185回目 とりあえず一発やってみて様子を見る 4
学校で暴露された話がその後どういう展開をしてるのか。
それをトモルは、繋がりのある学生の実家から流してもらうようにした。
彼等の実家から、使用人を通じて外に流れるように。
余程上流でもない限り、貴族の家の使用人の大半は一般庶民である。
そんな彼等は、貴族社会の出来事を庶民に伝える情報源になる。
休日に町に出かけたり、出入りの商人などを通じて話が拡散していく。
貴族の内部事情はこうして外部に流れ出ていく。
珍しい事でもない。
王侯貴族の内部事情は、こういった経路から庶民の所へと流れていく。
だからこそ庶民は、接点のない貴族の内部事情に詳しかったりする。
正確さはどうしても欠けるが、それでもある程度の事情を把握していたりもした。
もっとも、貴族とてやられっぱなしというわけではない。
これを利用して、情報操作に使う事もある。
意図的に絞った情報を分かりやすく耳に入れて外に流させるのだ。
今回も、これを利用しての情報操作がなされていく。
トモルももちろん利用していく。
使用人達の耳に入るように学校での出来事を口にしていく。
その後の処分などについての情報も含めて、外に流すようにしていく。
いずれも真偽定かならざる噂話の域を出るものではない。
けど、庶民の大半はこぞってそれらに聞き入っていった。
滅多にない大きな話題だからだろう。
それらに情報を提供するために、トモルは可能な限りの内部情報を流出させていった。
もちろんそれらも、チラシにまとめ、旅芸人や吟遊詩人達へのネタ提供に用いていく。
おかげで各地に内部事情がそれなりの正確さと、結構ないい加減さで出回る事になる。
同じネタを提供しても、受け取り方は人それぞれである。
真面目に取り組むものもあれば、勝手なでっちあげを付け加えて流布するものもいる。
旅芸人や劇団、吟遊詩人などならば、提供されたネタをもとに様々な演出を加えていく。
部分的に削除し、あるいは新たな要素を付け加え、演目として様々な形をとっていく。
おかげで様々な解釈があちこちに出回る事になった。
それがまた一部の人間の好奇心を刺激する。
情報の真偽を考えて頭を使ったり。
面白おかしいお話として楽しまれていった。
だが、そうしていっても、事の中心となる出来事だけは変わる事は無い。
貴族の子女が通う学校で起こった不祥事という部分は。
そこだけは、何がどれだけ変化しようとも、決して潰える事無く使われていった。
これが基本であるから当然ではあるだろう。
こうした努力のおかげか、この話題はそれなりの期間あちこちで口にされるようになっていった。
おかげでトモルは、どこがどのように動いているかという情報を得ていく事が出来た。
貴族社会における様々な繋がりと影響力が、ほんの少しだけ把握出来た。
それはそれで貴重な情報として活用していく事になる。




