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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第4章 前兆と空の旅路

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202 兄の捜索と【ガラテア】の状況

「用がなければ、来てはならぬのか?」

「そ、そんなことないよ!」


 子供っぽく唇を尖らせて不機嫌そうな母さんに、ちょっと慌てて否定する。

 すると、母さんはすぐに相好を崩して「冗談じゃ」と言いながら頭を撫でてきた。

 勿論、九分九厘そうだろうと分かってはいたけれども少し安心する。


「まあ、実際のところイサクの顔を見に来ただけなのじゃがな」

「ああ。少し時間ができて……しまったからな」


 苦笑気味に来訪目的を告げた母さんに続き、若干顔を曇らせながら父さんが補足する。

 それに合わせ、母さんもまた一瞬笑顔を消して表情を暗くした。

 二人の様子を見るに、時間に猶予ができたことは余り好ましくない状態のようだ。

 その理由はおおよそ推測することができる。


 未だ、最凶の人形化魔物(ピグマリオン)【ガラテア】にさらわれたままのアロン兄さん。

 彼は破滅欲求の権化たるかの存在の力によって己の意思を奪われた上、操られるがまま十年以上もの間、世界各地で自身と同じ境遇の者を数多く生み出し続けている。

 その過程で兄さんの目撃情報が出てくる度に、父さんは現地に自ら赴いて情報収集に努めたりしていた訳だが……。

 俺とセトがヨスキ村を離れて学園都市トコハで生活するようになってからは、母さんと共に一層力を入れて兄さんの捜索を行っていた。

 特に前回、ウラバ大事変の大きな流れの中で会った時以降、目撃情報の頻度が急に増えたらしく、一緒に食事をする約束を果たせない程に忙しく世界を飛び回っていたはずだ。

 そんな二人に時間の猶予ができたということは――。


「もしかして、兄さんの目撃情報が途絶えたの?」

「……まあ、イサクならば察してしまうじゃろうとは思っていたが、その通りじゃ。新しい情報が出てこないまま、かれこれ十日も経ってしまった。いや、無論、それ以上の間隔が空いていたこともあったにはあったのじゃが――」

