190回目 学校における出来事のちょっとした事後報告 2
だが、肝心な部分への追及もなく、捜査は終わっていく。
そして、関係者達は事の当事者がいなくなっても繋がりを保っていく。
共通の趣味や、表に出来ない事をやってるという共犯意識はなくなっても。
そんなものがなくても、得られた繋がりがもたらす利益が絆となっていく。
それがあれば、爆弾になりかねない事をやってる者達など不要になる。
かくて関係していた家は問題児を切り捨てて存続。
面倒がなくなった形で派閥を形成していく事になる。
それは、問題を作り出した組織を運営している元締めにとっても都合が良い。
人を集めるために作っていた組織が、形を変えて存続していく事になるのだから。
もちろん、すぐには使えない。
さすがに問題を起こした者達の縁者だ。
役職などは外し、暫くは無役にせざるをえない。
だが、それも悪い事ではない。
傍から見れば没落でしかないのは確かだ。
実際、権勢を振るう事は出来なくなる。
貴族としての待遇はそのままで、領地からの収入もある。
また、役職などに伴う権利や権力もない。
そのくせ、貴族としての仕事や費用の分担などは求められる。
持ち出しが多くて割に合わない立場に追いやられる。
当人達には納得がしがたいものである。
駒として使う側からしても、即座に何かが出来るというわけではないので面倒ではある。
だが、余力がある者達にとってはそうではない。
「あらあら、大変ですね」
藤園ヒロミは暢気な調子でそう言う。
取り巻きの女子と共に語らう茶会の中で。
そこで話題に上がってきた、学生を使った売春騒動についての感想である。
自分の家の分家が起こしたことであるにも拘らず、それを気にするそぶりもない。
そんな騒動など自分には関係がないといった調子である。
実際、彼女からすれば、分家とはいえ末端に近い所の家の事ではある。
関係がないと言えば関係はないだろう。
藤園を頂点とした権勢が受ける打撃はそう大きくもない。
本家の生まれであるヒロミにまで累が及ぶ事もない。
彼女が他人事のように扱うのも当然ではあるかもしれなかった。
「でも、その人達を放っておく訳にはいきませんね」
そう言ってヒロミは立ち上がる。
「どちらへ行かれるのですか?」
取り巻きの少女の一人が尋ねる。
茶会の途中で立ち上がったのだから当然だろう。
お茶とお菓子をついばむだけの催しだが、それでもヒロミが主催である。
その主催者が、名目上は客である他の者を放置するのは礼儀に反する。
もちろん、それを咎めるような者はここにはいない。
何をしようと主がするなら、あらゆる事がゆるされる。
そう考える事が出来る者しかここにはいない。
だからこその取り巻きなのだ。
それでも尋ねたのは、彼女らの主が何かをしようとしているのを察したからだ。
ならば、それに乗らない訳にはいかない。
取り巻きとして、主が為す事に追従せねばならない。
その為に、何をするのかを尋ねなければならなかった。
追従してるだけでは取り巻きなど勤まらないのだから。
そんな取り巻き達に向かってヒロミは、満面の笑みを浮かべて考えを述べた。




