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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第6章 終末を告げる音と最後のピース

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267 どこかにいる妹

「い、妹ができたって、本当に?」

「恐らくは、な」

「恐らくはって……」


 何故か曖昧な肯定の仕方をする父さんに困惑しながら、母さんに視線を戻す。

 妹ができた。その部分だけを聞けば、普通は目出度い話と考えていいはずだ。

 にもかかわらず、父さんも母さんも何やら深刻そうな雰囲気。

 まるでアロン兄さんが行方不明になった時や、この前セトが眠りから目覚めなくなってしまった時のような狼狽具合に見える。

 どうして二人共そんな風になっているのか、ちょっと意味が分からない。

 意味は分からないが……。

 少女化魔物(ロリータ)という存在は人間よりも遥かに精神が肉体に及ぼす影響が大きいのだから、今の母さんの状態が余り好ましくはないことだけは分かる。


「ええと、一体どういうことなの?」


 とにもかくにも。

 何か問題が発生しているのであれば、速やかに解決して、母さんには調子を取り戻して貰わなければならない。

 それは、前世でできなかった親孝行を今生の目標の一つと定めた俺の役目だ。

 そう考えて、若干強めに問いかけると――。


「イサク様、少女化魔物の出産については以前お教えしたはずです」


 職員寮の自室に戻ってきた段階で影の中から出てきていたイリュファが、横から不出来な生徒を叱るように若干呆れ気味に言った。

 少女化魔物の出産、と言うと……。


「あ……」


 その言葉に導かれ、弟のセトが生まれた頃に教わった知識を思い出す。

 妊娠期間が短いなどの特徴は脇に置いておくとして。

 少女化魔物のお腹に宿り、直接生まれてくる子供は男のみという話だった。

 しかし、ならば女の子が生まれてくることはないのかと言えば、そうではない。


「女の子の場合は、世界のどこかで少女化魔物として生まれてくる……?」

「その通りです。比較的珍しい事例ですが」

「い、いや、でも、当時は軽く流したけど、それって本当の話なのか? そもそも何でそんなこと分かったんだ?」


 母親のすぐ近くに発生するのならともかく、どことも知れない場所に出現してしまうのなら関連づけるのは難しいと思うのだが。

 そうした疑問を含んだ諸々の問いに対して、そのまま俺達の中で最も知識深いイリュファが続けて淡々と答える。


「そのケースでも軽度ながら妊娠時の体調不良に近い症状が出ます。それを不安に感じて医療機関に相談した少女化魔物が多くいたため、国が調査を行ったのです」


 更に彼女は「百年以上前のことです」と補足した。

 だが、まあ、実際のところ。

 既に出産を経験している少女化魔物であれば、たとえ軽いものであっても妊娠に極めて似た感覚を抱けば不安に思うのは無理もないことだろう。

 国としても、もしも少女化魔物特有の謎の病気だったら目も当てられないし、調査をしないという選択肢はなかったに違いない。


「その結果、症状が出たのと同時期に同系統の少女化魔物が世界のどこかで発生していることが分かったのです。それも偶然と片づけられない程の割合で」


 そうした符合から推測した訳か。


「加えて、それぞれを引き合わせると必ず互いに親子だと確信するそうです。たとえ事前に情報を伝えていなくとも、恐らくは本能的に」

「本能的に……ね」


 いずれにしても根拠としては大分状況証拠的、感覚的なものばかりではある。

 しかし、一通りイリュファの説明を聞いた限りでは、確かに定説と見なしてもいいと俺も思うぐらいには説得力が感じられた。

 それに、特段強硬的に否定しなければならない拘りも俺にはない。

 まずは正しい情報と前提して話を進めよう。

 母さんに向き直って改めて口を開く。


「つまり、妊娠した時みたいな体調不良があったけど症状は軽くて、お腹も大きくならなかったから、そういう風に判断したってこと?」

「……うむ。気のせいかとも思ったのじゃが、思い返せば思い返す程にアロンやお前、セトを妊娠した時と似た感覚だったように感じてな」


 子供を三人も生んだ少女化魔物は割と珍しい。

 そんな母さんが妊娠と似たような感覚と言うのなら、間違いではないだろう。

 とは言え、実際に同じ系統の少女化魔物が発生したという情報が出回っている様子はないから、父さんも恐らくとしか言うことができなかった訳だ。


「この世界のどこかに実の娘が放り出されてしまったと考えると居ても立っても居られなくてな。イサクも困るだけじゃろうと思いつつも、来てしまったのじゃ」


 そうして今に至る、と。

 そこまで言い終えた母さんは申し訳なさそうに俯き、父さんは父さんでそんな母さんの小さな肩を抱きながら同じ感情の滲んだ目を俺に向けてきている。

