127回目 彼等がどう出るかを考えていく
(さて、どう出るかな)
自分の思ってる事を語っていったトモルは、冒険者達の反応を待つ。
トモルの行動を知って冒険者がどんな反応を見せるか。
それを知る事が、トモルが彼等を助けた理由の一つであった。
前回ははっきり言って失敗だった。
冒険者達との仲は決裂し、最後は喧嘩別れになった。
それはそれでしょうがないとは思うし、それはそれで良い結果であったのかもとも思う。
下手になれ合ったら、妥協や打算だらけの関係になる。
それよりは、すっぱりと切れた方が自分の為だったかもと。
手下にする事は出来なかったが、使えない人間を囲っておくよりはマシでもある。
何かする度に、一々面倒な話し合いをしたり衝突が起こるよりは良い。
だが、前回とは違うような状況で冒険者と接点を持ったらどうなるのか?
今回のような場合ではどんな反応を示すのか?
それをトモルは確かめたかった。
だから出入り口から外に出ようとしたところで中に戻ったのだ。
わざわざ冒険者の救出にもやってきた。
彼等がどんな反応を示すか知るために。
(これで上手くいくならいいんだけど)
前回失敗しただけに不安はある。
というか、今回は前回以上にまずい状況ではあると思う。
事前の説明もなくこの状況に巻き込んだのだから。
文句が出てもおかしくはない。
だが、それならそれで良かった。
こういった時に人間がどういう態度を取るのか知る事が出来る。
それは、知識や技術だけでは分からない事だ。
相手の気持ちや考えというのは。
人間の行動や思考の類型・定型、そういった知識だけでは計れない部分。
具体的な実例をトモルは求めていた。
今後、上手くやっていくためにも。
目の前の冒険者達は、その為の被験者と言えた。
見ると冒険者達は色々と考えこんでいるようであった。
崩壊を引き起こしたトモルへの怒りはある。
だが、それは悪い事とは言えないのも彼等も分かっている。
だからこそ、事前に教えてくれればとも思った。
そうすれば、多少は対応もとれただろうと。
だが、それもトモルの言葉でそうとも言えなくなった。
別の場所で、事前に伝えたら問題が発生したという。
だから話をもちかける事を省いたという。
冒険者からすればたまったものではない。
だが、その気持ちも分かってしまうくらいには、彼等は頭が働いたし共感も抱いた。
話の通じない輩を相手にすると面倒になるというのは彼等も経験していた。
だとすれば、一人で強行したのもむべなるかな、とも思うのだ。
納得するかどうかはともかく、それはそれで理解出来る事であった。
そんな迷いや悩みを抱きながらも移動はしていく。
やがて目の前にモンスターに襲われる同業者が見えてくる。
そんな彼等を救うために、トモルは駆けだして襲っているモンスターを撃退していく。
トモルのその姿を見て、ついていってる冒険者達は更に悩んでいく。
目の前の仮面の存在を、認めてよいものかどうか。
やらかした事を許してよいのかどうか。
答えを出すのにまだ時間がかかりそうだった。




