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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
幕間 2→3

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AR14 誰が貴方を救うのか

「レンリ・ソニア・アクエリアル。彼女という存在は、私達からすると敵以外の何者でもなかった。為政者の側から見れば間違いなく、救世という何を置いても果たさねばならない使命を妨げんとする悪に他ならないからね。けれど――」


***


「ラハ。ホウゲツの新聞を読みましたか?」

「ええ」


 私の問いかけに対し、アクエリアル帝国の民族衣装的な意匠が施されたワンピースドレスを着た背の高い少女が、簡潔に答えながら頷く。

 その動きに合わせて動く膝裏までと非常に長い髪や鋭さを湛えた瞳は、大海原を思わせるような美しく深い青。即ち、彼女が少女化魔物(ロリータ)であることを示している。

 名前はラハ・ロリータ・アクエリアル。

 私と真性少女契約(ロリータコントラクト)を結んでいる、言わば共犯者だ。


「ようやくです。ようやく、この時が訪れました。百年前、御祖母様が果たせなかった願いを、この私の手で果たす時が来たのです」

「まあ、ガラテア以外の人形化魔物(ピグマリオン)も出現し始めていますし、既に救世の転生者がどこかに存在していることは容易に予想できたことですが」


 感慨深く告げた私に、経験則を持ち出して冷や水を浴びせてくるラハ。

 人形化魔物が出現し始めるということは、破滅欲求に連なる負の思念の蓄積が進んでいるということに他ならない。

 その段階に至れば、救世の転生者様は人々の無意識の願いによって呼び出される。

 百年周期で既に数回続いた事実だ。

 人の思念が世界に影響を及ぼすこの世界。これに関しては、偶然はあり得ない。

 とは言え――。


「…………ラハはもう少し雰囲気というものを大事にして下さい」


 私はそんな彼女を睨みながら、不満を声色に滲ませた。

 それぐらい重々承知している。

 その上で気持ちを高めて自分を鼓舞しようとしていたのだ。

 私達の歩む道は、この世界のほとんどの人に望まれないもの。

 この茨の道を弛まず進み続けることができるのか、不安になることもある。

 状況に浸るぐらい少しは許して欲しい。


「残念ながら、ワタクシはレンリの御祖母様を存じ上げませんので。それに、雰囲気や気分だけで望みを果たせるのなら、貴方の御祖母様の代で全て終わっているでしょう」

「う……それは、そうですが」

「ここからが本番なのです。今更心を揺るがせず、合理的に行動なさい」


 厳しく正論を告げるラハに耳が痛くなりながらも、内心で微かに苦笑する。

 そんなことを言っている彼女だが、私と行動を共にしている時点で合理的ではない。

 それを指摘すると、不機嫌になって口を利いてくれなくなるので声には出さないが。

 冷静な大人振っているが、意外と子供っぽい子なのだ。実は私より大分年下だし。


「聞いていますか? レンリ」

「勿論、聞いていますとも」


 心を読んだように目尻を上げて問うラハに、少し慌てて答える。


「心はともかく、少なくとも私の考えは決して揺るぎません。御祖母様と、私の魂に誓って救世の転生者様による救世は間違っています。絶対に、間違っているのです」


 私達の目的は、既存の方法とは異なる救世の形を模索し、成し遂げること。

 そのためには、当然ながら現行の形での救世は達成も進行もさせてはならない。

 故に、救世の転生者様の妨害も私達は視野に入れている。

 だが、やり方を誤れば、人形化魔物共の手によって人類社会が滅ぶ可能性も十分あり得る。真に合理的に考えるなら、全て救世の転生者様と彼女らに委ねるにべきだろう。

 しかし――。


「救世の転生者様を、救世という使命から解放するため」


 生まれながらに救世という使命を負わされ、それ以外の道を歩むことは許されない。

 そのようなあり方を、私もラハも是としない。

 この世界に生まれ変わったのなら、その心のままに自由に生きるべきなのだ。

 だから、彼を使命から解き放たなければならない。

 ……たとえ救世の転生者様自身は、自らの意思でその道を選んだと認識していても。

 真実を隠されたままの選択は、全く以ってフェアではない。


「そして、この世界が本来的に有する力のみで救世を果たすため」


 何より、世界の危機はその世界の人間の手によって解決されるべきだ。

 それこそが私とラハの共通認識であり、先代の救世の転生者様と共にガラテアと戦った御祖母様の願いの成就に繋がるものでもある。


「私が、救世の転生者様と世界を救います」


 救世の転生者様は世界を救う。しかし、救世の転生者様を救う者は誰もいない。

 病床に伏せる御祖母様の悲嘆に満ちたその言葉に、私はそう誓ったのだ。


 アクエリアル帝国皇族特有だろう幼い時分からの地獄のような鍛錬の日々も、その目的を得たからこそ耐え抜くことができた。

 命を懸けてラハに挑み、真性少女契約を勝ち取ったのもこのためだった。

 改めて今まで自分が歩んできた道を振り返り、心をしっかりと固めていく。

 そのおかげで――。


「しかし、意思だけではどうにもなりません。なすべきことは、分かっていますね?」

「当然です」


 またも現実に立ち返らせるラハを前に、今度は揺るがずに頷くことができる。

 そのまま私は、自ら再確認するように口を開いた。


「ガラテアを討ち滅ぼすことは当然として、当面の目標は二つ。一つは、人形化魔物を生み出す破滅欲求に連なる負の思念の蓄積をリセットする方法を探し出すこと」


 それに特化した複合発露(エクスコンプレックス)、あるいは祈望之器(ディザイアード)

 いずれかを手に入れるか、根本的に異なる方法を見出さなければならない。

 それを以って、百年周期の繰り返しを断ち切るのだ。


「もう一つは、既存の方法による救世の要となる祈望之器の奪取、もしくは破壊」


 即ち、救世の転生者様が持つ印刀ホウゲツ。少女祭祀国家ホウゲツのどこかに存在する霊鏡ホウゲツ、ガーンディーヴァ、そしてフラガラック。

 全て第六位階のオリジナルだ。

 これらが彼女らの手にある限り、救世の転生者様は救世という使命から決して解放されることはない。もっとも、これもまた必要最低限の条件に過ぎないが。


「いずれにしても、前提として無理を通すだけの力が必要です」


 少なくとも、このアクエリアル帝国という鳥籠から脱却しなければならない。

 今の私が持てる力も、アクエリアル皇帝の末娘という立場も、余りにも脆弱過ぎる。

 だから、この両の足に力を込めて立ち上がる。


「では、ラハ。早速、お父様の下へ向かうとしましょうか」

「……覚悟はよろしいですか?」

「今更だと言ったのはラハですよ?」

「そうでしたね」


 挑むような私の言葉に、僅かに微笑んでから表情を引き締めるラハ。

 時は満ちた。

 計画を始めるとしよう。


「……さあ、簒奪の時間です」


 そうして私は。

 いずれ無作法にもこの瞬間を覗き見ようとするだろう者へと宣言するように告げ、共犯者たるラハと共に皇帝たる父親の下へと歩き出した。


***


「けれど、そう。きっと間違っているのは私達の方で、彼女は正しかったのだと思う。この世界に生きる人間として。それでも私達はこの国のため、世界のために、過ち続けなければならないんだ。今までも。これからも」

幕間 2→3了

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