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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第5章 治癒の少女化魔物と破滅欲求の根源

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256 拡大していく被害の中で

 暴走した(バク)少女化魔物(ロリータ)暴走(パラ)複合発露(エクスコンプレックス)によって今正に引き起こされている問題を、トリリス様達から聞き出した翌々日。

 図書館で過去の事件について調べているところをルトアさんに呼び出され、再び学園長室に向かうと部屋の中には何故か両親の姿があった。

 少し驚きつつも、とりあえず先にトリリス様に挨拶して二人の間に入る。

 母さんの視線を感じるが、場所が場所だからか今回は自制しているようだ。


「ファイム、ジャスター、イサク。落ち着いて聞いて欲しいのだゾ」


 と、彼女は明らかな悪い話の前振りをし始め、俺達は少し体を強張らせた。

 父さんと母さんまで呼んで、一体何の話だ?

 少なくとも救世の転生者に関わることではないとは思うが……。


「セトのことだがナ。今現在、トバルと共にアマラの工房で合宿のようなことをしていたのだが……アマラから眠りから目覚めなくなったと連絡があったのだゾ」

「何じゃとっ!? セトが!?」


 トリリス様が口にした内容を前に、声を荒げて彼女に迫ろうとする母さん。


「ファイム。落ち着け」


 それを父さんが、感情を抑え込んでいるような声色で制する。

 驚きが勝って反応が遅れたが、俺も父さんも心情としては母さんと同じだ。

 とは言え、原因は獏の少女化魔物だと分かっている。

 トリリス様達に詰め寄って解決する話ではない。

 それよりも、まず確認しておかなければならない部分がある。


「新聞にも載ってましたけど、仮称眠り病、でしたか。それは眠り続けるだけで健康に害はなくて、栄養補給さえできれば命に別状はないんですよね?」


 半ば説明口調で、基本的な情報を共有するように問いかける。

 祈念魔法や複合発露(エクスコンプレックス)といった特殊な力がある世界。

 点滴という手段が最適になるかは分からないが、とりあえず患者に栄養を与える手段はいくらでもあるはずだ。


「その通りだゾ」

「特別扱いはしませんが、万全の体制を整えているのです……」


 やはり当面は安心できるようだ。しかし――。


「今はよくとも、医療関係者にまで被害が出た場合はどうするのじゃ?」


 睨むように母さんが問う。もっともな疑問だ。

 便宜上眠り病と名づけられた、獏の少女化魔物の複合発露による影響は完全に無差別で距離も関係ない。世界規模のババ引きのようなものだ。

 医療関係者だから確実に免れるということはあるまい。


「基本的に対応は少女化魔物中心で行っているからナ。被害を受けないように各々対策せよと通達してあるのだゾ」

「え。対策って、寝る時に第六位階の身体強化を使用する以外に何か方法が?」


 前回聞いていない話だけに、思わず驚きと共に尋ねる。

 そんな方法があったなら、参考のためにも教えて欲しかったのだが。


「単純な話なのだゾ」

「眠ると影響を受ける可能性があるのなら、眠らなければいいだけなのです……」

「えぇ、そんな無茶な……」


 不眠不休での体制の維持など早晩崩壊するだろう。

 そう思い、余りにブラックな通達に顔をしかめながら言うが――。


「人間には無茶だろうがナ。少女化魔物なら不可能ではないのだゾ」

「少女化魔物にとって睡眠は生命維持に不可欠なものではないのです……」

「ただ単に、人間の機能を模倣しているに過ぎないからナ。眠気覚ましの祈念魔法でも使えば、不眠で活動できるのだゾ」


 そう、なのか……。

 長く一緒に暮らしていると少し感覚が薄れてしまうが、少女化魔物という存在はやはり人外なのだと改めて強く認識させられる。

 そう言えば、母さんがセトを産んだ時、妊娠から出産までのスパンは人間からは考えられないぐらい短かった。

 これもまた少女化魔物が人間と同等の機能を持ちつつも、決定的に異なる存在であることを証明する一例と言える。

 この例にある差異は妊娠期間の負担を軽減したいという人々の思念の蓄積によるものだそうだが、睡眠に関しても似たようなものなのかもしれない。

 一々眠る必要がなければ活動できる時間が大幅に増えるのに、というような人間の思考、思念が一定量蓄積している訳だ。

 勿論、眠ることが好きな人もいるから、完全に睡眠という機能が消えることはなく、少女化魔物への影響という形で現れているのだろう。


 いずれにせよ、一先ず医療体制はある程度強固なものと考えてよさそうだ。

 隣に立つ母さんも、表情を見るに一定の理解を示している雰囲気がある。


「とは言え、方々にシワ寄せが行くことは想像に容易い。そうなった場合、第六位階の身体強化を持つ者に色々と協力を要請することになるのだゾ」

