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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第5章

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194回目 学校における出来事のちょっとした事後報告 6

 こうして、学校で恒常的に行われていた悪事は終わっていく。

 その結果は、加害者にとっても被害者にとっても満足のいくものではない。



 追及される側の権勢と行動により、なされるべき事が全くなされずに終わっていく。

 全く何もないというわけではないが、結局は被害者側の泣き寝入りと言える結果になっていった。



 加害者も納得していない。

 罪の追及がある程度緩和されたところで、処罰が無くなるわけではない。

 失うものもあるのだ。

 やらかした事を考えれば当然だが、それに納得するような人間ではない。

 そんな殊勝さがあれば、悪さなどしないのだから。



 釈然としない思いを抱く者は多く、それが様々な不満となっていく。

 だが、即座にそれがどうにかなるという事もない。

 不満が問題になる事など滅多になく、憤りをくすぶらせながら普段の日々が流れていく。



 だが、そんな中で様々な行動がなされていく。

 不満や憤りは行き場を求めてうごめく。

 それをすくい上げるものがいれば、そちらに向かっていく。

 やるせない気持ちを抱えてる者達にとって、それは暗闇の中の光明に見えただろう。



 トモルはそういった者達に接触をはかり、少しずつ勢力を拡大していった。

 少しずつ柊家の方に向かわせ、接触を増やしていく。

 基本的には辺境の男爵でしかない柊家ではある。

 だが、勢力拡大の兆しを見せてるので注目を集めてもいる。

 そんな家からの接触があったという事で、どの家も悪い気はしなかった。



 また、そんな柊家で働く子弟との縁談などをちらつかせる事で、大きな餌にもなった。

 事件発覚後、それが懸念事項の一つになっていた。

 もちろん、相手の希望も聞いた上での事にはなる。



 それでも嫁ぎ先が出てくる可能性があるならば、それにすがりたくもなる。

 最悪、尼寺にでも入るしかないかと考えていた事もあり、これに飛びつく者も多かった。

 当然これは、そういった弱みにつけ込んでの事である。

 トモルとて慈善事業をしてるわけではない。

 何の利益もないのに一方的な提供をするつもりはなかった。



 もっとも、柊家で働く子弟の親などはこれを利用しようともしていた。

 傷物とはいえ、相手はそれなりの地位の貴族もいる。

 家柄の良いところと縁談がまとまれば利益になりえる。



 所詮貴族は、勢力争いをするのが性分である。

 勢力拡大になるならたいていの事は無視していける。

 当事者となる子弟のほうは嫌がる者がほとんどであったが、親や家がそういった意向を潰していった。



 これはこれで不満が残り、後に問題にもなるだろう。

 配偶者に嫌気がさして愛人を作るなど日常茶飯事なのだから。

 だが、それを前提にして単なる勢力拡大を求めて結婚に踏み切る剛の者もいる。

 そこは貴族の子弟であるから、当事者も割り切ったものであった。



 心ならずも傷物にされた娘達も、自分の立場を考えてこれを受け入れる者もいた。

 貴族の間でも醜聞は不利に働く材料になる。

 それでも家同士の繋がりと、それがもたらす利益でそれを無視するのも貴族だが。

 だが、そういった場合、本当に政略だけが結婚理由になってしまう。

 幾らなんでも、それだけというのは避けたいのが人情である。



 しかし、状況が状況なのだ。

 事がままならない以上、せめて少しでも良い条件で事を進めるしかない。

 どのみち、このままでは貰い手がなくて一生実家暮らしか、尼寺に入る事になる。

 そうなるくらいならば、多少不利な条件であっても、嫁げる方がマシというものであった。



 そんな妥協と打算の結果としての縁組みが行われていく。

 それが柊家の、そしてトモルの勢力拡大にもつながっていった。



 また、そうして出来た繋がりが、新たな人材供給と販売市場の拡大にも繋がっていった。

 トモルとしては、それが手に入るだけでも充分な利益になる。

 ちょっと揺さぶっただけで、これだけのものが手に入るならば上出来であった。

 体制の改善は、上手くいけばそうなってほしい、という程度のものだったのだから。



 そんな中での最大の誤算は、意外と双方合意の上での縁組みもあったという事だろう。

 言ってしまえば傷物、それも売春をさせられていた娘がほとんどである。

 本人の問題でも間違いでもないが、それはそれで醜聞である。

 だが、そこを理解している貴族子弟もそれなりにいた。



「それならば仕方ない、本人が悪いわけではないし」

と理解を示し、縁談を進めていく者達もいた。

 多数派とはならなかったが、幾らかいたそういった者達は存在した。

 それが、政略と打算と妥協にまみれたこの話に、救いを幾らか与えていった。



 もっとも、それらの全てが美談かというと、そうでもないのも確かである。

 一部には、

「こんな機会でなければ嫁なんて来てくれない」

という者もいる。



 言ってはなんだが、容姿を理由で敬遠されてしまうような者達だ。

 あるいは、性格や人格、人間性において問題がある者だ。

 縁談が来ても常にお断りを入れられてしまう者達もいる。

 そういった者達が、これが自分達に与えられた最後の機会とばかりに乗り出した、というのもある。



 嫁ぐ方もそれも覚悟で輿入れしていく者もいた。

 この場合、より妥協をしたのはどちらであるのか、悩ましいものがある。



 ただ、好んで売春組織に身を投じていたようなものは排除された。

 また、実家の方が娘を差し出す事で利益を得ようとしていた所も除外された。



 前者は、そんな者を家に入れたくないというのが理由である。

 後者は、嫁として迎えれば、相手の実家が鬱陶しくなるからだ。



 実家の方が問題の場合は、そこと縁を切った上で嫁入りとなる事もあったが。

 何にしろ本人がどうしようもないなら、最初から相手にもされなかった。

 そんなどうしようもない家は、本当に誰からも相手にされず潰えていった。

 さすがにそんな者達だと利用するのも手間なのか、どの勢力もこれを機会に縁を切っていった。

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