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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第5章 治癒の少女化魔物と破滅欲求の根源

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242 先延ばし

「一緒に、不老?」

「うん! 僕は人魚の少女化魔物(ロリータ)だし、複合発露(エクスコンプレックス)から考えて真性少女契約(ロリータコントラクト)を結べば相手を不老にできると思うんだ!」


 困惑気味に問いかけた俺に、元気のいい幼子のように答える少女。

 若干、狂気混じりに感じてしまうのは、感情の純度が高過ぎるからだろうか。

 幼い頃によく見られる、体ごとぶつかっていくかのような気配が滲んでいる。


 勿論、体格的には第二次性徴直後の少女の平均という感じではある。

 決して幼女ではない。

 胸もかなり大人だ。

 ……あの秘密施設では抉り取られていたようで分からなかったし、特別収容施設で傷を治された時は彼女が受けた仕打ちに憤っていたから言及しなかったが。


 ともあれ、そんな外見とは裏腹に。

 彼女は、少女化魔物として生きた時間と精神年齢がかなり近しいらしい。

 精神が大分熟成している風のルシネさんとは逆だ。

 だからか、この短期間の応対で何とも子供っぽい印象がついてしまっている。

 そのちぐはぐさのせいか戸惑いが強い。


「ええと、アコさん。彼女の言っていることって……」

「うん。恐らく間違いないだろうね。過去に似た事例はあったし」


 俺が途中で曖昧に切ってしまった疑問を半ば引き継ぐようにしながら、隣にいるアコさんが肯定の意を示す。

 五百年もの長い間、歴史を見詰めてきた彼女がそう言うのであれば、目の前の少女が適当なことを言っている訳ではなさそうだ。


「彼女……ターナの複合発露〈不老(アンフェイド)長久(フレッシュ)〉は、まあ、知っての通り常時発動型で己の肉を口にした者の老いを抑制し、病を治すもの。人魚の少女化魔物の定番だ。まあ、だからこそ、人間至上主義者共に囚われていた訳だけどね」


 そして、それ故に。

 その(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)もまた定番のものになる可能性が高い、ということか。

 あるいは、本人が全身全霊をかけて別の方向性の複合発露を望むなら、変化が起きることもあり得るかもしれないが……。

 彼女の様子を見る限りでは、そういう気持ちはなさそうだし、今の状態なら真性少女契約を結んでも例外にはなることはないだろう。


「その真・複合発露〈不老長久(アンフェイド)鴛鴦(インセパレータブル)〉は契約相手を不老にし、かつ病にかからないようにするものだ。人魚を題材にした物語には必ず出てくると言っていいね」

「……成程。それで、その過去の事例の人は今も生きているんですか?」

「いや、不老なだけで不死ではないからね。周りの人間に妬まれて殺されたよ」


 それは何とも……。

 アコさんは軽く言うが、微妙な気持ちになる。

 まあ、長く生きれば生きる程、そういった結末に終わる可能性は高くなるか。

 寿命と病で亡くなることがないならば、後はもう事故、他殺、自殺ぐらいだし。

 そんなことを考えつつ、ターナという名らしい人魚の少女化魔物に視線を戻す。

 彼女は期待に溢れたキラキラ、いや、ギラギラした目をこちらに向けていた。

 命属性を示す長い灰色の髪と揃いの色の瞳が少し怖い。


「……いくらお礼をしたいって言っても、会って間もない人間相手に軽々と真性少女契約なんて結ぶものじゃないぞ。よく考えないと」


 そんなターナの姿に一層困惑しながら、一先ず穏やかに諭すように言う。

 何にせよ、人生の重大な選択だ。

 短絡的に決断して後悔して欲しくない。

 相手を不老にするという性質上、他の少女化魔物達のように自らの不老性を捨て去ってまで添い遂げる、という覚悟を抱く必要はないのかもしれないけれども。

 それでも一生に一度のことのはずだ。


「君じゃないと嫌だ!! 僕には君しかいない!!」


 それでも聞く耳持たずという感じに即答し、身を乗り出してくるターナ。

 勢いをつけたその動きにより、少女化魔物としては大きな胸が揺れる。

 幼い無防備さと無鉄砲さには、どうにも反応が困る。


「でも、気持ちは分かるよ。サユキもイサク以外なんて死んでもゴメンだもん」


 と、影の中から物凄く共感しているように告げるサユキ。

 彼女の率直な思いは素直に嬉しいけれども、今そうやって同意されるとターナとの話が微妙に拗れかねないので少し静かにしていて欲しいところだ。

 サユキに関しては、少なくとも幼少期に季節一つ分触れ合った結果でもあるし。


 まあ、何にせよ、まずターナを落ち着かせなければ冷静に話すこともできない。

 優先すべきはそこだ。

 しかし、どうやって宥めればいいものか。

 そう頭を捻りながら、アコさんに助けを求めるように視線を向ける。


「人魚の少女化魔物というのは惚れっぽい性質もあるんだ。挙句、身を滅ぼしても構わないと言う程に、その気持ちに殉じてしまう」


 対して彼女は、そう現状の説明をするように応じる。

 前世の物語における有名な人魚が泡になってしまったように、ということか。

 日本の人魚伝承と童話が入り混じっているな。

 間違いなく、過去の救世の転生者かショウジ・ヨスキのせいだろう。

 しかし、そうなると……。


「だからイサクが断ると暴走しかねない。ちなみに、その暴走(パラ)複合発露(エクスコンプレックス)は性質が反転して攻撃的になり、己ごと付近一帯を分解して泡にしてしまうそうだ」


