弱いようだ。小さくない遠慮が見られる。


「本題? 本題……はもう済んでいるゾ。今日は顔合わせだけだからナ。救世の転生者の使命に関する諸々はヒメが来てからでないと二度手間だゾ」

「私達が救世の転生者の人となりを見た後、お忍びで来る準備を始める手筈になっていますので、そちらは早くて一週間後なのです……」


 詰まるところ、今回は単なる面談みたいなものだった訳だ。

 最初からイリュファも挨拶だと言ってたしな。

 それにしては色々と手間をかけさせられたが。


「いえ、その。イサク様のお仕事についてです」

「おお! すっかり忘れていたゾ」


 ポンと手を叩くトリリス様。対して、イリュファは微妙に眉をひそめる。

 これはイラッとしているな。


「大事な話なのですから、しっかりして下さい!」

「珍しくグイグイ来るナ。やはり男ができると違うゾ」


 からかうように言われ、更に眉間のしわを深めるイリュファ。


「トリリス、真面目にするのです……」

「そうだナ。イリュファ、すまなかったゾ」


 謝りながらもトリリス様は何だか嬉しそうだ。……さっき見た展開だな。

 俺の仕事の話をせずにいたのも、きっとわざとに違いない。

 全部、相手を煽って無遠慮にものを言われたくてやっていると確信する。


「ともかく仕事の話だゾ。救世の転生者と言えど、働かざる者食うべからずだからナ」

「使命に備えるためにも、力を鍛える必要もあるのです……」


 ディームさんの言葉はちょっと脈絡がなく聞こえる

 だが、恐らく関連しているのだろう。そういうものとして考え――。


「ええと、つまり、俺の仕事は力を鍛えられてお金も貰える内容ってことですか?」

「その通りだゾ」「なのです……」


 二人の言葉からそう判断して問うと、各々性格が出ている角度で首を縦に振る。


「そして、そんな一挙両得な仕事というのはだナ」


 それからトリリス様は勿体ぶるように軽く溜めを作り、ばっと立ち上がって大袈裟な身振りを交えながら続けようとするが……。


「嘱託補導員、なのです……」

「ディーム! ワタシの台詞を取るなんて酷いゾ!!」


 サラッとディームさんに告げられてしまい、本気で悔しそうに地団太を踏み始めた。

 とは言え、それもまた彼女に言わせれば刺激のはずだから構わないだろう。


 しかし、嘱託、補導員ねえ……。

 ストックが尽きました。

 今後は数日置きの不定期更新となります。

 最低でも三日以内には更新し続けたいと思います。

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