91回目 事が終わったあとの処理
(こんなもんかな)
とりあえずの問題は解決した……と思いたかった。
あくまで学校内の、手の届く範囲での話ではあるが。
藤園家そのものは微動だにもしてない。
その傘下の家も含めて、全く何も変わってない。
だが、これで暫くの間はどうにかなるはずだった。
客の相手はこれからカオリと取り巻き達がこなすようになる。
藤園の家の者達が元締めなのだから、当事者として率先して仕事をすべきである。
他の家を巻き込む必要はない、そもそもして良いものではない。
これについては魔術で支配下においたカオリに通達を出させている。
客をとらせていた者達の解放と、解放によるお咎めはないと。
そうする事で売春をさせられていた者達も、多少は安心をするはずである。
過去の出来事を変える事は出来ないが。
また、この事は売春をさせられていた者達の親にも伝えられていく。
これについてはカオリに直筆の手紙をしたためさせ、家印を付けた書面を送らせた。
後に残る形で証拠を作るためである。
ただ、自ら娘を供出した家などについてはこの限りではない。
そういった所は、カオリから藤園の家に進言をさせて、取りつぶしなどをさせるつもりである。
子供を自分の出世のための道具に使うなど、許される事ではないだろう。
そこはさすがに許せるものではなかった。
そうする事で実家が無くなる者達も出てくるが。
なので、これまたカオリから藤園を動かしていく。
藤園で当分の面倒を見るように。
かなり難しいが、そこはトモルも裏で手を回していく。
カオリの実家に出向いて、当主を洗脳しながら。
とはいえ、そうすると藤園が囲う事になる。
それはそれで強固な取り巻きを作る事になる。
結果として藤園を強化しかねない。
なので、保護は別の有力な家にやらせる。
藤園は保護をした家に金を出させて支援という形にする。
なお、被害者の保護をする家は藤園と対立してる所を選んだ。
こうして藤園は、自分の敵を自分で育てて強化する事になっていく。
今後は自分が強くした政敵を相手に手を焼く事になるだろう。
それをトモルは必ず実行させるべく暗躍する。
とにかく色々と大きな問題である。
やる事は決まってもすぐに実行する事は出来ない。
事前の準備に色々と手間がかかる。
これから時間をかけてやっていくしかない。
(藤園の家に入って、制圧するかな)
本気でそれくらいしないと事が進まない。
一応、カオリの実家の連中は洗脳してあるのだが。
それでもまだ足りないのかもしれなかった。
(その為にも、もう少しレベルをあげておかないと)
今のままでもかなり強い。
だが、それだけではまだ足りないとも感じた。
今回、藤園を敵に回してしまったのだから。
どれだけ強くても、全然足りないのではと思ってしまう。
(頑張らないとなあ)
レベル上げの理由がまた増えていく。
ついでに売春をさせられていた者達とも面会をしておいた。
トモルは仮面を付けて正体がばれないようにはしておいたが。
その状態で、
「今後、助けを求める事もあるだろうから、その時には協力をお願いしたい」
と伝えた。
救われた者達は誰も断る事無く頷いた。
彼女らも恩人に報いたいと思っていた。
ついでに、庇護を得られればと。
恩は恩としてありがたい。
それに報いるのはやぶさかではない。
だが、藤園を敵に回したようなものでもある。
その難を逃れるには、相応の強さを持つ者が必要だ。
それに取り入るにせよ、取り込むにせよ、接点は必要になる。
トモルにそれを求めるのは自然な成り行きだった。
被害者もその実家も、対抗出来る手段が欲しいのだから。
こういう所でも、トモルは大きな責任を背負ってしまった。
とはいえ、見捨てるのも気分が悪い。
やむなくではあるが、そんな被害者とその実家の意向をくんでいく事にする。
(まあ、こっちの勢力強化にもなるし)
トモルもトモルで打算的に考えてもいた。
こうしてトモルは、被害者の実家と交渉するための窓口を得た。
トモルの実家の方で必要になるだろう人材確保の可能性が高まる。
上手くいくかどうかは分からないが、取っかかりは出来た。
(あとは交渉次第か)
それが出来る状態になっただけでもありがたかった。




