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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第6章 終末を告げる音と最後のピース

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268 妹と魔炎竜

 三大特異思念(コンプレックス)集積体(ユニーク)が一体、ジズの少女化魔物(ロリータ)たるアスカなら全世界を感知できるとは言っても、その瞬間に空に属している存在でなければ対象にはならない。

 即ち、世界のどこかに生まれたらしい妹が都合よく空を飛んでくれなければ、居場所を特定することはできない訳だ。

 しかし、それをただ待っているだけというのは両親に申し訳ない。

 だから俺は、少しでも情報を得るために再び学園長室を訪れていた。


「……日に二度も来るとは暇な奴だナ。さっきの今では何も進展はないゾ」


 対してトリリス様は、部屋に入った俺に呆れたような視線を向けてくる。


「忘れものでもしたのです……?」


 比較的ニュートラルな表情のディームさんの声にも、似たような気配がある。

 まあ、トリリス様が言った通り、ちょっと前に辞去したばかりなのにまたやってきた訳だから、仕方のない反応と言えば仕方のない反応だ。

 とは言え、暇人のように思われるのは少し心外だ。


「別件です。実は……」


 若干不満の色を滲ませながら切り出し、再訪問の弁明をするように両親から聞いた話をそのまま伝えた上で居場所の心当たりがないか尋ねる。

 それから一歩戻って、根本的なところも聞いておくことにする。


「と言うか、本当に妹ができたのでしょうか」

「特に精神に変調をきたしていた訳でもないのであれば、それ以外の理由でそのような症状が出るはずないのだゾ」

「常時身体強化をしていれば、病気にかかることもほとんどないのです。つまるところ、十中八九イサクの妹は生まれたと考えていいのです……」

「そうですか……」


 とりあえず、想像妊娠とかそういう斜め上の仮定はしなくていいようだ。

 しかし、母さんの傍で生まれてくれさえすれば素直に祝福できたのだが。


「それにしても四人目とはナ。まあ、イサクの前世の世界とは違って人間も若い期間が大分長いし、四人という数字だけなら珍しいとまでは言えないが――」

「年齢を考えると中々に珍しいのです……」

「全く仲がいいことだナ。ファイムとジャスターは」


 と、何とも嫌らしい笑みと共に下世話なニュアンスを込めて言うトリリス様。

 俺の反応を見たいだけなのは明らかなので、軽くスルーしておく。

 彼女は更にディームさんにも無視されて何とも寂しそうな顔をしているが、これもまた構って欲しいアピールだろう。

 それよりも、妹の存在が確定的となったのなら次はその居場所だ。

 さっさと話を戻そう。


「少女化魔物の子供として新たな少女化魔物が生まれる場合、その出現場所に法則みたいのはないんですか?」

「それは……あると言えばあるし、ないと言えばない、というところだナ」

「何ですか、それは」


 キッチリ否定するでもなく、曖昧な言い方をするトリリス様を軽く睨む。

 まさか冗談に反応がなかったことに拗ねている訳ではないだろうな。

 そう邪推し、こういう時に頼りになるディームさんに目を向ける。


「トリリスの言っていることは間違いではないのです……」

「と言うと?」


 そんな彼女とのやり取りにトリリス様が今度こそ割と本気で拗ねたような表情を浮かべているが、それも放置しておく。


「基本的に、そのような形で生まれた少女化魔物でも他の少女化魔物同様、基となった魔物が生息し易い環境に生まれ易いという程度の傾向はあるのです……」

「だから、あると言えばあるし、ないと言えばない、ですか」


 その種族の魔物が生息し易い環境というだけでは、候補となる地は腐る程あるだろう。それではランダムも同然だ。


「いや、場合によってはもう少しだけ絞ることができるのだゾ」


 と、気を取り直した様子のトリリス様が言い出したので、続きに耳を傾ける。


「知っていると思うが、ファイムはかつて野良少女化魔物だった折、魔炎竜などと呼ばれて恐れられていたのだゾ」

「ああ。聞いたことがあります。ただの思い込みで危険な魔物として迫害され、暴走してしまったところを父さんに助けられたとか」

「ほぼほぼその通りだゾ」


 一連の話は、恐らく大人の事情か何かで大幅にアレンジされた上で『勇者ジャスティンと魔炎竜フレム』とかいう絵本にもなっていた。

 俺が書斎に辿り着けるようになった頃には既に家にあったぐらい古いものだ。

 実際、肉体年齢で十二歳年上のアロン兄さんが生まれるよりも前の話なのだから、件の事件は間違いなく三十年以上前の出来事だと考えていい。


