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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第6章 終末を告げる音と最後のピース

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304 揃い踏みのリクル捜索

 ベヒモスの少女化魔物(ロリータ)ムートとの面会を早々に切り上げて、早速彼女に特別労役を依頼する手続きを行おうとアコさんに相談した翌日。

 諸外国への根回しも優先的に速やかに済ませてくれたらしくルトアさんを通じて連絡が来て、それを受けて俺は再び特別収容施設ハスノハを訪れていた。

 入口には既にアコさんと、その隣にふくよかな少女の姿がある。

 細身のアコさんの傍だと一層、少女化魔物としては異例の容姿が際立っている。


「ではー、行きましょうかー。エスコートよろしくですー」


 そのムートは、相変わらずの間延びした口調と柔らかな微笑みと共に言った。

 最終的にはムートに行き先を指示して貰うことになる以上、形としては、どちらかと言えば俺がエスコートを頼む側のような感もあるが……。

 結局のところ、移動用の足は俺だ。

 同じ陸地に立つ存在を感知することのできる彼女の力こそが今回の試みの要でもあるし、何にせよ、丁重に扱うとしよう。

 敵対する必要もなくなった今、目の前にいるのは一人の人外ロリでもあるし。


「じゃあ、失礼して」

「…………さすがにこれはー、ちょっと恥ずかしいですねー」


 影の中にはテアがいるため、影に入って貰う訳にはいかない。

 なので、表向き中にいる他の仲間達が今一納得していないとか適当に理由をつけて、ムートには抱きかかえて運ぶ形を了承して貰った。

 そして今正に彼女を抱えると共に、安定するように更に少し引き寄せる。


「んー、けどー、意外と悪くはないですー」


 すると、ムートはそうされることに余り慣れていないのか苦笑気味にはにかんでいたが、どこか楽しそうに言葉を続けた。

 そんな彼女の姿を前にして、俺は別のベクトルで羞恥に近い感情を抱く。

 これまで同様にお姫様抱っこしてきた子は、基本背格好が俺と似通っていた。

 それでも余り格好がつかないと悩んできたが、今回に至っては彼女の方が明らかに立派な体格。いつも以上にバランスが悪い。違和感が強い。

 もっとも、あくまで俺のコンプレックスが大部分を占めている問題なので、彼女が特に気にしていないのであれば、今は捨て置くべき気持ちではあるけれども。


「さー、出発しましょー」


 と、やはりそんなことに拘るのは俺だけだとでも言わんばかりに、ムートは抱えられたまま楽しそうに斜め上の空を指差しながら言う。

 大地を司ると謳われた存在として対応すべき最たる問題が解決して懸念が晴れた今、もはや細かいことは一々気にしないという感じもあるのかもしれない。

 ともあれ、俺はそんな機嫌よさげな彼女に頷いてから、こちらの様子を見守っていたアコさんへと顔を向けた。そして――。


「じゃあ、アコさん。行ってきます」

「……イサク。出鼻を挫くようで申し訳ないけれども、くれぐれも冷静にね」


 ムートを抱えたまま呼びかけた俺に対し、彼女は懇願するように言う。

 冷静に。たとえ万が一の状況に遭遇してしまったとしても。

 彼女は恐らく、そう心の中で続けていたに違いない。

 始祖スライムの分裂体の一つが少女化魔物となったリクル。

 かつての数少ない前例において、行方をくらまして再び始祖スライムに融合されたと思われる存在を取り戻すことができた事例は皆無だ。

 まあ、たった二度だけと本当に前例が少な過ぎて確実なことは言えないが。

 それと同じかそれ以上に。救い出すことができると断言することも不可能だ。

 しかし、たとえそうだとしても……。


「分かってます。ですが、やれることは全てやっておきたいので」


 と言うか、リクルのために何かをしているという意識が心の内にないと、余計なことばかり考えてしまって駄目だ。

 僅かな可能性のおかげで表面上平静を保てているが、割と危うい状態ではある。

 いずれにしても始祖スライムは今現在どこかに存在している訳だから、何かしらの決着をつけなければ精神的にも一区切りつけることができない。

 …………それが仮に最悪の結果だったとしても。


「では、失礼します」


 そうした思いと共に俺はアコさんに別れを告げ、彼女が「うん」と頷くのを確認してからムートを抱えて空へと舞い上がった。

 それから雷光と共に音を遥かに超えた速度で移動を開始する。

 一先ず北へ。元の世界で言う北海道からだ。


「それにしてもー、始祖スライムにそんな特性があったとは知りませんでしたー」


 その道すがら、アコさんから今回の目的と諸々の事情について全て聞かされていたらしいムートがしみじみと言う。

 そこにはある意味、俺の弱みとなる情報も多分に含まれているが……。

