69回目 学校における地味で静かな活動
冒険者の方はそのように落ち着いていく。
しかしトモルの方は依然として忙しいままであった。
何せ学校がある。
そちらの問題はまだまだ全然解決してないのだから。
レベルアップによってトモルは、最低限の抵抗力を手に入れた。
だが、それだけでどうにかなるわけではない。
何せ貴族が相手だ。
より強力な対抗手段がなくてはどうにもならない。
国家相手であってもどうにか出来るくらいの。
となると、一地方くらいは自分の勢力として確保せねばならない。
だが、残念ながらそんなものをトモルは持ち合わせていない。
実家も辺境の村を幾つか治める程度の小さな領主だ。
その家の力をあてには出来ない。
実質的にトモルは、全てを自分一人でやらねばならなくなっていた。
悲観する材料に事欠かない現状だが、それでもトモルはつとめて気楽であり続けた。
根を詰めたところでどうにもならない。
困った顔をしたところで経過や結果がよくなるわけではない。
だったら、気分をほぐし、肩から力をぬいていた方が良い。
そうしていれば、少なくとも心労にはならずに済む。
結果が変わらないなら、少しでも楽が出来た方が良い。
だが、悪い事ばかりではない。
少なくとも新入生達からの信頼は得ている。
上級生を叩きのめした怖い存在と思われてるのも確かであるが。
しかし、理不尽な事をしなければ何もしないというのは分かってる。
だから不当な事をしかけてくる者はほとんどいない。
そういった者達の中で信用出来る者を探し、仲間に引き込んでいった。
同じ新入生だけではない。
その兄弟や親などにも話をつけてくれるよう頼んでもいた。
どれだけ効果が出るか分からないが、それらが今後何かの時に活きるかもしれない。
可能性を増やす為の布石としての行動である。
なお、同じ学校の上級生などに兄や姉がいる者もいる。
そういった者達に、兄や姉と引き合わせてもらうよう頼んでもいた。
可能でなるならば仲間に引き込む為に。
これらは駄目でもともとと思ってるので失敗してもそれはそれでよかった。
更に舎監を通じて学校関係者にも話をつけていく。
後ろ暗いところのある連中は、それをネタにゆすって言う事を聞かせる。
汚い手段であるが、汚い事をしてる連中にはそれで充分である。
まっとうな説教でどうにかなるような奴なら、悪い事などしない。
悪事には悪事を叩きつけるのが正攻法である。
それで大人しくなるならよし。
開き直ってくるなら、叩きのめしてやれば良い。
あとはダンジョンにもちこんで、行方不明になってもらう。
そうやって学校の職員などの方も配下にしていく。
仲間という同等の立場ではない。
使役する下僕として。
しかし、そうやっていってもまだ完全に学校を支配してるとは言い難い。
やってる事と言えば、同級生らを仲間に引き込んでるだけ。
それだけでは学校内の立場は弱い。
手札は増えてるかもしれないが。
もっとより強力な存在が欲しかった。
学校内だけでも強権をふるえるような。
それも、利害も含めて簡単に切り離せないような。
それでいて、トモルの方からは簡単に関係を断ち切れるような。
そんな都合のよい存在が欲しかった。




