151回目 この状況とこの手札で出来る事はなんだろう 5
唐突に増えた冒険者を見て驚いたのは村人だけではない。
彼等を相手にしてる行商人も同じである。
持ち込まれる核と核を持ち込む者達が増大し、彼も困惑した。
いきなりそれだけ持ってこられても、買い取るだけの金がない。
やむなく彼は、持ち込まれた核の買い取りを一旦停止した。
そして、すぐに町に向かい、核を換金していく。
そうして作った金をもって村に戻り、核の買い取りを再開した。
だが、そこで更に驚く事になる。
冒険者が更に増えていたのだ。
持ち込む核の量も。
町に出向いて村に戻ってくるまで、二日もかかってない。
にも拘らず、冒険者の人数は更に増大していた。
(こういう事だったのか?)
トモルが言っていた事を思い出す。
確かにトモルは冒険者が流れこんでくるかもというような事を言っていた。
しかし、それがこれほどまで早く、これほどまでに大きなものだとは思ってもいなかった。
実際にどれだけの人数がいるのか分からない。
感覚的に、今までの倍はいるように思えたが。
それだけを相手にしていても、かなり忙しい。
これが今後も続くとなると、かなり悩ましいものがある。
(人を増やさないとまずいか?)
今の状態ならまだ一人でどうにかなる。
だが、もし今後も増えるなら増員も考えねばならない。
(でも、どうやって?)
人を増やすというのは簡単なものではない。
雇うだけの金を稼がねばならない、というだけではない。
仕事が出来るようになるまで育てねばならないのだ。
人を管理する手間もかかる。
それらをこなす余裕は今の行商人にはない。
人手は必要だが、技術や経験のない者が増えても困るだけだ。
おそらく仕事どころではなくなるだろう。
将来はともかく、今は経験や能力のある人間が欲しかった。
だが、それがそう簡単に手に入るというわけもない。
(どうしたら……)
ありがたいほどの繁盛の中、行商人は解決しようのない問題を抱えていった。
そんな行商人を見てトモルは、「どうしたの」と声をかけた。
商売繁盛で大変だろうと思ったが、どうもそれだけではないように思えたのだ。
そんなトモルに行商人は、現状を伝えていく。
「それが、人手がなくてね」
「はあ」
「忙しいのはありがたいんだけど、それを捌く余裕がなくて」
「なるほど」
「だからといって、人を簡単に増やすのも難しいし」
言ってどうにかなるわけではないが、行商人はそんな事を口にしていった。
「大変なんですね」
「ええ。
ありがたい事なんですけどね」
そう言って行商人はため息を漏らした。
しかし、トモルにとってはたいした問題ではない。
「人がいれば大丈夫なんですか」
「まあ、何とかなると思いますよ。
でも、すぐにどうにかなるもんでもないですし。
出来る人なら、すぐにでも雇いたいところですが」
「そうですか」
それを聞いてトモルは、これもまた好機ととらえた。




