70回目 今後の勢力拡大のために
これの解決方法として、トモルは自分の実家の方に無理を強いる事にした。
そちらに人を送り込むのだ。
なにせ実家は人手不足だ。
大量に集まってる冒険者の対応のせいで。
その為に人手がどうしても必要になっている。
その人手を、同級生の家族から募ろうと考えた。
どの家にも部屋住みに甘んじる無役の子供がいるものだ。
そういった者達を実家に吸収出来れば、多少は縁故も出来るはずである。
まずそうやって、実家と他の家の間に利害関係を作ろうとした。
か細い繋がりではあるだろうが、無いよりはマシだろうと考えて。
どのみち実家の方には、今後も冒険者を流し込んでいく予定だった。
辺境開拓にはモンスターを撃退出来る者が必要になる。
となれば、それには冒険者がうってつけだ。
それらを可能な限り集めて辺境へと投入する。
辺境に一大勢力を作るためでもある。
そうなると、それらを管理する者が必要になる。
冒険者を指揮下におさめるためではない。
そうするためには召し抱えねばならないが、そんな余裕はトモルの実家にはない。
なので、冒険者を召し抱える事はとりあえず諦める。
そうではなく、冒険者はトモルの実家の柊領への移住者として扱っていく。
そうすれば、登用して給料を払う必要はない。
冒険者には自力で怪物退治を頑張ってもらう。
それで稼いでいってもらう。
ただ、拡大する人口にあわせて、統治側としてある程度の体制作りが必要になる。
その為の人員を確保せねばならない。
そこに貴族の子弟をあてがっていく。
この際、何の経験もなくても良い。
最低限の教養があれば良い。
単に読み書きや計算が出来るだけではない。
複雑な文章を読み解き、複雑な思考が出来る素養が欲しいのだ。
そんな者はこの世界では貴重だ。
そして、それを身につけてるのは貴族くらいしかいない。
残念ながら、何の素養もない平民庶民では、複雑な仕事を任せられない。
ここに、各家庭の部屋住み子弟の需要が発生する。
その為にも、まずは冒険者を流れ込ませていかねばならない。
対応が難しくなるくらいの人数がいなければ、貴族の子弟を引っ張る理由が出来ないからだ。
(冒険者か……)
どうやって流し込むか?
それが問題である。
簡単にできれば苦労はしないのだが。
(まあ、駄目でもともと、色々やってみるか)
とりあえずは、思いつきを実行していく事にした。
上手くいくかどうかは分からないが。
それでもやるしかない。
他に思いつかないのだから。
勢力拡大もしなくてはならない。
学校内での問題というか、そこから始まった貴族相手の対決。
あるいは戦争。
それを勝利で終わらせるために必要なものを揃えねばならない。
勢力はその一つだ。
それらを手に入れる為に、割と大がかりな問題を起こそうとする。
そうでもしなければ、状況を動かせない。
そうやって余計な騒動を増やしてるという意味では、トモルは疫病神そのものであった。
トモルもその自覚がある。
分かっていても構わずに実行するあたりは問題だろう。
実際、効果がありそうと思えば何でも実行していった。
周りの迷惑などかえりみないで。
だが、気兼ねしたところで誰かが便宜を図ってくれるわけではない。
だったら成果を求めて問題を起こした方がよっぽどマシと開き直ってる。