 つまり、未だ昨日と同じ封印の注連縄が施されている待合室の中にいるのは、万が一暴走してしまった場合に備えて、ということか。

 と言うか、そうなると実質的に選択肢は一つしかないのではなかろうか。


「私達としては、少女化魔物をそんな結末に追いやりたくはないんだ」


 アコさんは申し訳なさそうに言うと、一歩その部屋の扉の前から遠退いた。

 下手な返答は暴走を誘発し、封印の注連縄を以ってガチガチに封印される運びとなってしまうことだろう。

 その果てにあるのは、精神に引きずられた死に他ならない。


「こういうことは当人同士の気持ちが大事、というのは当然なのだけどね。少女化魔物は人間よりも最初に抱いた気持ちが本質に食い込み易い。イサクがターナを助け出した時点で、彼女の未来は君次第になってしまったんだよ」


 言いたいことは分からなくもないが、さすがに急過ぎる。

 俺にも気持ちを整理する時間が必要だし、いくら少女化魔物であっても、時間と共に考えが変わること自体あり得ないという訳ではないだろう。

 一先ずこの場は、彼女が暴走しないように配慮しつつ、結論を何とか先延ばしにするのが互いにとって最良かもしれない。

 勿論、人外ロリに好意を向けられて嬉しくない訳ではないが、そこにつけ込むような真似をしないのが正しい人外ロリコンの姿のはずだ。


「…………とりあえず、いずれターナの言う通り真性少女契約を結ぶという前提で話を聞いて欲しい」


 暴走を回避するために、まずそこはハッキリと言い聞かせる。

 ターナも一応は己の意に沿う内容のため、期待の表情を色濃くしながらも一先ずは素直に耳を傾けているようだ。


「見れば分かる通り、俺はまだ第二次性徴も迎えていない。子供の体だ。この状態で不老になったら、もうずっとこのままになってしまう。それは困る。本当に」


 か細いながら心変わりも考慮に入れ、もっと互いを知り合う猶予を作るための理屈ではあるが、これは本音でもある。

 この小さな体では形としては、おねショタもいいところだ。

 発育のいいターナと並べば尚のこと。

 あくまでも俺は人外ロリコンなので、こればかりは勘弁願いたい。

 その属性の人には本当に申し訳ないが。


「俺はちゃんと成長して大人の体になりたい。だから、それまでは待って欲しい」


 真っ直ぐに彼女の目を見て真剣に告げる。

 猶予さえあれば、こちらの戸惑いもなくなっていくはずだ。

 彼女も成長して、冷静に自分の感情を見極めることができるようになるだろう。

 結論はその先でいい。


「……分かった! 僕、待つよ!」


 対して嬉しそうな笑顔と共に頷くターナ。

 彼女にとっては確約されたも同然、という感じなのかもしれない。

 少なくとも、今現在の自分の感情は間違いのないものだと信じている訳だ。

 時と共に更に確固たるものとなるのか、変化していくのかは分からないが、どちらであっても俺は祝福しようと思う。


「話は纏まったようだね。けど、ターナ。まだ生まれて間もない君は色々と知らなければならないことが多い。イサクに相応しい少女化魔物となるため、まずはホウゲツ学園で教育を受けるといい」


 後ろから告げたアコさんの言葉に、俺の判断を仰ぐようにこちらを見るターナ。

 それに頷きを返してやると、彼女もまた首を縦に振り――。


「うん! 僕、頑張る!」


 そう言うとグッと気合を入れるように、大きい胸の両脇の辺りで左右それぞれ拳を握ってアピールする素振りを見せた。

 その様子にアコさんは暴走の危険は一先ずなくなったと判断したのか、少し離れた位置にいたエイルさんに部屋の扉を開けさせる。

 それと共に中から出てきたターナは即座に俺に抱き着いてきて――。


「でも、時々は会いに来てね。イサク」


 一転して、若干不安そうな表情を見せた。

 その姿に、大きな胸に圧迫されながら少し手を伸ばして彼女の頭を撫でる。

 それで安心したのか、ターナは俺から体を離して照れたような笑顔になった。


「じゃあ、ターナ。行こうか」

「うん」

「こういう時は、うん、じゃなくて、はい、と言った方がいい。ある程度の礼儀は学んでおかないとイサクの隣に立った時、恥をかくのは自分だけじゃないからね」

「はい!」


 そうして、元気よく返事をした彼女はアコさんに手を引かれ、時々俺を振り返って手を大きく振りながら去っていった。

 新たな仲間……候補が一人増えた事実を前に、あるいは彼女という存在もまた救世の転生者の使命において都合のいい一要素なのだろうか、と考えつつ、俺はそんな彼女に手を振り返しながら見送ったのだった。

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