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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
最終章 英雄の燔祭と最後の救世

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342 見過ごされてきたもの

「ふざけるな!」


 ショウジ・ヨスキの鏡像は、状況を把握できない苛立ちやもどかしさを全て怒りに変換し、尚も転移と光速を組み合わせた攻撃を仕かけてくる。

 対する俺は、目で追うことも探知で認識することも不可能なそれを、唯一強度という点で渡り合うことができる印刀ホウゲツで再び受けとめて防いだ。


「ぐっ、何故……何故だ。こんなもの、道理に合わない」


 繰り返される理不尽を前に、自問するように繰り返す鏡像。

 勿論、ショウジ・ヨスキの鏡像が決定的に弱体化してしまった訳ではない。

 スペックだけで言うなら、俺を遥かに上回った状態のままだ。


「まさか、精神干渉か……?」


 彼は問い気味に推測を口にするが、その声色は自分自身であり得ないと思っていることがありありと分かるものだった。

 そして、その推測は当然ながら外れだ。

 救世の転生者たる俺を優に超えた身体強化が施されている彼に精神干渉をかけられる者など、それこそ彼自身以外には存在し得ない。

 ある程度は俺に都合のいい行動を取らせることができるとは言え、そこまでのことができるのなら即座に自決させている。

 無意識に仕向けている、などと言っても感情や思考のベクトルを完全に反転させたりすることはできない。精々、少し傾かせてやるぐらいのものだ。

 攻撃の意思はそのままに、どう攻撃するかを何とか弄っているに過ぎない。


「きっと、お前達は考えることすらしなかったんだろうな」


 答えに至るヒントとなり得るものについても見過ごすように仕向けてはいるものの、それはあくまでもこの戦闘が始まってからのことでしかない。

 振り返ってみれば、転生者を生贄とする救世が始まって数百年。

 その間に四度も機会があったはずなのだから、しっかりと目を開いて見てさえいれば気づくことは不可能ではなかったはずだ。

 しかし、現実にはそうはならなかった。

 この力は常に見過ごされ、歴史の表舞台に現れることはなかった。


「そのせいで、お前達は負けるんだ」

「それ以上……妄言を吐くなっ!!」


 憐れみと共に告げた俺に、鏡像は激昂しながら更に苛烈に攻めてきた。

 手数は増えつつも、感情的になったことで単調になりつつある。

 だが、威力は変わらず俺の命を脅かすに足るものだ。


「くっ」


 ゲーム的に言えば命中に補正をかけてミスを誘発しているような状態だが、攻撃力という点では僅かたりとも劣化してはいない。

 万が一にでも直撃を食らえば、その時点で俺の命はないだろう。

 ある意味、チートとしか言いようがない力で何とか均衡を保っているだけ。

 相手の行動にどう干渉するかも含め、僅かな綻びも許されない。

 その事実は、眼前の存在が間違いなく世界最強の存在であることを示している。

 と同時に、俺がこれまで積み重ねてきたものが何か一つでも欠けていたら、この理不尽以外の何ものでもない力があって尚、全てを覆せなかった証明でもある

 今生で出会った仲間達には感謝しかない。

 今この瞬間に辿り着くためと考えれば、過去の犠牲も彼らの選択も価値があったと言えなくもないのかもしれない。


「貴様という存在は世の理を乱す! この世界から消え失せろ!」

「…………翻ってお前は……少しばかり純粋過ぎたのかもしれないな」


 世界の安寧のためにと俺を否定しようと叫ぶ鏡像を憐れむ。

 その発言はショウジ・ヨスキが生きてこの場にいたら口にするであろうものだ。

 彼の所業は容認できない部分を多分に含むが、全ては美しい世界を可能な限り美しく留めるためのものだ。一定の理はあるだろう。

 観測者の破滅欲求を消し去りたい。それは理解できる部分もある。

 だが、だからこそ彼は、今の今まで見過ごしてきたに違いない。

 そしてヒメ達もまた。憎悪の余り視野狭窄に陥っていたのだろう。

 一つの可能性に気づくことができない程に。


「……そろそろだな」


 そして、俺がそう呟いた次の瞬間。


「な……に?」


 何度目か知れない攻撃を仕かけてこようとしていた鏡像が正中線で真っ二つになり、同時に鏡が割れるように砕け散った。


「イサクッ!!」


 直後、聞き覚えのある声と共に俺の体に衝撃が来る。


「この馬鹿者っ!! 妾に心配をかけさせおって!!」


 衝撃の正体は、母さんが俺に勢いよく抱き着いてきたことによるものだった。

