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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第5章 治癒の少女化魔物と破滅欲求の根源

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245 ご都合主義よろしく

 森林都市モクハに存在するホウゲツ学園所有の海水浴場から学園都市トコハに帰ってきた俺は、一先ず嘱託補導員としての職務に戻っていた。

 あれから既に数日経っているが、少なくとも今のところは人間至上主義組織スプレマシーの長、テネシス・コンヴェルトに動きはない。

 無差別な人質を用いた脅迫への対策は、治癒の少女化魔物(ロリータ)を探し出して脅迫を成り立たせなくする以外にも色々と考えてはいるが、結局は進展がないのが現実だ。

 そんな状態では、俺にできることは限られている。

 その数少ない中の一つが――。


「今日も特に異常はありませぬ」

「そうか。……まあ、そうだろうな」


 三大特異思念(コンプレックス)集積体(ユニーク)の内の一体、ジズの少女化魔物たるアスカに頼み、ほぼほぼ継続的に空の監視を行うというものだった。

 加えて、レンリ経由で同じ三大特異思念集積体のリヴァイアサンの少女化魔物たるラハさんにもお願いし、海についても監視して貰っている。

 だが、当然と言うべきか、特に成果は得られていない。

 何故なら――。


「あちらには転移の複合発露(エクスコンプレックス)を持つ少女化魔物がいますからね。余程のことがなければ、空路も海路も使用しないでしょう」


 全く以ってイリュファの言う通りだからだ。

 更に言えば、テネシス達も俺が空を司るジズの少女化魔物と真性少女契約(ロリータコントラクト)を結んでいることは知っているからな。

 間違っても空を飛んでの移動など行わないだろう。

 極端な思想ではあっても、彼らは決して馬鹿ではない。

 むしろ極めて狡猾なのだから、うっかりミスを期待していても仕方がない。


「重ね重ね、ベヒモスの少女化魔物があちら側についていることが悩ましいところですね。……全く、一体彼女は何を考えているのやら」


 忌々しげにつけ加えると、深く嘆息するイリュファ。

 その言葉に、あの能天気な口調のふくよかな少女化魔物の顔を思い出す。

 アスカやラハさんと同じ三大特異思念集積体の一体たる彼女、ムート。

 そのマイペースで間延びした口調と雰囲気に隠されているものの、時折強烈な目的意識が垣間見えた辺り、余程の事情がありそうな気もするが……。

 だからと言って人間至上主義を標榜する組織の長に従い、あまつさえ真性少女契約を結ぶに足るような理由があるとは俺にはどうしても想像できない。

 あるいは、人外ロリを不当に排斥しようとする組織への反感が目を曇らせているのかもしれないが、こればかりは自覚できてもどうしようもないところだ。


 とは言え。

 たとえどのような大義がそこに存在していたとしても、彼らの行動が社会を混乱させていることに変わりはない。

 誰もが納得するような目的があると言うのなら表舞台に出てきて説明すればいいだけのことだし、その気がないなら捕らえた後でじっくり聞き出せばいいことだ。

 ……どうやって捕らえるかが、目下最大の問題なのだが。


「時間ができたし、今日も図書館に行くか」


 補導員の仕事を終え、一旦寮に戻って一息ついていたが、いくら現状できることはそう多くはないとは言ってもジッとしていると落ち着かない。

 なので俺は一つ息を吐いてから立ち上がり、部屋を出て図書館へと歩き出した。

 既に夕食後の時間帯で空も赤いが、図書館は遅い時間まで利用可能だ。


「そう言えば、セト達って今日からだっけ?」


 その道すがら。

 暮れの日差しに長く伸びた影の中からフェリトが尋ねてくる。

 図書館という単語を聞いて思い出したのだろう。

 丁度昨日までは弟達も、合宿中に自分達で計画を立てていた通り、図書館で色々な祈望之器(ディザイアード)について調べていたからな。


「ああ。セトとトバルは、今日からアマラさんのとこで複製師体験合宿みたいなことをやってるはずだ。で、ダンは訓練施設。ラクラちゃんは学園系列の病院だな」


 何度か図書館で見かけた感じ、集中して資料を読み漁っていたし、それぞれの場所でも新学期が始まるまでの時間を有意義に使うことができそうだ。


「俺も子供達には負けてられないな」


 成長した後進の頑張っている姿に、先達である俺が背中を押される。

 彼らの存在は正に心の清涼剤だ。

 何とも、いい形を作ることができていると思う。

 それだけに。

 人類の仇敵、最凶の人形化魔物(ピグマリオン)【ガラテア】は勿論のこと、それを討ち果たす使命の妨げとなる人間至上主義者達の横槍は、邪魔以外の何ものでもない。