「短期的に急激な増加があった後で、パタリとなくなってしまったからな。何か、新しい段階に移行してしまったんじゃないかと懸念しているところだ」


 嘆息気味に答えた母さんの言葉を引き継いで続けながら、父さんが渋い顔をする。

 新しい段階、か。

 原因不明の急激な変化が生じると、人間はそこに何らかの納得できる意味を勝手に見出そうとするものだけれども……。

 まるで呼応するかのように、救世の転生者でなければ対処が難しい人形化魔物が出現し始めてもいるし、もしかしたら父さんの懸念は当たっているのかもしれない。

 何にせよ、最悪のケースは常に頭の片隅に置いておくべきだろう。


「あ、あの。旦那様、御義母様、御義父様」


 そこへ、レンリがおずおずと手を上げながら口を開く。

 事情を知らないのだから当然だが、話についていくことができていないようだ。


「旦那様の御義兄様が、どうかなさったのですか?」

「ああ、実は――」


 大分プライベートな問題だが、特に気にすることなく既に彼女の前で話し始めていたことだし、特別隠し立てしなければならないような後ろ暗い部分がある訳でもない。

【ガラテア】に操られている者達の一般的な扱いは、国によって微妙に異なるものの、少なくとも罪のない被害者であるという点で一致していることは間違いないし。

 異なる部分と言えば、問答無用で打ち倒すか、なるべく傷を負わせずに捕縛しようとするかといった戦いの場における方針の違いぐらいのものだ。

 ともかく、レンリが諸々の事情を知ったところで俺達に対して何らかの悪い感情を持つようなことは決してない。

 父さんもそう判断してか、代表して経緯を一通り説明する。


「――そして、さっきの話に繋がる訳だ」

「成程。そういうことでしたか」


 それを静かに聞いていたレンリは一つ頷き、理解と納得の意を示した。

 瞳の奥に、彼女自身の仇敵でもある【ガラテア】への憤怒をチラつかせながら。


「アクエリアル帝国でも拉致被害が出ていたことは耳にしていました。しかし、神出鬼没であるために後手に回らざるを得ず、アレの凶行を防ぐことはできないままのようです」


 続けて、レンリは険しい表情と硬い口調と共にそう告げる。

 父さんと母さんの顔に驚きの色はない。

 当然ながら、アクエリアル帝国における【ガラテア】の動向も調べていたのだろう。

 まあ、そうでなくとも予想に容易い話ではあるけれども。


「その【ガラテア】の活動が目に見えて沈静化したとなると……あるいは、手駒の数が十分に揃ってしまった、ということなのかもしれませんね」

「うむ。妾達もそう考えているのじゃ」


 レンリが出した結論に、母さんが同意を示す。

【ガラテア】の滅尽(ネガ)複合発露(エクスコンプレックス)と思われる対象を操る力。

 それによって操作可能な数の限界に至った、と言い換えることもできるが……。


「つまり、いつ【ガラテア】が本格的に行動を起こしても不思議じゃないってこと?」

「いや、百年前の事例から類推すると、次は質を高める方向にシフトする可能性が高い」

「……質を高めるって、随分と具体的な予測だね」

「救出された被害者達からの証言があるからな」


 前回、あるいはそれよりも前の【ガラテア】に拉致され、操られながらも過去の救世の転生者に助け出された人々からの情報という訳か。成程。

 しかし、それが正しいとすると、操り人形にも一応は練度のようなものがあるようだ。

 ならば、万全を期するために質の向上を目指すのは至極当然の流れだろう。

 人形化魔物から見た敵、人類の方が数として圧倒的に多いのだから尚更のこと。

 奴らの目的は、人間社会に損害を与えればいいという訳ではなく、あくまでも人類そのものの殲滅を目的としている訳だから。

 似たような状況、同じ勝利条件で指揮しなくてはならないのなら俺だってそうする。


 いずれにしても、俺が救世の転生者として【ガラテア】と対峙することになるのは、もう少し先のことなのかもしれない。

 勿論、潜伏先が判明したりすれば、その限りではないだろうけれども。


「ともかく、これからの【ガラテア】の活動は水面下でのものが主となる恐れがある。情報収集は継続するのは当然じゃが、奴が戦いを仕かけてくるまで事態が膠着しかねん」


 母さんの予測に内心同意する。

 これが単なる一過性のものではないのが大前提ではあるが、俺達からのアクションで状況が大きく変わるということは正直考えにくい。

 他の皆もそう思っているようで微妙な表情を浮かべ、場に沈黙が降りる。


「っと、すまぬ。余計なことを話してしまったな。妾達は、お前達にそんな顔をさせるために来た訳ではないのじゃ」


 そんな空気を嫌うように、大分わざとらしく明るい声を出す母さん。

 まあ、難しい顔をしていれば解決する話でもない。

 一先ずは棚上げにしておくとしよう。


「今は【ガラテア】のことよりも、前に会ってから約一ヶ月半、イサクがどう過ごしてきたか教えて欲しい。多分、色々と……あっただろうからな」


 あからさまにレンリへと視線をやりながら言う父さんに、思わず苦笑する。

 確かに色々とあった。この一ヶ月半に限っても。

 ウラバ大事変の解決。レンリとの出会い。彼女との一騎討ち。

 ホウシュン祭の襲撃。人間至上主義組織スプレマシー代表テネシスとの戦い。

 人形化魔物との戦い。

 しかし……頭の中で主だったものを並べると、大概救世の転生者として関わっているものばかりで、父さんや母さんに話せるものがほとんどないな。

 こんなにもイベントが短期間に目白押しだったにもかかわらず。

 ちょっと困る。


「ええっとね……」


 とは言え、正に己が子に向ける慈しむような視線の前では拒絶できない。

 だから俺は両親の望みに従い、何とか当たり障りがなくも興味が引かれそうなものを記憶からサルベージしながら、この一ヶ月余りの出来事を話し始めた。

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