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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第4章

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109回目 双方の立場がもたらす決裂 2

「いつからダンジョンはお前らのものになった?」

 トモルの声が冒険者を圧倒する。

 怒鳴ってるわけでもないのに。

「ダンジョンを壊すな?

 面白いな、モンスターをはびこらせたいのか」

 更に声が重なる。



「ダンジョンを残してモンスターを吐き出させるつもりか?

 何考えてんだテメエら」

 静かな、怒りをたたえた声。

 そして圧倒的な圧力。

 それが冒険者に襲いかかる。

 誰も何も言えなくなっていた。



「そんな連中の事なんざ、どうでもいい」

 聞いてる冒険者は飲まれていく。

 トモルの静かな圧力に。

 言ってる事の正しさとか、そういうものはどうでもいい。

 そもそも、トモルの声などもう聞こえてない。



 ただ恐怖に震えて、トモルが過ぎ去っていくのを待っていた。

 ここに人間の本性があらわれている。



 人間とは理や道に従うものではない。

 まず、己のしたいことを基準に物事を優先する。

 そして、それから利害を考える。

 まずは生死に関わる部分から。

 そして、よりよく生きるために利益を。



 更に、周囲の人間や集団、社会で有利になるかどうか。

 物事の善し悪しをもとに考えるのはその後である。

 実際、怒鳴り声を上げた連中がそうだ。

 トモルの言い分も状況も考えてない。

 ただ自分の都合を考える。

 それを通す為に理屈をつけていた。



 そんな彼等は、圧倒的なトモルの存在感を前に震えた。

 恐怖で何も言えなくなった。

 己の生命の危機を感じた。

 言ってる事など聞いてない。

 その理非など考えてもいない。

 ただ、命に関わる危機が目の前にある。

 そのことだけに心を奪われていた。



 それは妥協や打算の一種である。

 下手に何か言うと命に関わる。

 だから何も言わない、言えない。

 ただ恐ろしい存在が通りすぎてくれるのを待つ。

 その為の沈黙だ。



 それはトモルも理解していた。

 だから、言っても意味がないとは思った。

 それでも言うだけ言っておこうとも思った。

 無駄だとしても、言わねば何にもならない。



「勝手にダンジョンをテメエらのもんにしてるんじゃねえ。

 テメエらのもんでもない場所で俺が何しようと、俺の勝手だ」

 その声は決して大きくはない。

 目の前にいる連中に届いてもいない。

 だけど、威圧するには十分だった。



 言ってる内容はこの際どうでもいい。

 相手の理解力も期待してない。

 どうせ何を言っても通じないとは思った。

 そんな知能、期待してもいない。



 ただ、これが威圧になり、相手が黙ればそれで良い。

 それくらいの事しか期待してない。

 実際、言われてる者達はがトモルの言葉を理解してない。

 ただ、ひたすらに自分の都合を優先している。

 そんな彼等が何か言うとすれば、「何言ってんだ」となる。



 彼等には彼等の都合があり、それをもとに行動している。

 それに反してるものなど、考慮もしない。

 例え、見て聞いて触れて感じていても、決して受け入れる事は無い。

 それが怒声をあげた冒険者達である。

 聞く気がないというか、聞く能力がそもそもない。

 そう考えた方が妥当だ。



 そんな冒険者達にトモルは何も期待してない。

 だから、話し合いだと望んでない。

 ただ、自分にひれ伏して従えばいい。

 それだけしか求めなくなった。

 代表格の冒険者のように、話の分かる者はともかくとして。



「で、何が言いたいんだ?」

 トモルの声は続く。

「お前らの都合は分かった。

 それで何が言いたいんだ?」

 静かに声は続く。



 応えられる者はいない。

 怖くて口を開けない。

 そこにトモルは更に言葉をかけていく。



「テメエらの都合なんか知るか。

 俺はダンジョンを破壊する。

 破壊して、この辺りの安全を確保する。

 それがイヤだってんなら、お前らもモンスターとして殺す」

 その言葉だけは冒険者達も理解出来た。

 命に関わる事だからだ。



「ダンジョンを守ろうとしてんだ。

 そんなのモンスターと同じだ。

 生かしておく理由はない」

 その声に、冒険者は震えが止まらなくなる。

 歯が鳴り始めた。

「それがイヤなら、失職でも飢え死にでも何でもしろ。

 さっさと死ね」

 そう言って話を終える。



 トモルはダンジョンに向かう。

 冒険者の事など見向きもしない。

 攻撃してきたら反撃するつもりでいたが。

 そういった動きもなかった。

 なので、そのままダンジョンに入っていった。



 もう冒険者がどうなろうと知った事ではなかった。

 話が通じない者と付き合ってるほど暇でもない。

 出来るなら手駒にしたいが、それが出来ないならもう用はない。

 ただ、邪魔なだけだ。



 そんな冒険者を見限って、トモルはダンジョンの奥に向かう。

 中枢を破壊するために。

 もう冒険者の路銀などを考えてやる必要も無い。

 さっさとこのダンジョンを破壊して、次のダンジョンに取りかかる事にした。



「さっさとやるか」

 今更だが、下手に冒険者に気をつかうんじゃなかったと思う。

 そんな事せずに、さっさとダンジョンを潰してしまえば良かった。

 そうすれば、イヤでも冒険者達は動き出すのだから。

「失敗したな」

 そう反省をした。

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