155回目 この状況とこの手札で出来る事はなんだろう 9
残りの日々はダンジョンへの道作りで終わっていった。
多少は様々な方面に働きかけ、よりよい流れが出来るようにはしていった。
しかし、人が多くなり、その分だけ制御も難しくなっている。
自分の配下ならば指示を出せばある程度は思うとおりには動いてくれるだろう。
だが、ここに集まってる者達はそうではない。
手下も幾らか混じってるが、全部ではない。
それぞれが自分の考えや思いを抱いて動いている。
その全てを制御し誘導する事など出来るわけもない。
それでも望んだ方向へは動いている。
村の外れの冒険者が集まり、それに続いて商人も流れこんできている。
まだはっきりとした動きはないが、行商人もここに店を構え、いずれは職人なども呼び寄せるつもりだという。
そうなればこの村も今よりは賑やかになるだろう。
その一方で村人達の警戒心も跳ね上がる。
今だって冒険者達が何かしでかさないかと思っている。
彼等がいる事で発生する利益はあるが、いるからこそ危険性も考えてしまう。
軋轢や対立はどうしても発生するだろう。
こればかりはどうしようもない。
せめて村の外から下手に内側に入ってこないようにするしかない。
その為にも、足止めとなる場所が欲しかった。
(娯楽があればいいんだけど)
村の外れ、冒険者が屯してるあたり。
そこに娯楽があればとは思う。
そうすれば、憂さ晴らしで村の方に入ってくる事もないだろう。
褒められたものではないが、呑む・打つ・買うの三つは用意した方が良いのかもしれない。
もっとも、そういうのはどこからともなく流れてくるものではある。
冒険者がそこそこ定着していけば、それ目当ての商売も流れこんでくる。
(そういうのを管理しないとまずいだろうなあ)
冒険者よりもそちらの方が大きな問題になるかもしれなかった。
羽目を外しやすい遊びだからこそ、それらを催す場所は一箇所に定めたほうが良いかもしれない。
下手に村の中に入り込んだりしないように。
(まあ、父さんがやる事だ)
今のトモルに出来る事はない。
せいぜい、冒険者を手下にするのがせいぜいである。
更に手を拡げて、商人や職人なども手下に組み込んでいけば良いのかもしれないが。
さすがにそこまでやる程の余裕はない。
トモルがいない間にこれらの手綱を引ける者がいれば良いのだが、そんな人材はいない。
これから育てれば良いのだが、それには時間がかかる。
将来はともかく、現時点で実現できそうにない事だった。
(やっぱり父さんに頑張ってもらわないと)
ここは踏ん張ってもらいたいところである。




