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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
幕間 1→2

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103 僭越ながら

 一連の事件の犯人たるライムさんを確保してから数日後。

 俺はシニッドさん、ウルさん、ルーさんの三人と共に、再び彼の面会に訪れていた。

 ガイオさん達は、彼とは特に深い関わりがないからと同行していない。

 別段、屋敷の中での真実にも興味ないとのことだ。

 対照的に、シニッドさんはこの場で俺と同じくライムさんの(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)千年(ラスティング)五色(オーバーライト)錯誤(パーセプト)〉による記憶操作を解いて貰い、諸々抜けている部分に関しても説明を受け――。


「成程な。相変わらず、何でも自分だけでやろうとする奴だな、お前は」


 今更変えようのない過去の事実故に、やり場のない複雑な感情を表情と声色に滲ませるようにしながら言った。怒り、そして何よりも自責の念が感じ取れる。


 ちなみに、当然ながら俺が救世の転生者であることに関しては包み隠したままだ。

 先日、俺単独でライムさんと面会した際に、そうするように要請してある。

 そういう訳で、シニッドさんが耳にしたのは大部分の真実の中に一握りの偽りが混ざり込んだ情報だったが……。


「悪い癖だぞ。そんなことだから、勘違いしたまま突っ走ることになるんだ」


 それを基に、彼は積み重なった感情をぶつけるように説教を続けた。


「救世の転生者がアロンじゃねえってことを学園長から聞かされたってんなら、十二年前、最初から学園長に相談の一つもすれば――」

「まあまあ、シニッドさん。それくらいで」


 ヒートアップし、明らかに苛立ちが声へと表れ始めた彼を間に入って抑える。

 一時期指導をしていた者としての親心的なものが溢れたのだろうが、余り感情的に言い聞かせても効果は高くなるとは限らない。


「俺は構わないよ、イサク。むしろ懐かしいぐらいだ」


 とは言え、ライムさんはシニッドさんの心情を十二分に理解しているようで、言葉の通り、補導員の研修時代を回顧するような小さな笑みを浮かべた。


「…………ちっ。気が削がれたぜ」


 そんなライムさんに対し、シニッドさんは軽く舌打ちすると荒っぽく座り直した。

 少々安っぽい椅子が、体格のいい彼の重みに軋みを上げる。


「憑き物が落ちたような顔しやがって。操作された記憶ん中じゃ追い詰められたような余裕のねえ顔してた癖によ」

「……ええ、まあ――」


 シニッドさんの訝しむような視線を受けて俺をチラッと見てから、ライムさんは微妙に苦笑しながら言葉を続ける。


「トリリス様から救世の転生者が健在だと教えられましたし、何より、イサクがアロンを救うと、後は任せてくれと言ってくれたので」

「………………そうか」


 落ち着いて告げるライムさんの姿。

 それを見て、彼がこれ以上道を踏み外すことはないと確信を抱いたのだろう。

 シニッドさんは、安堵したような声色と共に頷いた。

 それから俺へと顔を向け、真剣な表情と共に口を開く。


「アロンのことは、勿論お前一人に任せるつもりはねえ。俺も手伝う。だから、コイツみたいに何もかも一人で背負いこもうとするんじゃねえぞ」


 親指をグイッとライムさんに向け、若干当てつけるようにしながらの発言。

 そうしたシニッドさんの言動に対し、ライムさんは尚のこと困ったように笑う。

 不快という感じではない。これもまた懐かしさ故だろう。


「つっても、ライム。お前も後は他人に任せて隠居って歳でもねえだろ。そんな無責任な奴でもねえはずだ。補導員の先輩として、イサクに助言の一つでもくれてやれ」

「助言、ですか。……そう、ですね」


 急にそんな話を振られたライムさんは、腕を組んで考え込むようにしてから俺を見た。


「では、僭越ながら」

「おお。言ってやれ」

「いえ、シニッドさん達もですが。いいですか?」

「何? そりゃどういう――」

「あの屋敷に来るに至った経緯は分かりませんが、もう少し慎重に行動すべきだったのではないかと。イサクの最後の一撃以外は、完全に俺のいいようにされてましたし」


 シニッドさんの問いを遮り、一気に言い放つライムさん。

 いきなりの率直過ぎるもの言い。

 若干驚き戸惑い、俺は彼の人となりをよく知るシニッドさんに視線を向けた。

 すると、シニッドさんは微妙に頭を抱えて呆れ気味に口を開く。


「割と毒舌なところも変わってねえな」

「性格はそう変わりませんよ。毒舌のつもりはありませんが。事実は事実ですので。実際、もっと凶暴で凶悪な犯人だったなら、命はありませんでしたよ」

「それは、まあ……な」

「ウルさんとルーさんもです。二人共、結構猪突猛進なところもありますからね」


 矛先を向けられ、視線を逸らす二人。

 複合発露(エクスコンプレックス)の影響かどうかは分からないが、意外と彼女達も脳筋寄りだ。