 近くには、光速で飛来して鏡像を一撃した父さんの姿もある。

 その影の中に入ってここまで来たのだろう。


「ご主人様……よかったです」

「本当に、心配させないでよ」

「主様、よくぞ御無事で」


 リクル、フェリト、アスカも影から飛び出して傍に来て各々の形で安堵を示す。

 しかし、感動の再会をいつまでも続けていられる状況ではない。

 彼女達に頷き、それから少し離れた位置に再び発生したショウジ・ヨスキの鏡像へと目を向ける。

 霊鏡ホウゲツがある限り、いくら倒しても結局はまた復活してしまうだけだ。


「母さん、父さんと離れていて。……リクル」

「はいです」


 俺の呼びかけに応じ、彼女は〈如意(フィギュア)鋳我(トランスファー)合一(ユナイト)〉を使用してスライム状になり、フェリトとアスカを取り込んでから俺の体に融合した。

 これならば光によって分断されることはない。

 その代わりに一網打尽にされる恐れはあるが、ことここに至っては関係ない。

【ガラテア】の居城の時のように、万が一の備えとして残しておく必要もない。

 今この場が、真の最終局面だ。ここで全ての決着をつける。


「イサク、負けるのではないぞ」

「ようやく家族が揃うんだからな」

「勿論。後少しで大団円、だからね」


 少し冗談めかした俺の言葉に表情を和らげて頷いた父さんは、母さんを影の中に入れて地上の仲間達のところへと光の速さを以って移動した。

 そんな二人を追いかける選択肢は鏡像の頭から排除する。

 俺を討つことを何よりも優先させることによって。

 感情的になっているだけに、そう誘導することは難しくない。


「……布都御霊(ふつのみたま)の複製改良品か。だが、そう数はあるまい」

「ああ、そうだな」


 自身を両断した一撃に対する鏡像の分析を肯定する。

 霊鏡ホウゲツは、俺に注力するためにリクル達を相手していた鏡像を消さざるを得なかった。それによって足どめから解放された父さん達は、空中で戦っていた俺達を感知したアスカの指示でホウゲツまで戻ってきたのだが……。

 その途中、ホウゲツ学園を経由し、職員寮に待機していたトバルから布都御霊の複製改良品を受け取ってからここに来たのだ。

 効率的か非効率的か。それは関係ない。

 鏡像の攻撃方法を限定したのと同じように、母さん達の思考、選択もまた俺達にとって最も都合のいい形へと誘導した。

 俺に対して好意的である皆だけに、その精度は比べものにならない。


「多少強化されたからと言って、こちらの優位は揺るぐはずがない。しかし、どこまでも、どこまでも。何故こうも貴様に都合のいいことばかり起こる!?」

「さっき言っただろう。そう仕向けていると」


 時間稼ぎはもう十分だ。

 思考の誘導を軽減して、事実を突きつけてやろう。


「俺はドールの人形化魔物(ピグマリオン)【ガラテア】と真性少女契約(ロリータコントラクト)……いや、真性人形契約ピグマリオンコントラクトを結んだ。お前達の筋書き通りにな」

「それが、どうした」

「分からないのか? 真性少女契約を結んだ少女化魔物(ロリータ)は観測者としての強度が更に増し、複合発露(エクスコンプレックス)(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)となる。人形化魔物も同じだ」

「……まさかっ!?」

「そう。【ガラテア】の滅尽(ネガ)複合発露(エクスコンプレックス)は、言わば(アーク)滅尽(ネガ)複合発露(エクスコンプレックス)とでも呼ぶべきものとなった。その名も〈我ら天上(メタ)より万象を繰る(パペッター)〉。破滅欲求を通じて無意識領域に働きかけ、観測者自身の行動や観測者の思念の影響を大きく受ける存在を操ることができる、恐るべき力だ」


 勿論、どこまで誘導できるかは相手の意思や、対象に蓄積された思念次第だ。

 仲間達のように俺と同調して行動してくれる者達は細かいところまで指示できるが、敵対していたり、頑なだったりする者は少しずらす程度のことしかできない。

 しかし、一定範囲内の戦力差を覆すには十分過ぎる程だ。


「ショウジ・ヨスキの鏡像。最後の戦いを始めるとしよう。今日この日を以って世界は変わる。特定の誰かを生贄とする救世は、終わりだ」

「そうはさせん! 貴様のやり方はこの世界の全てを穢すもの。たとえ貴様がどのような力を持とうとも、この俺が必ず防いで見せる!!」


 正面から互いに己の主張を告げ、それぞれ改めて構えを取る。

 そして、次代のあり方を定める決着へのカウントダウンが再開されたのだった。

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