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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第1章

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35回目 物憂い挨拶回り

 嫌々ながら向かった貴族の館。

 トモルの柊家を含むいくつかの貴族(荘園)をまとめる小さな貴族の居城である。

 城というほどいかめしくもなく、館というほど豪勢というわけでもない。

 市町村くらいの規模の貴族であるのだから妥当なものだとは言える。



 何せ、配下の貴族も二つ三つの村を治める程度のものなのだから。

 それらを幾つか束ねたところで、大した規模にはならない。

 必然的に勢力もそれなりになっていく。



 一応は各貴族の上に立つ立場ではある。

 管理職と言えるだろう。

 もっとも管理職としては最下級であるが。

 貴族全体からすれば下から一つ上という程度の位置である。



 それでも、貴族の中では統率者の側ではある。

 トモルの立場では逆らう事など許されない存在であった。



(本当に面倒くさい)

 挨拶の為に訪れたトモルは、心底うんざりした気持ちでその貴族の館へと向かう。

 一般家屋よりは大きいトモルの家の、更に数倍くらいの大きさを持つ館。

 そこに足を踏み入れ、これから始まるであろう挨拶の式次第を思い浮かべていく。



 この手の挨拶回りは既に定型化されていて、やり方もほぼ決まっている。

 訪れた子女が広間に並び、やってきた貴族に挨拶をする。

 それから貴族のお言葉をありがたく頂戴し、最後に締めの挨拶をして終わる。

 大雑把に書けばこの程度ではある。



 なのだが、これが割と面倒くさいほど細かい所に決まり事があったりする。

 広間への入り方と並び方、貴族がやってきた場合にとるべき姿勢。

 平伏の姿勢をとったままのお言葉頂戴……などなど。

 よくもまあこんなに無駄を付け加えたものだと呆れるしかない。



 儀式というのは時間を経る毎に無駄な装飾が増えるという。

 それを地でいくかの如きものがあった。



 そういうところでしか権威付け出来ないのだろうとトモルは考えている。

 実際、それでさほど間違ってはいない。

 初めてその流れを聞いた時、本気で呆れたものだ。



 また、もう一つ思った事もある。

 それはこの場にやってきてより強く思った。

(小学校の入学式だな、これじゃ)

 参加する子供の数は少ないが、やってる事と雰囲気は似たようなものを感じた。



 さしずめ、貴族の入学式といったところか。

 ここから貴族の子供達の付き合いが始まると思えば、あながち間違ってるとも言えないだろう。

 そんなものに参加するトモルは、この場からどうやって退散するかで頭がいっぱいだった。



 そんなトモルは居並ぶ他の貴族の子女(参加数4人)と並び、頭を下げて上司にあたる貴族の言葉を聞いていた。

 ながながと、ただひたすらに長いだけの声を。

(早く終わってくれ……)

 心底そう思いながら、畳の上に正座をして頭をさげる。



 土下座とは言わないが、手も畳につけながら。

 しかし、貴族の言葉はなかなか終わらない。

 長く、抑揚を付けて、もったいぶった言葉遣いをしながら続く。

 そうする事が長者らしいという風潮に従って。

 貴族限定であってほしいこの風潮は、ひたすらにトモルと同席した子供達を苦しめていった。



(こいつを倒せたらなあ……)

 モンスターのように撃退出来たらどんなにすばらしいだろうと思った。

 そして、話を長々としてまとめられないのは無能の証拠だという言葉をなんとなく思い出した。



 その長々とした挨拶が終わるまで一時間。

 ようやく終わって儀式が終わった時には、トモルは心底幸せを感じた。

 だが、そこで長話以上に鬱陶しいものが出てくるとは全く思ってなかった。

(厄日だな)

 その時のトモルは心底そう思った。

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