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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第2章 人間⇔少女化魔物

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134 特別労役

「説得、ですか?」


 確認するように問うとアコさんは尚も困ったように頷く。


「彼女、未だに勘違いしたままなんだ」


 勘違い……と言うと、最凶最悪の人形化魔物(ピグマリオン)ガラテアの手に落ちてしまったアロン兄さんこそが救世の転生者である、という誤解のことか。

 ライムさん達が事件を起こしたのは、救世の転生者が機能しないならば、ガラテアの脅威に備えて無理矢理にでも戦力を確保するべきだと考えたからだった。

 内容や結果はともあれ、ある種の正義感からの行動。

 それ故に、ライムさんもまた俺と面会して真実を知るまでは頑なだった。

 今でこそ一先ず俺に後を託し、粛々と罪を償っているが。


「ええと、真実を伝えてはいないんですか?」

「一部はぼかしてだけど、勿論救世の転生者が無事だということは伝えたさ。けど、信じてくれなくてね。ライムに手紙を書かせても駄目だった」

「どうして……」

「以前ライムが語ったものを重く受け止め過ぎて、彼女もまたそうすべきと信じ込んでいるんだよ。何せ、自分から進んで暴走することを許容するぐらいだからね」


 確かに。自ら暴走するなんて覚悟が決まり過ぎている感がある。

 まあ、それだけの決意がなければ、罪を犯すことも厭わぬ境地には至らないだろうが。

 とは言え……。


「ライムさんの手紙を読んでも駄目なんですか?」

「手紙なんていくらでも捏造できる。そんなことを言われたら、どうしようもない」


 俺の問いかけに首を横に振りながら肩を落とすアコさん。

 成程。頑なにも程がある。

 これは下手をすると、たとえライムさん本人を連れてきて事情を説明して貰っても、洗脳されているとか言い出すのではなかろうか。


「捕らえた段階でライムと引き離し、精神干渉で記憶を操作された人達の原状回復を行う際には少し強めに脅しつけたりしたものだから余計に拗れてしまってね」


 そう言ってアコさんは小さく嘆息する。

 恐らく、互いに互いを人質として原状回復を行わせていたのだろう。

 封印の注連縄に閉じ込められいる状態では、少女契約(ロリータコントラクト)が無効になるため、ルシネさんは勿論ライムさんもまた複合発露(エクスコンプレックス)を使うことができない状態となる。

 安全に記憶を復旧させようとするなら、離れ離れにした上でそうしておくしかない。

 最悪どちらかの命を奪えば無力化できる。そう考えていると思わせるために。


「…………今回も、同じように脅す訳にはいかなかったんですか?」


 ハッキリ言って悪役の発想だし、人外ロリコンとして俺も少女の姿をした存在相手にそんな真似をしたくはないが、一応尋ねておく。

 手段を選ばなければ、そういう選択肢もないことはないはずだ。


「原状回復を強制するまでは適法だけどね。既に刑罰を受けている訳だから、それ以上はさすがに違法。人権侵害だ。あくまでホウゲツは法治国家だからね。無理な話だよ」

「ですよね……」


 当然の答えだ。

 法の番人の一員たる者が、自ら法に背くことなどあってはならない。

 加えて――。


「彼女もその辺りのことは分かっているからね。度を超えて脅せば、下手をすると開き直って脱獄を図ろうとする可能性もある」


 一時的にせよ、第六位階の力を使える状態にする訳だから、反感が増すような真似をするのはリスクが高過ぎる。


「自分の意思で手を貸して貰わないと」

「けど、ルシネさんはどうあってもアコさん達に従うつもりはない」

「そう。もう私達はお手上げだ」


 そうジェスチャーでも示しながら、彼女は改めて俺を真っ直ぐに見詰めて続ける。


「だから、イサクだけが頼りなんだよ」


 若干おだてるように言うが、実際のところ俺自身と言うよりは、救世の転生者のみが所有を許されるあれ(・・)、が頼りなのだろうけれども。

 何にせよ、確かな証拠を突きつけさえすれば、多少は耳を傾けてくれるだろう。

 ルシネさんが勘違いしたまま反抗し続けるのも憐れだし、俺に否やはない。


「分かりました。行きましょう」

「うん。よろしく頼むよ」


 そうしてアコさんに先導されるまま、特別収容棟を出て一旦エントランスに戻る。

 次に向かう先は監房棟。

 その中でも、第六位階の複合発露を使用できる犯罪者が収監された特別監房棟だ。

 ルトアさんはそこにいる。


「さ。こっちだ」


 まず看守室に入り、そこから特別監房棟へと続く扉を抜け……。

 そこで俺は一度立ち止まり、全体を見回した。

 視界に映る限りでは、先程見た光景と然程変わりはない。

 やはり構造的には特別収容棟とほぼ同じようだ。


「…………何だか、飛び飛びですね」


 独居房は割と空きがあるが、少女化魔物(ロリータ)が入っている箇所は不自然にばらけていた。

 隣接させないようにしているとも考えられるが、それにしたって法則性が皆無だ。

 そこは、端から収容されているようだった特別収容棟とは異なる部分と言える。


「一部は特別労役に出ているからね」

「特別労役、ですか?」

「うん。折角の第六位階だからね。こんなところに閉じ込めたままというのは勿体ないだろう? 特に希少な複合発露だったりした場合は」


 アコさんは俺の問いに軽く頷いてから答えると、いくつかある空っぽの独居房の内の一つに視線を向けながら続けて口を開いた。


「だから、減刑と引き換えにその力を有効活用して貰っているのさ。勿論、殺人のような重罪を犯した者は対象にならないし、私が過去の素行や今現在の感情を〈命歌残響(アカシックレコード)〉で読み取って可否を判断しているけどね」