 もし子供達の夢への道行きに理不尽な障害が存在するのであれば、それは大人が取り払わなければならない。

 だから改めて気合いを入れて図書館に入り、棚に並ぶ無数の蔵書と向き合う。


「さて、昨日まではセト達に倣って祈望之器を調べたけど……」

「今一だったね」


 俺が濁した言葉に続けるようにスパッと切り捨てるサユキ。

 まあ、その通りだ。

 探しものを見つけ出す祈望之器。

 そういう類のものがないか調べたのだが、伝承の中には多少あっても実際に発掘されているものは存在しないようだった。

 探しものを見つけ出す祈望之器を見つけ出すために、正にその祈望之器そのものが欲しいぐらいだった。


「まあ、もしホウゲツの管理下にある遺構から発掘されたら、優先的に使用させて貰えるようにトリリス様に頼んでおいたからな。そっちはもういい」


 サユキに応じて言いながら、とある本棚へと向かう。

 そして俺は、一冊の分厚い本を取り出しながら続けた。


「今日調べるのは複合発露の方だ」


 根本的な内容としては同じ。

 探しものを見つけ出す複合発露を持つ少女化魔物を調べるというもの。

 もっとも、こちらについてもトリリス様に確認し、ホウゲツ学園で把握している限りでは現存していないことが分かっているが……。

 まあ、改めて調べておいて損はない。

 彼女達も逐一全ての少女化魔物の複合発露を記憶している訳ではないし、それこそ対人間至上主義組織に留まらず、アロン兄さんや人形化魔物【ガラテア】の居場所をも見つけ出すことができるかもしれないのだから。


「探しものを見つけ出す複合発露と言うと……一般的なのは悪魔系の少女化魔物でしょうか。具体的に言うとバルバトス、プルソン、アンドロマリウス辺りですね」


 トリリス様からも聞いた話を改めて繰り返すイリュファ。


「ただ、あれらも一種の特異思念集積体ですので、同じ魔物由来の存在が自身の他の何体も発生する通常の少女化魔物と比べれば希少なのは間違いありません」


 彼女達は大枠として悪魔に一括りにされているが、特殊な複合発露を持つ者には明確に名前が付随している。

 例えばライムさんのパートナーである二人、精神干渉の複合発露を持つルシネさんは悪魔(シャックス)の少女化魔物だし、転移の複合発露を持つパレットさんは悪魔(サルガタナス)の少女化魔物だ。

 条件はあるものの、対象の過去の情報を読み取るという埒外の複合発露を持つ特別収容施設ハスノハの長、アコさんも悪魔(アモン)の少女化魔物。

 後はヨスキ村の結界を作っている悪魔(オロバス)の少女化魔物などだ。

 ただ、同じ名称でも悪魔のどの側面が現れるかによって複合発露が異なってくるため、必ずしも同じ能力になるとは限らない。なので――。


「それこそ、精々ユニコーンの少女化魔物を見つけ出すのに毛が生えた程度の確率しかないでしょう」


 イリュファの言う通り、それを主軸に置くのはギャンブルが過ぎる。

 とは言え、零ではないのなら、念のために頭に入れておいて損はないだろう。

 …………ふと、一足飛びに【ガラテア】に至る可能性があるのなら、俺が使命を達成できるに足る状態にならない限り、それこそ世界が許容せずに発生しなくなるのではないかという考えが頭を過ぎる。

 だが、まあ、それが行動しない理由にはならない。

 別方向からの思念の蓄積によって発生する可能性だってあるのだから。

 そんなこんなで、トリリス様が例に挙げたのとは別の少女化魔物について調べようと、イリュファ達と手分けして本を開く。


「ん?」


 と、視界の端、図書館の入口辺りに見慣れた人影が映る。


「あ、イサク君!」


 その彼女はほぼ同時にこちらを認め、大きな声を出した。

 直後、司書さんに睨まれて「ひえっ、すみません」と情けない声を出し、それからこそこそと俺の方へと音を立てないように小走りで近寄ってくる。


「ルトアさん、どうしたんですか?」

「はい。その、トリリス様がお呼びです」

「トリリス様が?」


 学園内にいるのだから呼び寄せればいいのに、と一瞬思うが、それはそれで心臓に悪いからこちらの方がいいか。


「用件は何か聞いてますか?」

「はい。何でも、ユニコーンの少女化魔物が出現したとか」

「ええ!?」


 耳元で囁かれた内容に思わず驚愕と共に大声を出してしまい、俺もまた司書さんに睨まれてしまう。慌てて頭を何度も下げておく。

 図書館はお静かに。


「……しかし、何とも。これが救世の転生者のご都合主義か?」


 どうやら救世という使命が果たし易いように、世界がお膳立てをしてくれるというのは本当の本当のことなのかもしれない。

 しかし、余りの都合のよさに逆に不信感を抱きながら、ともかく俺はルトアさんと共に図書館を出てトリリス様の待つ学園長室へと向かったのだった。

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