 当然ながら、彼女はアコさんの〈命歌残響(アカシックレコード)〉によるチェックを受け、救世の転生者に対して何ら叛意がないことを証明している。

 なので、今のムートにはリクルについて知られても何一つとして問題ない。


「この前の不調も理解することができるというものですー」


 続けて、同情するように俺を労わるムート。

 基本的に己を打ち負かした相手以外には傲慢な三大特異思念集積体(コンプレックユニーク)とは思えない気遣いだが、そうした友好的な態度は好意によるものではないだろう。

 大地を脅かす可能性のある最凶の人形化魔物【ガラテア】に対するカウンターとして、救世の転生者が有用だからに過ぎない。

 それは面会の時にもチラッと口にしていたことだ。

 その辺は勘違いしないようにしておかなければならない。


「まあ、そんなことは戦いの場で言い訳にならないけどな。それより、どうだ?」


 丁度彼女の言葉に応じたタイミングで北海道に到着し、地面に降り立ったところで話を本筋に戻すように早速問いかける。


「……とりあえず変なスライムはいないですねー」

「そうか。じゃあ次だ」


 対するムートの答えを受け、俺は即座に地面を蹴って飛行を再開した。

 ここからは陸地を一つ一つ移動していく予定だ。

 とりあえずは目ぼしい大陸や一定以上の大きさの島から順々に。

 北海道の次は樺太と千島列島。それからロシアもといアクエリアル帝国。

 その領地に降り立てば、それだけでユーラシア大陸からこの世界では完全な地続きのアフリカ大陸までをカバーすることができる。

 なので、次は北アメリカ大陸方面へ。

 その後は世界各地の島を巡っていく予定だ。

 途中、【ガラテア】の居場所が判明する可能性もなくはないが、この場は一先ずリクル優先だ。ラスボスには万全の状態で挑まなければならない。


「ムート、どうだ?」

「特におかしなところはありませんねー」

「分かった。ラハさん、この付近に他に大きな島はありますか?」

「一番近いのはもうアチラの大陸ですね」

「アスカ。空に異常は?」

「問題ありませぬ」


 ムートの返答に続き、影の中にいる二人にも問いかけて答えを貰う。

 今回は下手をすると小さな島の一つ一つまで探知する必要があるかもしれないので、海に属するものを感知できるラハさんも同行してくれている。

 その力で海にあって海でないものを逆算すれば、島の位置は把握可能だ。

 さすがに陸上生物が存在できないような小島は除外してもいいとは思うが、念のために昨日の内にお願いして承諾を貰っていたのだ。

 勿論、レンリもその力を使うことはできるが、こと感知力においては生まれながらに概念を付与された純粋な少女化魔物の方が強い。

 なので、レンリはセト達の護衛としてホウゲツ学園に残っている。

 前回の襲撃を失態と捉え、過剰に気合を入れていたのは余談だろう。


 それはともかくとして。

 常に共にいるアスカと合わせ、三大特異思念集積体揃い踏みの恰好だ。

 この世界としては、恐らく凄い状況に違いない。

 深く関わり合いを持った俺からすると、余り実感は湧かないが。


「さて、次は……北アメリカ大陸か」


 ベーリング海峡にある島を経由して、次はアラスカへ。

 そこに降り立った時点で、こちらも陸続きになっているので南アメリカ大陸までムートの探知は及ぶ。かなり面積が広いので期待したいところだ。


「……どうだ?」


 ほとんど落下するように降下して、着陸すると同時に問いかける。

 すると――。


「あー、もしかするとこれかもしれないですねー」

「見つけたのか!?」

「はいー。アッチの方向ですー。ただー、空を飛ぶと正確な位置が分からなくなるのでー、定期的に地上に降りて欲しいのですー」


 期待していた答えに色めき立った俺を余所に、ムートはマイペースに相変わらずの間延びした口調で答える。

 そんな彼女の様子に勢いを削がれ、俺は深く息を吐いて気持ちを鎮めた。

 アコさんに言われた通り、今こそ冷静でいなければ。


「……分かった」


 その間も南の方角を指差し続けていたムートに改めて落ち着いて頷き、それから小刻みに飛行と地上への降下を交互に繰り返しながら進んでいく。

 すると、南アメリカ大陸に広がるアマゾン熱帯雨林の上空にまで来た。


「あの辺ですねー」


 一旦、森の奥深くに入って再び空高く飛び上がってムートから指示を貰う。

 指の角度は大分下に向いて、おおよそ目で当たりをつけられる状態になった。

 世界最大の熱帯雨林の真ん中辺り。

 どうやらそこに始祖スライムはいるようだ。

 逸る気持ちを抑え、一つ深呼吸してからムートが示した場所へと向かう。


「あれは……あれが……?」


 そうして俺がそこで目にしたのは、直径十数メートルの巨大な水溜まりから中心が五メートル程度盛り上がって一定の形を成している奇妙な存在の姿。

 やや青みがかった透明な液体が流動性を明確に保ちながらも、歪な少女の形を維持している不可思議な光景だった。

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