157回目 この状況とこの手札で出来る事はなんだろう 11
村の子供達とももうすぐお別れである。
冬になればまた戻ってくるが、それまでは会えなくなる。
寂しいというわけではないが、定期的に接点がもてなくなるのはつらい。
トモルの周りに集まってきた者達は、基本的にトモルに好意的である。
それも大きい。
好意をよせてくれる相手はありがたいものだ。
それもこれも、タケジを叩きのめしたのが大きな影響を与えてる。
おかげで子供達は平穏を取り戻した。
彼らにとってトモルは英雄である。
そんなトモルがまたいなくなると聞いて、子供達も寂しそうではあった。
特にサエは見て分かるくらい意気消沈していく。
何がそんなに残念なのだろうと思うのだが、沈んでるのを放っておくのも可哀相ではあった。
なので、また冬に戻ってくるからとか色々言って立ちなおらせようとする。
そんなトモルを見て、周りはニヤニヤと笑っていたり、あと一押しが足りないなと嘆いたりしていた。
なお、周囲のそんな様子にトモルは気づいていない。
それよりも気になっていた事がある。
集まってくる子供達の中に行商人の娘であるエリカの姿が見えない事だ。
最近は村に常駐する事も多くなってきたので、こういった所に入ってきてると思っていた。
しかし、帰ってきてから何度も子供達と顔を見合わせてるのだが、一度も姿を見た事がない。
トモルがいない時にだけ来てるのかと思ったが、そうでもないようだ。
「エリカはいないの?」
「うーん」
「あんまり一緒にいないんだよね」
疑問への答えはこういったものばかりである。
確かに同年代ではあるのだが、それでも村の者ではない。
それが大きな理由になっていた。
子供同士と言えども、同郷の者とそうでない者とでは扱いに差が出てしまう。
これが完全に引っ越してきてるならともかく、今のところ行商人の娘という状況は変わってない。
村にいる時間が増えていても、基本的には余所者でしかない。
そういう子と一緒にいるのも、という思いは誰もが少しは持っている。
仲良くなっても、すぐにいなくなるだろうと。
だとすれば、それほど深く付き合う必要も無いと考えてしまうものだ。
頭で考えなくても、何とはなしにそういう風に思ってしまう。
その為、どうしても接点が少なくなってしまっていた。
「嫌いってわけじゃないけど」
「どうしてもね」
「いつもお店にいるみたいだし」
そういった声もあがってくる。
エリカが気に入ってるというわけではないが、かといって嫌ってるわけではない。
だが、接点が少ないのでどうしても疎遠になってしまうというのも大きいようだった。
普段は父親の手伝いをしてるらしく、子供達との接点がないのもある。
同じ村にいる子供でありながら、エリカがここにいないのは、こういった理由によるものだった。
「なるほどね」
状況を把握したトモルは少し考えた。
エリカをこのままにしておいて良いものかどうか。
もちろん、善意からではない。
行商人を抱え込むためにも、エリカが利用出来そうだからだ。




