64回目 冒険者への提案という強要による従属化は下僕への強要になるのだろうか? 2
「正当だったり妥当な理由で抜けるのは構わない。
各自の事情とかは考慮するつもりではある。
もっとも、そうでない場合は、見つけ出して相応の報いは受けてもらう」
質問にトモルはそう答えた。
はっきりとトモルは制裁する事を告げている。
聞いてる者達は息をのむ。
「それは…………俺達を殺すって事か?」
「それも含めてだな」
トモルを囲む者達がざわめいた。
「……まあ、あんたからすりゃ、それくらいはしないとやっていけないだろうな」
代表者のようになってる冒険者が頷く。
「勝手に抜け出すのを認めたら、集団なんか保てない。
それを許さないっていうあんたの言う事も分かるよ」
「ありがとう。
そう言ってもらえると助かる」
それが理解出来るだけでもありがたい。
要求だけする我が儘なガキでないというだけでも助かる。
「それと、命令だ何だって言っても、そんな理不尽な事は言うつもりはない。
死ねとか、死ぬような事になる命令も、出来るだけ出さないようにはするつもりだ」
「そうしてくれるとこっちも助かる。
でも、それ以外は?
尻を舐めろなんていうような事まで命令されるのはたまらんのだが」
これは冗談ではある。
しかし、死なない程度の無茶をさせられるのもたまらない。
「まさか。
そんなふざけた命令なんて誰がするかよ。
ああ、お願いとかそういう形での命令だってしない。
俺が求めてるのは、やらなきゃいけない戦闘とかをしっかりこなしてもらう事くらいだ。
あんたらの生活や日常とかにちょっかいを出すつもりはない」
「つまり、命令とか指示は、あくまで戦闘に関わるものって事でいいのか?」
「俺達の中での秘密や機密とかを外部に漏らさないってのもあるかな。
まあ、そこら辺は常識とか良心に従ってくれればってところだな。
もちろん、俺に逆らったり気分を損ねたりしないって範囲で」
「ふむ……」
話を聞いてて冒険者側もトモルの言い分を理解していく。
ようは業務に関わる部分での指示に従えという事なのだろう。
だったら、それは妥当な内容ではある。
業務にかこつけて無理難題を吹っかけたりするつもりも無いようでもある。
「それなら問題はなさそうだけど。
でも、様子見である程度は猶予期間も作ってくれ。
あんたに従うかどうか見極めるためにな」
「それもそうだな。
こっちもあんたらが使えるかどうか見定めないといけないし」
「じゃあ、条件はそんなもんでいいのか?」
「増やすにしても減らすにしても、それはこれから考えていく事になるだろうな。
折角の猶予期間、試用期間があるんだから」
「それもそうか」
トモルと冒険者側の代表はそう言って笑った。
「じゃあ、明日からやってみよう。
今週はみっちりやっていくからな」
「ああ、頼む」
そこから更に幾らか話しをして、とりあえず二ヶ月か三ヶ月ほどお互いに様子を見る事に決まった。
それが返事の保留・猶予期間であり、トモルによる試用期間になった。
明けて翌日。
トモルと共にダンジョンに入った冒険者達は、早速モンスターとの戦闘をけしかけられていた。
「まずはあいつらだ。
頑張って倒せ」
そう言ってトモルが指し示す先には、大量の巨大バッタが飛び跳ねていた。
「おいおい」
「嘘だろ」
最初からとんでもない事を言われ、冒険者達は失敗したかなと考え始めていった。




