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ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~  作者: 青空顎門
第1章 少女が統べる国と嘱託補導員

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100 事後処理

 どうやら犯人はアロン兄さんの幼馴染、同郷のライムさんだったらしい。

 であれば、氷漬けになった彼を目の当たりにしたシニッドさんが、あのように愕然とした様子を見せたのも無理もない話というものだろう。

 何せ、アロン兄さんとライムさんがホウゲツ学園を飛び級で卒業した後、補導員を目指した二人の新人研修は彼が担当した訳だから。

 ……もしかしたら、この辺りの反応は、記憶を操作される前に俺もシニッドさん達も既にやっていたのかもしれないけれども。


「傍にいるのは……」「認識の書き換えの複合発露(エクスコンプレックス)を持つ少女化魔物(ロリータ)、でしょうか」


 と、ウルさんとルーさんが窓から少し離れた位置を見ながら首を傾げる。

 そこには、悠属性を示す紫色の髪と瞳を持つ少女が凍りついた姿。

 ……しかし、精神干渉系は基本的に命属性だったはず。

 あるいは、何か別の複合発露を持つ少女化魔物かもしれない。


 何にせよ、一先ずライムさんと彼女。

 二人を切り取るように氷の変形と消去を行い、二つの氷の塊を取り出す。

 俺とサユキの(アーク)複合発露(エクスコンプレックス)万有(アブソリュート)凍結(コンジール)封緘(サスペンド)〉は、内部状態をも停止させる凍結。

 封印としても使うことのできる力。

 この状態を維持すれば、彼らは指一本動かすこともできない。


 ……ただ。

 何の対策もなしにこの凍結を解くと、普通に認識書き換えを使用されかねない。

 正直なところ、第六位階の身体強化を持つシニッドさん達までもが干渉を受けていた時点で、一度解除してしまったら再度行動を封じることは俺には不可能だろう。

 犯罪者としての処罰。動機の解明。

 安全確実に行うにはどうすればいいのか、今の俺には分からない。


 とは言え、それに関しては、恐らくトリリス様達であれば何とかなるはずだ。

 初代救世の転生者から五百年。そのサポートをしてきた彼女達だ。

 彼女達自身は契約相手もおらず、第六位階の力は持っていないはずだが、祈望之器(ディザイアード)やら何やらで無力化することもできるのではないかと俺は推測している。


「さて、とりあえずライムさん達の凍結は維持したまま、屋敷内の探索を続けましょう」

「ああ……いや、それもそうだが、犯人の確保を学園長に報告すべきだろう」

「そうですね。ただ、この氷への干渉は多分、俺でないとできないので――」

「分かってる。ウル、ルー、頼む」

「「了解しました」」


 シニッドさんの指示にウルさんとルーさんが頷き、速やかに屋敷から出ていく。

 それを見送ってから、俺達は玄関側の部屋だけではなく屋敷全体の探索を始めた。

 とりあえず一階から順に。

 そして、大集会でも開けそうなぐらい広い畳の部屋を通り抜け、その奥。


「おいおい、これは……」


 そこには何人もの少女化魔物がいた。

 勿論、氷漬けの状態で。

 よく見ると狂化隷属の矢と思しきものが腕に突き刺さっている。


「力を求める人々に与えるための少女化魔物、でしょうか。あるいは――」

「ライムが契約していた少女化魔物という可能性もある、か」

「ええ。……もし彼がこれだけの数の暴走(パラ)複合発露(エクスコンプレックス)を持っていたとすれば、ちょっと冷や汗が出てきてしまいますね」


 前者であれば早々に開放してやりたいところだが、後者となると少々危険だ。

 リスクを考えると素性、と言うか、どういう複合発露を持っているかの確認ぐらいはできていないと手を出しにくい。

 彼女達には申し訳ないが、こちらもこのまま凍結を維持し、それからの判断は保留としておくしかないだろう。


「次の部屋に行きましょう」

「ああ」


 そして更に奥。別の部屋に行くと、今度は一人だけ少女化魔物がいる。

 命属性を示す灰色の髪と瞳。

 認識書き換えの複合発露を持つのは、彼女なのかもしれない。