「イサクも、慎重に行動しないと。分かるだろう?」


 救世の転生者が無謀な戦いで命を落としては洒落にならない。

 そう暗に告げるライムさん。

 言いたいことは分からないでもない。が、少し言い訳しておこう。


「今回は事前情報がほとんど得られませんでしたからね」

「情報を得られないということは、相手が己の力を上回っていると考えるべきだ」


 それもその通り。しかし――。


「ホウゲツ学園で暴走した少女化魔物(ロリータ)を得た生徒が暴れましてね。弟を始めとした生徒達が命の危険に晒されたので、あれ以上は野放しにできないと」


 そう俺が反論すると、正にその犯人たるライムさんは気まずげに視線を下げた。


「すまない。調子に乗って言い過ぎたな。元はと言えば、俺の……」

「ああ、いえ。……いえ、勿論、ライムさんには罪があり、償いは必要です。が、今はそれは置いておきましょう」


 反省の時間は刑務所でいくらでもあるだろうし。

 あれだけ罪悪感を抱いていた彼だ。

 刑罰は十二分に意義あるものになるはずだ。


「まあ、今回は虎穴に入らずんば虎児を得ず、ということで強行しましたけど、俺は命の危険まではないと踏んでいましたよ?」

「それは、シニッドさんが第六位階の身体強化持ちだからか?」

「違います。思い描いていた犯人像では、決定的に悪い人間とは思えなかったので」

「何故だ? 人間至上主義者のテロリストだったかもしれないだろう? 狂化隷属の矢が使われた時点で、そう疑われていたんじゃないか?」

「ええ、まあ。ですが、第六位階の認識操作を持つなら、強制的に真性少女契約(ロリータコントラクト)を結ばせることだって可能だったはずです。いや、むしろ、そちらの方がコストは安い」


 にもかかわらず、現実には狂化隷属の矢による隷属のみだった。


 勿論、狂化も隷属も許されざる悪行なのは間違いない。

 とは言え、祈望之器(ディザイアード)を破壊すれば、その状態から解放することは不可能ではない。

 単体で見ると全くそうは思わないが、第六位階の認識操作が可能という前提を置くと最低限の少女化魔物への配慮が感じ取れる。


 対照的に、認識、考え方そのものを捻じ曲げ、真性少女契約を結ばせたら、その少女化魔物の一生は、偽りによって歪められたままで終わってしまう恐れがある。

 それは悪行などという一言では表せない、唾棄すべき邪悪だ。


「人間至上主義の原理主義者なら、少女化魔物の心なんて蔑ろにするでしょうしね。だから俺は、犯人はそうできない類の人間と見ました」

「ああ…………その最後の一線だけは、俺には超えられなかった。どうしてもな。その辺り、覚悟が足りなかったとも言えなくもないが」

「いえ、それでよかったんだと思います。結果として」


 だからこそ、罪を償い、やり直すことのできる可能性が残ったのだから。


 使い方によっては、片っ端から真性少女契約を結んで最強にもなれそうな力。

 しかし、ライムさんはそれをよしとはしなかった。

 少女化魔物という存在を尊重する心を、ギリギリのところで保っていた。

 あるいは、そういう人間だったからこそ、そうした力を持つ少女化魔物と巡り合ったのかもしれない。この世界が、人間原理に基づく法則の上に成り立つが故に。


「……後は、ガイオさんの件もあって、無理に命を奪うよりも認識を操作することで捜査の目を眩ませる方針だろうとも思っていたので」


 更に補足を加え、曖昧な情報だけで強行に出た理由を締める。

 一口に犯罪者と言っても、殺しを許容するのは一握りだ。


「成程。ちゃんと考えていたのならいい。余計な助言だったな」

「そんなことはありません。いい頭の整理になりました」

「ま、補導員っつう仕事は慎重に慎重を重ねて行うべきってことだな」

「シニッド。今回に関しては」「それは鏡を見て言うべき。私達もだけど」


 今回の事件では余りいいところのなかっただけに、ウルさんとルーさんが反省を示す。

 もっとも、俺も最後の一撃だけだった気がするけどな。

 まあ、彼らも俺と同じく、学園で起きた事件に危惧を抱いて少々焦ったのだろう。


「いずれにしても、精神干渉系の複合発露は恐ろしい力だ。イサクは第六位階の身体強化を得ることを目指すべきだ」

「それは俺も同意するぜ。どうもイサクはこれから先、厄介ごとに巻き込まれていきそうな感じがするからな。今後、相性がよさそうな少女化魔物がいたら紹介してやるよ」

「助かります。正直、俺ももう記憶操作とか受けたくないので」


 俺の当て擦りにライムさんが苦笑する。険のある雰囲気はもう完全にない。

 そんな彼を見て、シニッドさんもまた一つ重荷を下ろしたように笑った。

 この面会は双方にとって有用なものになってくれたようだ。


「さて、そろそろ時間だな」

「ですね。ライムさん、今日のところは失礼します」

「ああ。また何か、俺で助言できるようなことがあれば頼ってくれ」

「是非」


 そうして、俺にとっても事情を知る新たな味方ができた有意義な面会を終え、俺達は学園都市トコハの中央警察署を後にしたのだった。

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