84回目 こういうのは潰しておくに限るよね 2
客は到着した女子をいやらしい笑顔で出迎える。
見ていてトモルは嫌悪感を抱いた。
そんな客に瞬時に近づき、
「どーも」
言いながら蹴り飛ばした。
客は小屋の中に吹き飛んでいく。
バウンドする事なく壁まで飛ぶ。
そこで大きな音を立てて、床に転がった。
それを見て、小屋の内外から人があらわれる。
周囲の警戒や護衛をしてる者達なのだろう。
それらにトモルは、精神介入の魔術を使っていく。
警備とおぼしき者達は、それで敵意や戦意を喪失。
トモルに従うようになっていった。
更に小屋の中で倒れた客。
その精神にも魔術で介入していく。
そうしてから魔術で治療し、尋問を始める。
とりあえずは名前や家などの個人情報を聞き出す。
また、今後連絡があればすぐに従うようにと。
魔術で頭や心に服従を刻んでいく。
客だけではない。
周りにいた警護をしていた者達にもだ。
それらにもトモルへの服従を刻み込んでいく。
そうしてから家に帰していく。
出来るなら、ここでより詳しい事を聞き出したい。
しかし、今日は時間がない。
他にも客がいて、そちらも巡らねばならない。
人数は厳選したが、それでもあちこちに出向かねばならない。
「本当に面倒くさいな」
こんな状況を作り出してる客と売春組織が恨めしい。
とりあえず連絡手段などを確認して、洗脳した連中を解放する。
ただ、すぐに帰ると怪しまれる可能性もある。
お楽しみなら、時間ぎりぎりまでたっぷりと遊びたくなるものだ。
いつもより早く帰れば、それだけで疑問を抱かれる。
「だから、いつも帰宅する頃合いまでここにいるように。
他に何かしたりしないように。
いいね?」
「かしこまりました」
洗脳した客とその仲間は素直に頷く。
「あと、今日もあんたは女の子と楽しい事をした。
そういう事にしておけ。
俺がいたとか、今までとは違ったというような事は無かったから」
「はい、承知しました」
隠蔽工作も忘れない。
そうしてから女の子は宿舎に帰していく。
こんな所に長居する理由はない。
「ごめんね、こんな所に連れ回して」
一応あやまっておく。
下手すればあぶない事になってたかもしれないのだ。
誠意なぞこれっぽっちも籠もってなくても、謝罪くらいはしておかねばならなかった。
それが終わると次の所に向かう。
今日の客はここだけではない。
あと何件か控えてる。
そちらの方に向かっていく。
「急がないとな……」
地図と探知魔術を使って、目標を辿ってく。
発信器代わりの魔術装置を女子に持たせてるので、発見は簡単だ。
あとは、それを追いかければ良い。
「時間をずらしておいて正解だったな」
客との待ち合わせ時間。
それが重ならないよう調整してある。
だから、ギリギリだが何人もの客を相手にする事が出来る。
それでも急いで行動しないといけない。
その後も同じように処置をしていく。
客が出てきたら洗脳し、言う事を聞かせていく。
そして今後の布石にして、様々な工作を仕掛けていく。
そんなこんなで一日が潰れてしまった。
ダンジョンにいってレベルを上げられないのが辛い。
それでも、支配下においた貴族は役に立ってくれた。
後日、出向いた先で様々な情報を聞く事が出来た。
また、様々な指示を出し、トモルが動きやすい環境を作らせていく。
客が割と有力者だったのも幸いした。
そうでなくても、貴族同士の繋がりがある。
その力を有効活用していく。
一日を費やして、こうしたものを手に入れた。
それなりに労力は使ったが、成果は大きい。
そのことにトモルは満足した。
(たまには人助けもするもんだな)
そんな事を考えながら。




