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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
最終章 英雄の燔祭と最後の救世

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337 揃った手札

「すみません。少々手間取りました」


 ルトアさん達が刑務所からライムさんを連れ出し、彼と共にホウゲツ学園の職員寮に一旦戻ってきてから少し遅れて。

 自らの役割を終えて帰ってきたレンリが、申し訳なさそうに頭を下げた。

 セトと共に、目的の対象をそれぞれ一人ずつ抱えながら。


「だ、大丈夫ですか?」


 気を失っている様子のその二人を見て、ルトアさんが心配そうに近寄る。

 抱えられた少女達の扱いは随分と違っていた。

 一方はレンリによって、まるで荷物のように肩に担がれている。

 対照的にもう一方は、セトにお姫様のように丁重に抱えられていた。

 それもそのはず。セトの腕の中にいるのは彼が好意を抱いている元同級生の女の子、ユニコーンの少女化魔物(ロリータ)と真正少女契約(ロリータコントラクト)を結んで当代の聖女となったラクラちゃん。

 レンリの肩で逆Uの字になっているのは、正にその彼女のパートナーとなったユニコーンの少女化魔物スール。対応に差が出るのは当たり前というものだろう。

 ちなみに、スールを補導した時に一緒に捕らえた彼女の舎弟のような存在、アーヴァンクの少女化魔物パロンは連れてこなかったようだ。

 冷静に話を聞いてくれなさそうだし、さもありなんとしか言いようがない。


「護衛が邪魔で説明の暇がなく、無理矢理連れてくる形になってしまいました」

「ほとんど間髪容れずに攻撃してたように見えたけど……」


 どことなく恥じ入るように告げたレンリに、セトがジト目を向けて少しだけ責めるように言ってから彼女達の状況について弁明を始める。

 前提として、俺が【ガラテア】と契約を結んだ前後のこと。

 トリリス様はホウゲツ学園の施設を再生し、それと同時に敷地内にいた者を地下から元の位置に戻したらしい。勿論、ラクラちゃん達も。

 つまり彼女がいたのは、関係者以外立ち入り禁止の聖女教育施設。

 状況が状況だけに当然のことながら護衛は少なくなく、そこに不法侵入したレンリ達は力づくで彼女達を連れてきた訳だ。

 その過程でスールとパロン辺りが暴れ、意識を奪わざるを得なくなったようだ。


「まあ、もう間もなく目を覚ますでしょうが、余り猶予はありません。まずは目的地へと向かいましょう。説明は道すがら、目覚めてから」


 と、ラハさんが促すように全員に言い、その提案に対する同意を得る。

 それから彼女達は、レンリの祈念魔法によって再生成されたルトアさんの影の空間へと一人一人順に入っていき……最後にトバルとヘスさんが残る。

 その二人を代表してヘスさんが口を開いた。


「自分達はここで吉報を待つッス」


 彼女達は戦闘力的に心許ないので同行するのは危険だ。是非もない。

 トバルとヘスさんは、新たに複製改良した祈望之器(ディザイア―ド)をいくつも持ってきてくれた時点で十二分に俺達の助けになってくれたと言っていい。


「はい! 必ずイサク君を助け出して見せます!」


 そんな二人にルトアさんはそう応じ、今ここに揃った手札と共に氷漬けの俺達が待つ鎮守の樹海へと飛び立った。


「……しかし、今更ですが、あのテレサという少女化魔物の情報を鵜呑みにしていいんですか? 旦那様は、本当にそこにいるのでしょうか」


 景色が急激に移り行く中、レンリが影の中で若干疑わしげに問う。


「それはー、この私が保証するのですー。間違いなくー、この方向に彼と彼女達の気配が感じられるのですよー」

「ベヒモスの少女化魔物たる貴方が言うのであれば、問題ありませんね。後は、フラガラッハによる傷と呪いを彼女達が癒やせるかどうか、ですが……」


 ラクラちゃん達の役割は、当然と言えば当然だが、俺の傷を癒やすこと。

 単なる傷であれば祈念魔法でも治せるはずだが、俺の心臓を穿ったのは祈望之器フラガラッハだ。その一撃は対象に呪いを与え、必ず死に至らしめると言う。

 しかも、その呪いの強度は、ヤハタノカミの少女化魔物たるチサさんの力と複製改良された種々の祈望之器によって完全にオリジナルを超えている。

 恐らくラクラちゃんとスールが力を合わせ、更に狂化制御の矢やメギンギョルズをフルで使用してようやく治療することができる、というところか。

 そのため、正直扱いにくいスールの存在も残念ながら必要不可欠だ。