「その舞台となったのはフレギウス王国だったのだがナ。あの国では未だに魔炎竜の名は凶悪な魔物として語り継がれているのだゾ」


 未曽有の大災害の記憶、ようなものか。

 しかし、それはつまり……。


「気づいたナ。そう。ファイムの娘であれば、その思念の蓄積に乗っかってフレギウス王国に出現していてもおかしくないのだゾ」

「…………成程」


 トリリス様の言葉に納得の意を示す。

 少女化魔物発生のメカニズムを考えると、可能性は高そうだ。

 とは言え――。


「ただ、確実とは言えないですし、何より現在、ホウゲツ国民のフレギウス王国とアクエリアル帝国への渡航は完全に禁止されているのです……」


 かの二国では現在進行形で喇叭(ラッパ)人形化魔物(ピグマリオン)【終末を告げる音】が暗躍し、ほぼ戦争状態というところにまでなってしまっている。

 加えて、そもそも国家間の交流も盛んという訳ではない。

 補導員や遺跡調査に関わる冒険家はともかく、民間では皆無と言っていいような状態なのだから、前世の世界よりも渡航禁止の措置は出し易いだろう。

 何にせよ、そんな状況では確証もなくフレギウス王国へ行くことはできない。

 結局はアスカの感知に頼る以外に方法はないのかもしれない。


 まあ、感知したからと言って分かるのは、巨大なドラゴンが飛んでいる、ぐらいのもので即座に妹だと確定できる訳ではないが……。

 ドラゴン自体そうそう飛んでいるものではないし、フレギウス王国で反応があれば優先的に見張るぐらいのことはできる。

 全く無駄な情報という訳ではない。


「ともあれ、何か手がかりが得られたら教えてやるのだゾ」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 話を打ち切るように早口で言ったトリリス様に、一旦思考をとめて頭を下げる。

 彼女達の知識から得られる情報は、一先ずこれ以上はなさそうだ。

 なので、お暇しようと口を開きかけるが、それに先んじて。


「イサクには申し訳ないのですが、この後すぐに用事があるのです。今日のところは、話はここまでにして欲しいのです……」


 珍しくディームさんの方からそう切り出され、俺は思わず驚きと共に「え?」と返してしまった。


「……お前、ワタシ達は暇人だとでも思っているのではないカ? 心外だゾ」

「い、いえ、そんなことはないです」


 ちょっと棒読み気味になる。

 何だかんだ急に訪れても対応してくれるし、少しそう思っていた部分もあった。

 が、曲がりなりにも二人はこの国が誇るホウゲツ学園の学園長と副学園長。

 更には奉献の巫女ヒメ様と共に救世の転生者をサポートする、国にとっても世界にとっても重要な役割を担っている存在だ。

 特に人形化魔物(ピグマリオン)達が活発になっている今、忙しくないはずがない。

 改めて考えると、こちらの都合で何度も押しかけてしまって申し訳ない。


「すみません、お忙しいところ」

「いや、まあ、緊急の案件であれば優先して対応するからナ。気にするナ」

「何かあった時にはルトアに言えば、ムニを通して連絡がつくのです……」

「ありがとうございます」


 トリリス様とディームさんのフォローに自然と頭が下がる。

 彼女達の日々のサポートには感謝しかない。

 いや、本当に。余計なのはトリリス様の悪戯や冗談ぐらいのものだ。


「何か変なことを考えていないカ?」

「いえ、そんなことは。では、失礼します」


 ジト目を向けてくる彼女の問いを素知らぬ顔で否定し、それから俺は追及される前に本日二度目の別れの挨拶をして学園長室を後にした。

 そして、とりあえず魔炎竜に関する資料でも探そうと図書館を目指す。


「…………胡散臭いわね」

「ん? 何がだ?」


 その途中、フェリトが影の中から不審げな声色でそんなことを言い出し、俺は歩きながら首を傾げて尋ねた。


「何か急に私達を急いで帰らせようとしなかった? そんなに大事な用があったなら、普通は部屋に入ってきた時点で時間を区切るぐらいするはずじゃない」


 言われてみると、そうかもしれない。

 予定の時間が迫っている割には最後に微妙な雑談もあったしな。

 その辺り、横から見ていると特に違和感を抱き易いだろう。


「それは恐らく、急遽関係各所との調整に行くことにしたからでしょう」


 と、イリュファがフェリトの疑問に答えるように言う。


「どういうこと?」

「横紙破りの影響を最小限に留めるために、小細工するつもりだと思われます」

「横紙破り?」


 フェリトが質問を繰り返すが、イリュファは最後の問いには答えない。

 だが、しかし。誰が。何のために横紙破りをするのか。

 その辺りのことは、わざわざ言われずとも何となく予想できるものだった。

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