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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第3章 絡み合う道

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AR17 一戦交えて

「君にとってテネシスを取り逃がしたことは、恐らく転生してから最も大きな失敗だったことだろう。それが故に、その失敗と共に彼という存在を心に刻み、彼に対して強い脅威を感じたのも無理もない話だ。けれど、君と相対した彼もまた――」


***


「化物めっ!!」


 救世の転生者イサク・ファイム・ヨスキとの戦いの場から転移によって執務室へと退避した俺は、机に手を突いて体を支えながら思わず悪態をついた。

 そうしながら改めて救世の転生者との戦いを頭の中で反芻する。

 表面的には同等、いや、ある程度優位に立ち回ることができていたように見えたかもしれない。まだインシェ達は戻ってきていないが、目的も果たすことはできたはずだ。

 総合的に見て、こちらの勝利と言っても差し支えない。しかし――。


「あんな状態で、あそこまで!」


 常に余裕を見せるような演技を心がけていたが、その実、俺は終始ギリギリだった。

 神経が張り詰め、正直いつボロを出してしまうか分かったものではなかった。


「だから、イサク様を侮ってはいけないと言ったではありませんか」


 心の内に渦巻く畏怖を吐き出していると、トラレの暴走(パラ)複合発露(エクスコンプレックス)千里縮地(スポットコネクト)一弾指(トランシエント)〉で他の少女化魔物(ロリータ)達と共に転移してきたインシェが嘆息気味に告げる。

 分かってはいた。無論、救世の転生者を侮ったつもりなど毛頭ない。

 だが、確実に歴史に名を刻むことになるであろう特別な存在の底力は、この世界に掃いて捨てる程いる凡人たる俺の予想を遥かに超えたものだった。


「あれで本当に弱体化していたのか?」

「はい。間違いなく。セレスの暴走・複合発露〈不協調律(ジャマークライ)凶歌(ヴァイオレント)〉よりもイサク様が使用する(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)の方が遥かに格上だったせいで、位階を低下させるまでの効果を生むことはできませんでしたが」


 位階の低下を防ぐことに関しては、救世の転生者ならずとも十分あり得る話だ。

 しかし、かの複合発露(エクスコンプレックス)の影響下にあって尚、俺がゴルゴーンの少女化魔物たるファルンの暴走・複合発露〈身命(バイオ)石変(ペトリファイアー)無尽(フィクセイド)〉を用いて生成した石の巨人に拮抗することができるのは尋常ではないとしか言いようがない。

 恐らく、勇者と名高いイサクの父ジャスターでもこれに関しては不可能だろう。

 有利不利とかではなく、根本的なところで弱体化させられるのだから。

 しかし、イサクはその上で……。


「更に言えば、街に被害を出さないように攻撃手段を限定していましたね。テネシス様を殺さないように細心の注意を払っていたようでもありました」

「ああ。特に最後の一撃。あれを振り抜かれていたら、間違いなく俺は粉微塵になっていただろうしな。そうでなくとも、生身を捕捉された時点で一対一では俺の負けだが」


 あれだけ優位な状況にありながら、と思うと溜息の一つもつきたくなる。

 インシェが口にした通り、〈不協調律・凶歌〉以外にもイサクには枷があった。

 彼は、あの系統の複合発露ならば誰もが当たり前に使用するポピュラーな技である氷の塊の投射を、石の巨人に対しては使用しなかった。

 周囲を顧みぬ攻撃では学園都市トコハに重大な被害が出かねないし、それを気にしての加減した攻撃では効果が乏しいと考えたからだろう。

 対照的に俺が石塊を撃たなかった、いや、撃つことができなかったのは、石の巨人と石化までで制御が精一杯だったからだ。

 恐らく、周囲に建物も何もないような場所での戦いだったら、目的を果たすどころか一瞬の内にやられていただろう。

 ……勿論、確実に枷として機能すると告げたインシェを信じたからこそ、先んじてイアスを捕らえられていて尚、救世の転生者達の前に姿を現した訳だが。


「…………それで、イアスは?」


 一先ず成果を確認して、気持ちを落ち着かせようとインシェに問いかける。


「こちらに」


 対して彼女がそう応じながら少し脇にずれると、陰に隠れていた石像が目に映った。

 それを掴んでいたはずの氷の巨人の左手は、彼女の真・複合発露〈清風(フェイスイン)共生(ゼピュロス)巡界(サーキュレイト)〉を以って削り落としたらしい。

 イアスは暴走・複合発露〈鋳土写(アンブライドル)身・溢流(プロリフェレイター)〉の反動で気絶した状態のまま石化されており、その姿は酷く見苦しい。思わず嘆息する。


「馬鹿な奴だ。まあ、ホウゲツ学園そのものと関係者、ホウシュン祭の参加者に絞って襲撃したことだけは、この前の奴らよりは大分マシな判断だが」


 こちらにも枷が全くないという訳ではない。

 悪党だからと言って、どんな無体な真似をしてもいいとはならない。

 勿論、救世の転生者と比べれば甚だ小さいものに過ぎないし、急進派の残党の中にはそれこそどんな手段を取ろうが構わないという考えの者もいるが。

 ウラバ大事変などは正にそうした者達の行動に端を発している。

 穏健派の筆頭として扱われている身としては、大多数の一般市民に被害が及ぶ方法は差し控えて欲しいのが正直なところだ。

 当たり前だが、このような組織に属しておいて善だの悪だの言うつもりはない。

 単純に、愚かな急進派のせいで組織の悪評が高まれば、俺が不利益を被るからだ。


「マシはマシですが、五十歩百歩ですけどね」

「まあ、な」


 冷めた目で石像に視線をやるインシェに同意を示す。

 一般人に犠牲者が出て憎悪を向けられるよりはまだいいが……。

 成功の目など欠片もない手段を実行したところで反発を招く以外の結果は生まれないし、俺の方でも想定より早く救世の転生者と接触せざるを得ない状況に陥っただけ。

 本当に、迷惑以外の何ものでもない。

 だが、そうしたデメリットは最初から分かっていたことだ。

 それを理解して尚、この組織を利用することに決めたのは自分自身なのだから、この状況も、組織に付随した俺に対する悪評も甘んじて受け入れなければならない。


「しかし、救世の転生者があれ程となると、俺自身の強化が急務だ。当然、アレの出現には常に備えておかなければならないが……何を置いても、十全な状態の救世の転生者にも対抗できるだけの力を得なければならない」

「イサク様に匹敵する力……となると、特異思念集積体を探し出さねばなりませんね」

「ああ。インシェはしばらくそちらに専念してくれ」

「仰せのままに」


 俺の指示に、そう応じながら恭しく礼をしたインシェに頷く。

 事態が動き出すよりも早く見つかって欲しいものだ。

 そう祈るように思いながら。

 俺は、たとえうまくことが運んだとしても尚、容易く予測することができる困難極まりない未来を頭に思い描き――。


「……たとえ救世の転生者がどれ程強大であったとしても、それすらも利用して必ず本懐を遂げて見せる」


 使命の重さに決して圧し潰されぬように己にそう言い聞かせ、奥歯を噛み締めた。


***


「彼もまた救世の転生者の実力に驚愕し、だからこそ、己の目的のために君に食らいつこうとこれまで以上に必死にもがいていくことになる。それがどういった結果を生んだかは、何度となく彼と相見えた今の君の方が理解しているだろう。ただ覗き見ているだけの私よりも、ね」

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