「それは是非もないことじゃがな。解決の目途は立っておるのか?」

「現在、模索中なのです……」


 ディームさんの返答に、打って変わってハッキリ眉をひそめる母さん。

 しかし、最初に比べると随分と冷静に受け止めているようだ。

 対処法を考案でもしない限り、彼女達を怠慢と非難することは道理に合わない。


「話は以上なのだゾ」


 今回の呼び出しの要件としてはセトに関する報告と、万が一の時に備えての協力要請というところか。

 わざわざ面と向かって伝えたのは、被害者家族とも言える俺達への配慮だろう。

 ともあれ、話が終わったのなら――。


「あの、とりあえずセトの様子を見たいんですけど……今はどこに?」

「眠り病の患者は皆、現時点では特別医療施設保有の体育館にいるゾ」

「そこに設置された簡易ベッドで眠っているはずなのです……」

「雑な対応に感じるかもしれないが、下手をするとそこを埋め尽くすぐらいにまで増えるかもしれないからナ。理解して欲しいのだゾ」


 若干申し訳なさそうに告げるトリリス様達。

 まあ、感染する類の病気とかではないのだから、栄養補給の対応をし易い方法ということであれば何ら問題視する必要はないだろう。


「面会可能ですか?」

「家族であれば大丈夫なのです……」

「では――」


 とりあえず家族愛が非常に強い母さんには特に、セトの顔を見せてあげたい。

 見た目は単に眠っているだけのはずだし、幾分か心配が和らぐはずだ。

 伝聞だけでは無駄に不安を煽られるだろうから。


 そうして学園長室を辞去し、俺は両親と共にセトがいる体育館へと向かった。

 補導員の身分証を提示し、中へ。

 イメージ通りのフローリングの非常に広いフロアには無数の衝立が設置され、空間が仕切られた中に簡易ベッドの置かれていた。

 大分狭い気もするが、人一人が眠っているだけならば十分か。

 しかし、普通の病院とも野戦病院のような混沌具合とも全く違う、静けさの中に多数の人々の寝息だけが響く様は何とも異様だ。

 かの少女化魔物の複合発露でもなければ、このような状況は生じないだろう。


「こちらです」


 看護を担当していると思しき少女化魔物の後に続いて狭い通路を行くと、やがてセト・ファイム・ヨスキと名札のついた区画に辿り着く。

 案内してくれた彼女の礼をして中に入ると、穏やかな顔で眠るセトの姿。

 緩やかに動く胸を見ても、本当にただ単に寝ているようにしか見えない。

 中性的な顔立ちと相まって、まるで眠り姫のようだ。


「セト……」


 と、母さんが複雑な表情を浮かべながら彼に近づき、その体を抱き締めた。

 ヨスキ村を出発する時に見送って以来だから、四ヶ月振りぐらいか。

 その時間を埋めるように、母さんはセトの存在を確かめるように抱擁を続ける。

 状況が状況だけに、俺の時のように過剰な力は込められていない。

 それからしばらくして。

 父さんに手を肩に置かれ、母さんは体をゆっくりと離した。

 平静を装おうにも動揺の色濃かった先程までとは対照的に、一つ息を深く吐いた後にはしっかりと落ち着いた母親の姿があった。


「母さん、大丈夫?」

「うむ、妾は大丈夫じゃ。……しかし、セトも成長したようじゃのぅ」

「二次性徴前だから余り背格好は変わってないと思うけど……」

「それはそうじゃが、顔つきがな」

「眠ってはいるが、少し大人っぽくなった。イサクは頻繁に会っているから、気づかないかもしれないが」


 確かに、顔つきの変化は中々気づけないかもしれない。

 精神的な成長は、少し前にハッキリと感じたが。


「やはり子が一番変化する時期を、その傍らで見守れぬのは寂しいものじゃな。イサクがしっかりと見守らせてくれただけに尚更そう思うぞ」

「掟がある以上、こういう状況でもなければ大っぴらに顔も見れないからな」


 まあ、いざとなればヨスキ村の掟など無視しても構わない、というのが俺達家族の総意だけれども。

 とは言え、まだ可能性がある内は見守る、というのもまた俺達の考えだ。


「命に別条がなく一先ずそれはよかった。じゃが、如何に看護体制が整っていようともいつまでも眠ったままでいさせる訳にはいかん」

「時は有限。特に子供の時間は大人のそれよりも貴重だ。真剣に夢を目指す者にとっては尚更のこと。当人の意思を蔑ろにしたこれは時間の浪費に他ならない」

「早く、解決しないと」


 二人の言葉に同意しながら、体育館全体を見回す。

 まだ簡易ベッドを埋め尽くす程ではないが、思ったよりも埋まっている。

 獏の少女化魔物が行動を開始して僅か数日で、と考えると感染力とでも言うべきか、伝達していく速度に甚だしいものを感じる。

 ともかく手がかりを得るため、情報を収集しなければ。

 両親も同じ考えのようで俺達は一つ頷き合い、一度だけセトの寝顔を振り返ってから特別医療施設の体育館を出た。

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