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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第4章 前兆と空の旅路

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198 一休み、学園の様子と弟の夢

「あら、イサク君。今日はルトアちゃんと一緒じゃないのね」

「ええ。仕事の関係でタイミングが合わなかったもので」


 居酒屋ミツゲツに入り、奥の座敷へと案内されている途中。

 カウンター席の前を通るところで厨房から出てきた店主のリヴェスさんに話しかけられた俺は、その場で一旦立ち止まって笑顔と共にそう返した。


「そっちの子達は?」

「俺の弟達と、そのクラスメイトです」


 肩越しに俺の後ろに視線をやりながら尋ねてきた彼女に、軽く振り返りながら答える。

 今日は店を贔屓にするという約束を果たす一環で、セト達と一緒に店を訪れたのだ。

 それが直接の理由ではないけれども、ルトアさんはいない。

 彼女は緊急の案件があった場合に備え、ホウゲツ学園の敷地内に留まってくれている。

 行き先は伝えてあるので、万が一の時はトリリス様が彼女を複合発露(エクスコンプレックス)で呼び寄せ、即座に(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)裂雲雷鳥(イヴェイドソア)不羈(サンダーボルト)〉で知らせに来てくれるはずだ。

 救世の転生者でなければ対処できない人形化魔物(ピグマリオン)が出現し始めている今、いつ対応の要請が来るか分からないため、俺もなるべく学園を離れない方がいいのだろうが……。


