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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第2章 人間⇔少女化魔物

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114 力任せランブリク紀行

「とりあえずランブリク共和国のポーランスって街に向かえばいいんだよな?」

「はい。そこで入国の手続きを行います」


 補導員事務局を出てすぐ、確認のためにイリュファに問いかける。

 海外に向かうに当たり、当たり前だが、考えなしに国境を越えることはできない。

 ただ空を飛んでいって目的地に直行しては、国家間の重大な問題になりかねない。

 物事には順序というものがある。


「依頼書を見る限り、あちらの国とは話がついてるって考えていいのか?」

「当然でしょう。依頼元が依頼元ですし」


 ルトアさんから渡された依頼書。

 それを詳しく読んだところ、この依頼はどうやら元々はランブリク共和国からホウゲツが要請を受けたものらしい。

 そこからヒメ様達が俺を担当に指名したという流れのようだ。

 依頼書に書かれた仕事の手順を見ても、ランブリク共和国側に諸々話が通っている前提の内容となっている。

 初めての海外だが、そこまで難しく考える必要はないだろう。


「……あれ? そう言えば、渡されたものの中に旅券が入ってないぞ?」


 ふと気づいてイリュファに尋ねる。

 国外に行くのに、旅券かそれに類するものがないということはないはずだが。


「旅券は補導員の身分証で代用できますので」

「へえ、そうなのか」


 影の中から身分証を取り出し、確認しながら感心する。


「特に、S級補導員の身分証ともなれば、むしろ一般的な旅券よりも入国審査に有利です。社会的信用が桁違いですから。契約した少女化魔物(ロリータ)までカバーしてくれますし」


 そこまでか。至れり尽くせりだな。

 改めてS級補導員という肩書きの凄さを知る。

 高額な給料だけではなかったらしい。

 ……それだけ面倒な案件に駆り出されるということでもあるが。

 責任が大きいから優遇される訳だ。


「で、ポーランスで手続きが終わったら案内人に会って、暴走した少女化魔物のところへ向かえばいい、と。まずポーランスに迷わず着けるかが問題だけど」


 いくら空を飛べると言っても、目印のない海を渡るのは中々難易度が高い。

 そこはちょっと心配だ。

 まあ、ポーランスは元の世界で言う香港の辺りだそうだから、大陸が見えたら沿岸部を南下していけばいずれは辿り着けるだろうけれども。

 一応、地図と方位磁石も貰ったし。

 何なら、与那国島から目視できる台湾、もといガルファンド島(石の島)を経由してもいい。


「とりあえず行くか。風の根源に我は希う。『纏繞』『収束』『制御』『維持』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈天父〉之〈天翔(あまがけ)〉」


 いずれにしても、ここで手順を延々と確認していても仕方がない。

 だから、俺は方位磁石を一瞥してから祈念魔法を使用して大空に浮かび上がり――。


「〈裂雲雷鳥(イヴェイドソア)不羈(サンダーボルト)〉」


 更にルトアさんから得た(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)を早速使用して、ランブリク共和国ポーランスへと向けて空を翔けた。