「これで一通り見終わったか」

「ですね」


 念入りに探したが、地下や秘密の部屋みたいなものはなかった。

 祈念魔法もフル活用したので抜けはない。

 なので、敷地全体の凍結を完全に解除し、それから屋敷内にいた者達を内包した氷の塊を大広間に並べておく。

 とりあえず今できるのはこんなところだろう。


「「シニッド」」


 と、そこへウルさんとルーさんが戻ってきた。

 屋敷全体の探索と氷の塊の移動に、割と時間がかかっていたようだ。

 彼女達の後ろにはトリリス様とディームさんの姿。

 学園長室やトリリス様が作った迷宮以外で会うのは初めてで、少し驚く。

 この事件。彼女達としてもかなり重要視していた証拠と言えるだろう。

 同時に、事件の収束も実感して安堵の気持ちも抱く。


「イサク。それとシニッド。よくやったのだゾ」

「一先ず、この子達の運搬、凍結解除後の安全確保、事件の事後処理はこちらでやるのです。凍結解除が必要になったら、また連絡するのです……」

「後はワタシ達に任せて、今日のところはゆっくり休むといいゾ」


 そして俺達を労うように言う二人。

 実際、俺達でなければできないことはこれ以上ない。ここにいても仕方がない。

 それに、肉体的にはそれ程ではないのだが、何故だか精神的に妙に疲れている。

 あるいは、いいように記憶を操作されたからかもしれない。

 そう考えながらシニッドさんを見ると、彼もやや疲れた顔で頷く。


「そう、ですね。じゃあ、お言葉に甘えて」


 とりあえず帰らせて貰うとしよう。

 だが、その前に一つ確認したいことがある。


「あの。トリリス様。ライムさんと面会って、できますか?」

「そう、だナ。……認識の書き換えができないように安全を確保した後なら可能だゾ」

「ええと、それって洗脳とかそういう類では――」

「違うのです。基本的に、専門の少女征服者(ロリコン)や祈望之器で真っ向から複合発露を抑え込むのです。必要があれば軽く脅……交渉をすることもあるのです……」


 脅すと言いかけたディームさんに、疑惑の視線を向ける。

 彼女は微妙に目を逸らす。

 まあ、相手が頑なな犯罪者であれば、少々強い態度を取るのもやむを得ないことか。


「ともかく、人格を弄るような真似はしないゾ。人道にも法にも反するからナ」

「私達の良識を信じて欲しいのです……」


 さすがに人権侵害的な疑いを持たれた部分については不本意なのか、二人は珍しく真剣な口調で不機嫌そうに言う。

 普段から言動がアレなトリリス様ですらガチな感じだし、信じよう。


「分かりました。では、後はお任せします。失礼します」


 そうして、二人に頭を下げてからシニッドさん達と共に屋敷を出る。

 すると、既に応援に来た何人もの捜査員が待機していた。

 一部は野次馬の対処をしている。

 俺達はそんな彼らに小さく会釈しながら規制線の外に出ると、そこで待っていたガイオさん達と合流してホウゲツ学園への帰途についた。


「とりあえず、これで一区切りみたいだね」

「ああ。イサクのおかげで汚名も本当にそそげそうだ。ありがとよ」

「いえ。お二人がお手伝い下さったおかげです。ありがとうございました」


 それから一先ず補導員事務局において、まだ仮ではあるが、今回の一件に関する仕事上の事務手続きを行い、その場で解散する。

 諸々から解放されて喜ぶガイオさん達と、かつての教え子の犯行だった事実を前に浮かない顔をしているシニッドさん達が対照的だった。

 面会できるようになったら、彼にもそうするように勧めた方がいいかもしれない。

 俺自身も操作された部分の記憶についてや動機等々色々と知りたいので、どれだけ時間がかかるか分からないが、早く面会したいところだ。


 そう思っていると、その翌日。

 トリリス様達から凍結解除の指示が出て、更に一日経つと早々と面会の許可が出た。

 そうして犯人確保から三日後。

 補導員の仕事を休みにして学園都市トコハの中央警察署にある留置所へと向かい、手続きを経て面会室へと入る。

 そこで俺は…………ようやく(今の俺の記憶にはないが、再び)今回の事件の犯人であるライムさんと対面したのだった。

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