「学園に引きこもって単調な生活を送るのは、精神衛生上よろしくないゾ」


 と、トリリス様に(ディームさんにも)何故だか妙に強く外出するように勧められたため、今日はこうして弟達と外食に来ている訳だ。

 まだ幼い彼らを色々な場所に連れていくのは兄として、先達としての一つの役目でもあるし、俺としても時間が許す限り皆と出かける機会を持ちたいので基本的に否やはない。

 ルトアさんに負担がかかることだけは申し訳なく思うけども、彼女は「学園内にいれば別に何をしていても自由ですし、全然問題ありません!」と快く受け入れてくれている。

 その厚意に甘えさせて貰っている形なので、彼女への感謝の気持ちは忘れずにいたい。


 ちなみにルトアさんは、用事がなければ大体、寮で本を読んだり敷地内の運動場で友人の少女化魔物(ロリータ)達とスポーツをして体を動かしたりしているとのことだ。

 いずれにしても、救世の使命を果たすまでルトアさんとは一緒に出かけにくくなりそうなので、全てが終わったら旅行に誘ったりして色々サポートしてくれる彼女を労いたい。

 温泉とかいいかもしれない。


「……クラスメイトってことは、弟さん達はホウゲツ学園に通ってるの?」

「ええ。まだ一年生ですが」

「そうなの。なら、量を少し多めにしとくわね。たくさん食べていって」

「すみません。ありがとうございます」

「いいのよ。代わりに……おいしかったら学園のお友達にも宣伝してね」


 印象のいい柔らかな笑顔で弟達一人一人と視線を合わせるリヴェスさん。

 対してセト達三人は若干戸惑いながら頷き、ラクラちゃんはサービスを受けたからには報いなければ、という風に真剣な表情でコクコクと首を縦に振っていた。

 俺の脇にいるレンリは余所行きの微笑みを浮かべながら、上辺だけ彼らに倣っている。

 話はあくまでも味を確認してからだ、という感じか。目に表れてしまっているが。


「ふふ。じゃあ、ごゆっくり」


 そんなレンリにも微笑ましげな目を向けながら最後にそう締め括って厨房に戻るリヴェスさんに頭を下げ、それから改めて店員の先導に従って座敷席に向かう。

 そして、長めのテーブルの周りに三人三人で並べるように置かれている計六枚の座布団に俺、レンリ、ラクラちゃん。反対側にダン、トバル、セトの順で座った。


「ここは御飯物とか麺類とかがおいしくて、しかも結構安い。俺のお薦めはカレーライスとカレーうどん、かな。覚えておいて損はない店だと思うぞ」

「ええと、居酒屋、なんですよね?」

「まあ、そうだけど、別にお酒目的じゃなくても割と気軽に入れる店だからさ」


 ラクラちゃんの疑問に苦笑気味に答える。

 元の世界にもあった、客層拡大を狙ったファミリー居酒屋的な立ち位置と言うべきか。

 少なくとも、前に彼らを連れていった鰻屋とかに比べると大分庶民的なのは確かだ。

 もし弟達が社会に出て学園都市トコハで活動することがあれば、重宝する店になること間違いない。比較的安くて、何より大事なことだけど味もいいからな。


 とは言え、おいしさについては実際に食べて実感しなければ納得できないだろう。

 まずメニューを配って皆に注文を決めて貰い、店員を呼んでそのまま伝える。

 弟達とラクラちゃんは、お勧めに従って特選カレーライスか特選カレーうどんを。

 レンリは俺と同じものを。

 その俺は今日のところは余りカレーに拘らず、ライスと後はサイドメニュー中心で頼んでみた。蜜を下拵えに使った唐揚げ、蜜ドレッシングのサラダ、蜜味噌汁などだ。

 影の中からイリュファとフェリトのジトッとした視線を感じるが、他意はない。

 ヘイズルーンの少女化魔物のどこから蜜が出ていようと、判断材料の第一は味だ。

 これまで食したもので、蜜の味に全幅の信頼を置いているから蜜三昧を敢行したのだ。

 しかし、影の中から感じる気配に対して突然そんな風に言い訳を始めても、セト達は何が何やら分かるまい。なので――。


「最近、学園はどうだ? 何か変わったこととかあったか?」


 素知らぬ顔をしながらセト達に近況を尋ねる。

 勿論、単に誤魔化そうとしている訳じゃない。

 そもそもにして、彼らと外食する俺自身の目的は主にこれなのだから。

 保護者としての責務でもあり、兄としての楽しみでもある。


「うーん」


 そんな俺の問いに応え、セトが若干悩む素振りを見せながら続ける。


「授業については特に目立ったことはないけど、クラスメイトの間では最近、人形化魔物と救世の転生者の話が多いかな。新聞によく載ってるみたいだし」


 と、いきなり俺が深く関わっている話題が出てきて一瞬動揺してしまうが、何とか表には出さずに「へえ」と相槌を打つに留める。


「あんちゃんは何か知らない? 新聞に載ってない話とか」

「と言うか、新聞の記事って本当のことなの?」


 ダンとトバルに視線を向けられ、腕を組んで少し考えてから口を開く。

 まあ、救世の転生者が誰かという部分以外は、余り情報統制されている訳でもない。

 既に聞屋に流れている分は別段話しても構わないということだ。


「そうだな。トリリス様は新聞の情報は正しいって言ってたぞ」

「ってことは、あの【イヴィルソード】を持った【リビングアーマー】が毎夜毎夜人間を真っ二つにして殺してたって話も本当なんだ……」


 その事実に身震いして呟くダン。

 彼と同じ感情を抱いたようにセトとトバル、ラクラちゃんもまた口を噤む。

 そうした反応は、この場に限らず真実を伝える上で弊害にもなり得るものだ。

 下手をすると、その思念の蓄積を以って人形化魔物が強化されかねないのだから。

 だが――。


「心配する必要はありません。それはつまり、救世の転生者様が人形化魔物共を容易く討伐したこともまた事実ということです。もし再び現れたとしても倒して下さるはずです」

「あ、そ、そうだよね」


 淡々とレンリが告げた言葉に、表情を少し明るくするセト達四人。

 その事実が人形化魔物全体への恐怖をある程度は抑えてくれるし、逆に、救世の転生者が有する人形化魔物特効を増幅するような効果を生むことにもなるだろう。

 真実を明らかにすることのメリットは、十分にある訳だ。


 ……ただ、レンリ。訳知り顔で俺をチラチラ見るのは、ちょっとやめて欲しい。


「ま、まあ、そういうことだ。それに、もしセト達が人形化魔物に襲われたりしたら、俺が絶対に助けてやるから。何も心配するな」


 気を取り直して俺が胸を叩いて言うと、彼らは頷いて信頼の眼差しを向けてくれる。

 ホウシュン祭の後夜祭で人間至上主義組織スプレマシー代表テネシスと戦った時の映像記録を見たこともあって、改めて頼りに思ってくれているのだろう。

 そんな中、少ししてセトが何ごとか考えるように視線を斜め上に向ける。


「けど、そっか。ヴィマナ遺構に人形化魔物が出たのも本当なんだ」

「ん? そうだな。ヤタ遺構とトクサ遺構も。そのせいで一般人の立ち入りが制限されるようになったし、ヴィマナ遺構では探索調査も一時中止になったって聞いてる」


 言いながら、セトが最初にヴィマナ遺構を挙げたことに内心で首を傾げる。

【ミミック】の話ならばヴィマナ遺構は一番被害が少ない場所で、余り目立っていない。

 加えて、他二つの遺跡とは違って外国の遺跡なのだが……。


「ヴィマナ遺構って、祈望之器(ディザイアード)ヴィマナが発見された有名な遺跡だよね?」

「うん。だから、いつか行ってみたくて」


 まあ、ホウゲツ国民からすると割と謎の国であるランブリクにありつつも、発掘されたそれのおかげでヴィマナ遺構の名前自体は結構知られているのは事実だけれども。

 何にせよ、人形化魔物の話から直接飛ぶには関連性が若干弱い。

 そんな風に思っていると――。


「あ、そっか。セトは将来、冒険家になりたいって言ってたっけ」

「え?」


 テーブルを挟んで目の前にいるダンが思い出したようにポンと手を叩いて言い、その内容に思わず驚きの声を上げる。


「ダン!」

「あ、ご、ごめんごめん」


 少し強めに窘めるように睨んだセトに、ダンが慌てて手刀を切って謝る。

 彼の様子とセトの不機嫌そうな顔を見るに、どうやら本当のことらしい。


「……セトは、冒険家になりたいのか?」

「う、うん。そうなんだ。ごめんね、兄さん。黙ってて」


 少し恥ずかしそうにセトは視線を下げる。

 本当に幼い頃とは違ってハッキリと夢を語るのが恥ずかしくなってくるのは、成長でもあるだろう。後は自分に自信を持って強い意思を持てるかが問題だが……。

 それはそれとしても。

 今現在の弟の将来の夢を初めて知ったことに、少なからず狼狽してしまう。

 いや、身内だからと何もかも把握しているなんて普通はあり得ないし、むしろ全て把握している方が不健全なのだろうけれども。


「ま、まあ、自分の夢だからな。本当に本気なら全然構わないし、兄ちゃんは全力で応援するけど……でも、どうして冒険家なんだ?」


 ともあれ、把握ではなく理解のために。

 俺は兄として外面を取り繕いながら、セトに話の続きを促した。

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