65回目 冒険者強化、あるいは手下の育成開始
「それじゃいくぞ」
そう言ってトモルは冒険者達に強化魔術をかけていく。
対象になった冒険者達は、普段よりも各段に強力な戦闘能力を与えられていく。
「すげえ……」
その効果を冒険者達も実感していく。
「ついでに、あいつらにも弱体化をかける」
その言葉通りにトモルは、巨大バッタの方にも魔術をかけていった。
目に見えるくらいにバッタの動きが鈍くなっていく。
飛び跳ねる高さも、せいぜい数十センチといったところだ。
「あれならいけるだろ。
頑張って倒せ」
言われて冒険者達は、確かにこれならと思ってバッタに向かっていった。
最弱の部類に入るバッタであるが、大量に現れるので割と苦戦をする。
だが、強化された身体能力を用いれば問題は無い。
弱体化したバッタなどものの数ではなかった。
呆気なく一撃で粉砕し、核の原材料にしていく。
そのあまりの簡単さに冒険者達は驚いた。
「おいおい」
「嘘だろ」
大量のバッタを難なく倒してしまった。
呆気なくて驚く程だった。
驚かないわけがない。
魔術の支援があったればこそであるが。
その魔術の有無がこれほど大きいとは彼等の想像を超えた。
何せここには魔術を扱える者がいない。
その効果を実感する機会が無かった。
「凄いな」
あらゆる言葉を混ぜ合わせて口から出てきたのは、そんな感嘆の声だった。
もちろん、普通の魔術師ではここまでの効果をもたらす事は出来ない。
トモルの馬鹿げた能力の高さがあって為しえる事だ。
でなければ、モンスターを一撃で倒せるほどの能力強化はありえない。
モンスターが身動きをとれなくなるほどの弱体化もなかった。
あくまでトモルがいたから可能な事である。
その事に彼等はまだ気づいてない。
それでも、トモルがいるからこれだけ楽にやっていけるのは理解していた。
それからもトモルに言われるがままにあっちこっちに移動し、そこにいたモンスターを倒していった。
魔術でモンスターの位置を割り出すトモルがいてこそだ。
おかげでかなりの数のモンスターを、効率よく倒す事が出来た。
とはいえ、それはいつも回収でまわってる時とさほど差はない。
違うのは、核だけでなく経験値も稼げた事くらいだ。
だが、手に入れた経験値の多さに彼等は驚く。
「1400って……」
「嘘だろ」
「こんなに稼げたのって初めてだよ」
一日の終わりに自分達の能力を確認する。
その時に経験値の欄をみて誰もが驚いた。
一日でこれだけ稼げた日など今までない。
あまりの多さに我が目を疑う者が続出した。
「けど、この調子でいけるなら……」
「もの凄く早くレベルが上がるんじゃ……」
驚きがある程度落ち着いたところで、冒険者達はその事に気づいていく。
この調子であるなら、そうそう上がらないレベルがかなりの勢いで上がっていく事に。
「もしこのまま続けたらどうなるんだ?」
「今年のうちにレベルが上がるよな」
「ああ、そうだ。
それもレベル1つ上がるだけじゃない。
2つ3つくらいいくかもしれんぞ」
「こりゃあ……」
「あいつについていくしかねえな」
誰もがそういう結論に到達した。
下っ端になれ、配下になれ、というのは気にかかる。
だが、それも納得してしまうほどの報酬が手に入る。
金だけではなく、経験値という形で。
それを考えれば、多少の命令は適切な交換条件と言えた。
「まあ、それでも暫くは様子見だけどな」
多少冷静な代表者はそう言って周りを落ち着かせる。
だが、そんな彼ですら、この成果は得がたいものだと感じていた。