 彼女が見ている部屋は、その特別労役に出向いている少女化魔物の部屋なのだろう。

 よくよく見ると、狭いながらも何冊か本が地面に積み重なっている。

 減刑もそうだが、一定の範囲内で優遇されもするらしい。

 これもまた、収容された少女化魔物が暴走状態にあるが故に部屋の中に何もものを置くことのできない特別収容棟とは異なる点だ。


「ルシネさんはそれでも尚、拒否してると」

「そういうことだね。十分以上にメリットのある話だと思うんだけど」


 メリットがあると言っても、アコさんの力の前では面従腹背は不可能な話だ。

 主義主張を曲げて従う意思がないなら、きっぱりと拒絶する以外ない。


「行こう。彼女は一番奥だ」


 と、アコさんが事前の情報は十分だろうと言うように歩き出し、俺もその後に続く。

 そのまま長い通路を進んでいき、最奥の独居房の前で立ち止まったアコさんに倣う。


「やあ、ルシネ。元気かい?」

「…………何をしに来た」


 と、聞き方次第では煽りになりかねない問いに対し、低い声で反応が返ってきた。

 独居房の中を見ると、中心に正座をして静かに目を瞑っている少女の姿。

 囚人用の服なのか灰色の無地の簡素な着物を着ているが、顔は見覚えがある。

 俺が凍結によって捕らえたのだから当然だが。


 その彼女はゆっくり目を開き、白に近い灰色の髪と同じ色の瞳をアコさんに向けた。

 命属性。精神干渉の複合発露。

 封印の注連縄がなければ、この時点で俺達はその術中に陥っていたことだろう。


「特別労役の誘いなら無駄だ。私は我々の主張も聞かないお前達には従わない」

「減刑して早く出所した方がいいと思うんだけどね」

「ふん。それをすれば明日にでもここを出られるのか? ガラテアが本格的に動き出すまでに間に合うと言うのか?」

「……たとえ同意の上でも他者への狂化隷属の矢の使用は、この国では重罪だ。特別労役をこなして減刑したとしても、最低十年は見て貰わないといけない」

「ならば、こうして会いに来る貴様に危機を訴え続けた方がマシだ。そうだろう? 奉献の巫女ヒメの盟友の一人たるアコ・ロリータよ」


 不機嫌そうな声色ながら抑揚なく告げると、ルシネさんは再び目を瞑る。


「幸いにして私の複合発露は希少な精神干渉。今回のような事態が起きれば、お前は助力を乞いに来る。より深刻になれば、私の言葉も無視できなくなるはずだからな」


 そのまま、そうとだけ告げて黙り込んでしまう彼女。

 ああ。これは完全に自分の理屈が正しいと思考がロックされてしまっているな。

 掲げた大義によって完全に視野が狭まってしまっている。


「そんな未来はあり得ないよ。何度も言うけど、救世の転生者はアロンじゃない。ライムの手紙にもそう書いてあったはずだ」

「虚言を弄しても意味はない」


 呆れ気味に告げたアコさんの言葉を一蹴するルシネさん。

 取りつく島もないとはこのことか。


「いいや。今回は君も納得してくれると思うよ」

「何だと?」


 恐らく、以前はそこで引き下がっていたのだろう。

 自信ありげに言うアコさんの声に、ルシネさんは訝しげに目を開く。


「っと、その前に。風の根源に我は(こいねが)う。『振動』『抑制』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈天父〉之〈防振〉」


 問うような彼女の視線を受け流しつつ、アコさんは一先ず他の囚人に聞かれないようにするため、防音の祈念魔法を使用した。


「内密な話だからね。と言う訳で、後は頼むよ。イサク」

「……お前は何を言っている」


 軽い口調のアコさんに、尚のこと不審そうにするルシネさん。

 こんな妙な空気の中で丸投げされても、正直困るのだが……。

 アコさんも何だかんだ言ってトリリス様達の仲間だな。

 そんなことを思いながら、諦め気味にルシネさんの前に進み出る。


「ええと、どうも。初めまして。今代の救世の転生者であるイサクです」

「……………………は?」


 そして間抜けな自己紹介をする羽目になった俺を前に。

 彼女もまた険のある態度からかけ離れた滑稽な声を出してしまい、二人の間に流れていたシリアスな空気感は一瞬で霧散してしまった。

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