 いざとなれば、ライムさんの力で精神干渉する以外ないだろう。


「う…ん……」


 そう考えていると、都合よくラクラちゃんが先に目を覚ます。


「アッチの子は話が落ち着いてから起こすね」


 どうやら同じく現在の光景を見ていたリーメアが調整してくれたらしい。

 ありがたい気遣いだ。

 合わせてアコさんが視点をセトのものへと変更した。

 影の中で寝かされていたラクラちゃんが、ぼんやりとしながら起き上がる。


「ここは……?」

「ラクラちゃん」

「セト君……? ボクは……あっ! レンリさん!」


 意識を奪われる直前のことを思い出したのか、ハッとして警戒するように近くにいた彼女から距離を取るラクラちゃん。


「手荒な真似をして申し訳ありません。ですが、ラクラさん。話を聞いて下さい」

「は、話……?」

「それは僕が」


 若干の気まずさを声に滲ませながら、セトが既に何度もした説明を繰り返す。

 ラクラちゃんはセトが相手だからか、黙って耳を傾け……。


「イサクさんが……そうなんだ……」


 そうポツリと呟いた。

 どうやら彼女もまた薄々感づいてはいたようだ。

 驚きよりも納得の割合の方が大きい反応だ。


「だから、兄さんを助けて欲しい。兄さんならきっと、救世の転生者なんて犠牲者を作らなくても世界を救ってくれるはずだから」

「そう、だね。うん。ボクもそう思うよ。あのイサクさんだもの。それに……」


 ラクラちゃんはセトの言葉に同意を示すと、一拍置いてから更に続ける。


「傷ついた人を救うのが、聖女の仕事だからね。ボクも手伝うよ」

「ラクラちゃん……ありがとう」


 自らに課せられた役割を誇るように応じた彼女に、セトは羨望の眼差しを向けながら呟くように感謝の言葉を口にした。

 同時に、一歩も二歩も先を行っている彼女に負けないようにと心の内で己を強く奮い立たせると共に、まずは俺を助け出そうと改めて気持ちを固める。

 そして見詰め合う二人。いい感じの雰囲気だが……。


「であればラクラさん。この子の説得をお願いします」


 そういうのは後にしろとばかりに、やや強めの口調でレンリが横から告げた。

 このタイミングで目を覚ましたスールをガッチリと拘束しながら。


「ス、スール様」


 口を塞がれたまま藻掻いている彼女の姿を目にして、ラクラちゃんは慌てたように近寄る。そして説得を始め、機嫌を損ねて渋るスールを必死に宥めた。

 彼女が懸命に言葉を重ねていく度にスールは徐々に大人しくなっていき、やがて十分落ち着いたと判断されたのかレンリから解放される。

 その後もスールは不機嫌そうにしてはいたものの、最後には冷静に口を開いた。


「……ラクラがそこまで言うのであれば、仕方がありませんわ。そういった性質こそ、このワタクシが認めた魂の輝きというものですから。お手伝いしましょう」

「あ、ありがとうございます!」


 彼女の諦めたような言葉に対し、セトが感謝と共に頭を下げる。


「勘違いなさらないで下さい。ワタクシはあくまでもラクラの手伝いをするのみです。決して、男である貴方の頼みを聞いた訳ではありませんわ」

「は、はあ」

「………………ですが、貴方。男にしておくには勿体ない顔立ちですわね。ことが終わったら、色々と弄ってみるのも悪くないかもしれません」

「え? あの、何を――?」

「さあ、さっさと仕事を済ませますわよ!」


 訝しげなセトの問いを遮って仕切り出すスール。

 弟は嫌な予感を抱きながらも、諸々棚に上げて影の外へと意識を向けた。

 すると、そんな風にラクラちゃん達の説得を行っている間に景色は様変わりしていて、どこかの建物の中にいるようだった。

 セト共々少し混乱してしまう。


「場面が飛び過ぎだ。一旦、巻き戻せ」

「……貴様が私に指示をするな。リーメア、時間の進みを遅らせてくれ」


【ガラテア】の指示に忌々しそうに吐き捨ててから、アコさんはリーメアに夢の世界の調整を頼むと再び視点をルトアさんのものに変えた。

 すると、眼下に深い森が広がる光景が映し出され……。


「アレが鎮守の樹海……」

「彼の居場所はー、丁度森の中央付近ですねー」

「あ、あの……中央って、どこですか?」


 更に少し進んで樹海の上空に至ったルトアさんは、動揺と共に問いかけた。


「中央は中央ですよー」

「いえ、その……」


 意図が通じない戸惑いに声が小さくなる。

 彼女の視界。

 その中はいつの間にか一変し、富士山に相当する霊峰すら消え失せて、地平線までただただ森だけが広がる光景に成り代わっていた。

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