 電光を纏う翼を展開し、正に雷の如く。

 ルトアさんは逃げに特化していると評して自嘲した力だが、脅威から逃げるために速度や機動性以上に反射神経も大幅に向上しているらしい。

 おかげで雷の速度を大きく損なうことなく、移動することができる。

 祈念魔法を用いて父さんの真似をした移動方法よりも、長距離であればルトアさんの真・複合発露を使用した方が短時間で距離を稼げるかもしれない。

 そして、空を切り裂くように、ただし、時折休憩を入れて地図と方位磁石で現在位置と方角を確認しながら飛ぶこと数十分。


「ええと……あれが元の世界で言う与那国島か」


 今回のところはガルファンド島上空を通過するルートを選んだ俺は、まずホウゲツを南へなぞるように飛行して日本最西端の島に到達した。

 一応ホウゲツの最西端でもあるそうだが、ここに人は住んでいないらしい。


 こちらのルートを選択した理由は、勿論観光のためではない。

 父さん達が受けたウラバ近郊での緊急依頼。

 朝刊の記事。石化という符合。

 それらが今後のフラグに思えたため、一度ガルファンド島を見ておきたかったのだ。

 だから晴れ渡る空の下、視界に映る島へと一気に接近する。


「……これが――」

「はい。これがガルファンド島。通称石の島です」


 その島影が見えた時点で異常には気づいていた。

 島の全てが。建築物や人間、動物。草や花、木、川、島を囲む海の一部に至るまで。

 確かに石化していた。

 当然、石と一口に言っても色々あるが……。


「まるで、巨大な一つの石から削り出したみたいだ」


 色としては、石という言葉から多くがイメージするような灰色。

 地表の物体で凹凸ができて陰影があるだけという感じだ。

 命の気配が一つも感じられない。

 一種の石像。芸術品のようにも錯覚する。

 正に石の島。

 その名に相応しい、ある種の美しさを持ちつつも身の毛がよだつ光景だった。


「これが少女残怨ロリータコンタミネイトの結果。恐ろしいな」


 以前。暴走したサユキの時に、もしも父さんが彼女を殺していたら。

 辺り一帯が完全に凍結し、似たような命のない世界が作られていたのだろう。

 そう考えると、サユキを救えて本当によかったと改めて思う。


「だからこそ、必ず暴走した少女化魔物を救わないといけない。補導員として」


 暴走状態にあるということは、その少女化魔物自身が望まぬ状況にあるということ。

 人外ロリコンとして、そこから助け出さんとすることは至極当然。

 しかし……改めて強く思う。

 決して殺すことなく。荒れ狂った心を鎮める。

 その理由に、少女残怨を防ぐという目的も確かにあるのだと。


「そして……」


 暴走したゴルゴーンの少女化魔物から逃げ惑う人々。その石像の内のいくつか。

 幼い少年少女のそれの前に降り立ち、その中の一つに触れる。

 恐怖に彩られた表情。そんなものが彼や彼女の最後であっていいはずがない。


「いつか、元に戻してあげるから」


 そのためにも、第六位階の状態異常を回復する手段を確保しなければならない。

 新聞の朝刊を見ながら抱いた考えをより強くする。


「イサク様。そろそろ」

「……そうだな」


 憐憫と決意を抱きながら石の島を眺めていても、全てが元に戻る訳ではない。

 だから俺は、イリュファに促されるまま再び空へと舞い上がり、一度だけ石の島を見下ろしてから再び目的地へのフライトに戻った。


 それから少しの間。時間にして数分。

 気持ちを入れ替え、真っ直ぐに空を翔けていくと――。


「……おお」


 間もなく雄大な大陸が俺達を出迎え、思わず感嘆の声を上げてしまった。

 遮るもののない、この高さからの視界。

 それを生身で見ることができるのは、魔法的な力があってこそだろう。


「イサク様」

「っと、分かってる」


 しばらく滞空して眺めていると、再度イリュファに呼びかけられてしまった。

 余り変な位置をフラフラと飛んでいると、魔物か何かと間違われかねない。

 速やかにポーランスへ向かおう。


「ええと、方角的に大体この位置にいるはずだから……もう少し南だよな」


 そう当たりをつけて進んでいくと、予想通り港街といった様相の都市が見えてくる。

 まだまだ集落が各地に点在している時代。

 空からなら建築物が集まっている場所を探せば、街は見つけ易い。


「あれだよな?」

「はい。あれがポーランスです」


 イリュファの肯定を貰い、その港街を目指して高度を下げていく。

 が、さすがに雷光バリバリの真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉は目立ち過ぎる。

 なので、単なる祈念魔法を用いた飛行に切り替えておく。


「まず港の方へ行って下さい。入国管理局はそちらです。船舶で入国する外国人もそうですが、空を飛んでくる補導員もそこで入国審査を行いますので」

「分かった」


 指示に従って、港の一角に設けられた広場に向かう。

 どうやら、生身で空を飛ぶことのできる補導員用の発着場のような場所らしい。

 その地面には何やら目印らしき×マークが地面に描かれている。

 それを目にして俺は、的があると何となく狙いたくなる人間の心理が作用し、無意識にその交差した中心を狙って着地した。

 ……このマーク、着地点を誘導して衝突を防止する意図があるのかもしれないな。

 ×マークの中心で、そんなことを考えていると――。


「ホウゲツからいらっしゃったイサク様ですね?」


 一人の少女化魔物が駆け寄ってきて、そう確認するように尋ねてきた。

 話が通っているにしても、いきなり当てられて少し驚く。

 名前のみならず、二次性徴を終えていない外見であることも伝わっていたようだ。


「はい、そうです。……貴方は?」

「私は本件の案内人を務めますアグリカと申します。トレントの少女化魔物です。この度は、迅速なご対応ありがとうございます」


 背筋をピンとして慇懃に頭を下げるアグリカさん。

 口調もちょっと過剰なぐらい丁寧だ。


「いえ…………ええと、一先ず入国審査をして、それから貴方の案内で現場に向かえばいいんですよね?」

「はい。ストレム自治区側の街サウセンドに……あの子がいます」


 彼女は更に、俺の問いかけに対して、単なる案内人に留まらない悲痛な感情をその表情と口調に滲ませながら答えた。

 何か、事情がありそうだ。


「……もしかして、アグリカさんは暴走している少女化魔物と何か関係が?」


 とりあえず聞き慣れない現地の地名はさて置き、感じたことをそのまま尋ねる。

 すると、アグリカさんはその問いを切っかけに、今にも泣き出しそうなのを耐えているかのような顔になりながら、絞り出すように「はい」と答えて頷いた。

 それから彼女は、先程よりも深々と頭を下げて口を開く。


「どうか。どうか、私はあの子のところに連れていって下さい! 私のせいでああなってしまったあの子を、ロジュエを救うためにも」


 幼い少女の姿をした彼女が、必死な様子で請う。


「お願いします!!」


 依頼にある暴走した少女化魔物、恐らくロジュエという名の少女を救うのは当然として……このアグリカさんもまた強く強く助けを求めているように見える。

 必死過ぎて胸を締めつけられる姿だ。

 救世の転生者たる者、助けを求める声には応えなければならない。

 だから。

 まずは詳しい事情を知るために――。


「落ち着いて。まず、何故そのロジュエさんが暴走してしまったのかから教えて下さい」


 俺はそう彼女を宥めるように告げたのだった。

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