 子供に迷惑をかけるのは心苦しいという感じだ。

 だが、俺としては二人が頼りにしてくれているようで正直かなり嬉しかった。

 状況が状況だけに、それを笑顔で表現することはできないが。


「すまぬな、イサク」

「ううん、いいよ。家族なんだから」


 俺が首を横に振ってそう言うと、母さんは少しだけ表情を和らげてくれた。

 この様子なら、体に影響が出る程まずい状態にまではならないだろう。

 一先ず安堵するが、これだけでは根本的な解決とはならない。

 妹を見つけ出さなければ。


「じゃあ……とりあえず俺の方でも情報収集したり、何か妹の居場所を特定できるような方法がないか考えてみるよ」

「うむ。妾達もこれから伝手を頼って調べてみるつもりじゃ」

「何か分かったら、補導員事務局の掲示板とかで連絡してくれ」

「うん、分かった」

「……イサク、ありがとうな」


 そうして最後に父さんが感謝を口にしてから、二人は職員寮を出ていった。

 父さんも気が気ではなかったのだろう。

 母さんの精神状態が幾分か安定してホッとしたようだ。

 とにもかくにも(子供)の顔を見せて落ち着かせるために、情報収集に先んじてわざわざ俺のところを訪れたに違いない。


「……それにしても、妹、か」


 両親が去って一気に静かになった部屋の中。ポツリと呟く。


「お母さんの娘ってことは、多分火竜(レッドドラゴン)の少女化魔物よね?」


 と、それに反応してフェリトが確認するように問うてきた。

 彼女も姉がいて妹に当たるから、何かしら思うところがあるのかもしれない。

 その姉と離れ離れになっているだけに尚更。

 そんなフェリトの問いかけに、イリュファが首を横に振って答える。


「いえ、全く同じ種族になるとは限りません。まあ、少なくとも似たような系統の少女化魔物であることは間違いありませんが」

「それって色違いだったりとか?」


 今回は家族の話だからか普段よりも興味がある雰囲気を出しているサユキに、イリュファが「そのような感じです」と肯定した。


「まあ、そのものじゃないにしても、お母さんの娘なら、そこらの魔物に負けるような強さのはずないわよね。なら、少しは猶予があるかしら」

「そうかもですけど、独りぼっちは可哀想です」

「そうだよ、フェリトちゃん」


 確かな自我を得た時には異物として同族に独り追われていたリクルと、一度俺と別離した後しばらく独り放浪していたサユキの二人が抗議するように言う。


「分かってるわ。可能な限り急ぐべきなのは。でも、どうしたものかしらね」

「世界のどこかにいる特定の一人を見つけ出す……そんな都合のいい方法があるのなら、とっくにテネシス・コンヴェルトを捕まえているしな」

「そうよね……」


 それにフェリトの姉、セレスさんを助け出すこともできているはずだ。

 彼女もそう思ったのか同意するように頷き、それから再び口を開いた。


「ねえ、アスカ。何かいい案はないかしら」

「……一つ、ありまする」

「え? あるの?」


 特に期待していなかったのか、フェリトは驚いたようにアスカを見る。

 単に彼女が静かだったから話を振ってみただけのようだ。


「火竜と同系統ならば空を飛ぶこともできるはず。ワタシが常時世界全体の空を監視し、主様の妹御が飛行して下されば見つけ出すことも不可能ではありませぬ」

「あ、成程。それは確かに」


 彼女の言葉に思わず膝を打つ。

 三大特異思念(コンプレックス)集積体(ユニーク)が一体、空を司るジズの少女化魔物たるアスカは空に属するもの全てを感知することができる。

 テネシスのように感知から逃れようという意思がない限りは、それは有効な方法だ。妹が空を飛べば、位置を特定することも十分可能だろう。

 テネシス対策と半ば混同し、つい思考から除外してしまっていた。


「なら、アスカ。悪いけど頼めるか?」

「主様の頼みでありますれば、悪いことなど何一つありませぬ! 何より、主様の妹御となればワタシにとっても妹のようなものですので!」

「…………新しい妹ができるの?」


 意気込むアスカの言葉に、母さん達が帰ってから影から出てきて隅っこで一人綾取りをして遊んでいたテアが小首を傾げながら問いかけてくる。


「そうだな。アスカの更に下の妹、かな」

「楽しみ。一緒に遊んであげたい」


 状況を考えると大分ずれた発言だが、それでも元々の彼女を思えば、アスカという後から仲間に加わった存在のおかげで社交性が高まった結果だ。

 後進ができたことを意識すると、先達も更に成長する。そういうものだ。

 それだけに――。


「アスカ、頑張って」

「はい! お任せ下さいませ!」


 そんなテアの激励に力強く応じるアスカを見ながら、母さんは勿論のこと、彼女のためにも早く妹を見つけてやりたいと俺は切に思った。

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