69.ドレス・コードはフォーマルに
「それにしても、マゴリアさんってばいつの間に王都でも指折りの金満家に……」
「前はそうじゃなかったの? あ、背中のボタン閉めたげる」
ブライアが慣れないフォーマルなドレスに身を包み、リーピアが手伝う。
僕らはともかく、女性陣は何かと落ち着かないようだ。
「うえ~、似合わないっスよこんなん」
「そうか? お前、大人しくしてると結構、お淑やかなお嬢様って感じだが」
フリッターが自分の格好を姿見で映して赤くなっているのを、ガルデが無自覚殺し文句で余計に照れさせている。
僕は苦笑する。
「やれやれ。皆、準備出来たら行くよ!」
僕らは、魔王討伐記念式典に招かれ、その事前準備としてドレス・コードを式典用にするという、ある意味これまでで一番の難易度であるクエストに臨んでいた。
記念式典に参加するのだから、いつもの冒険者っぽいラフな格好ではいけない。
とはいえ、あまりにも仰々しい、冒険者感のない服装では『何かあった時』にも対応しにくい。
という事で、僕らは冒険者ギルドのお姉さんに色々相談して、ドレス・タキシード・その他のコーディネートを頼んだ訳だ。
お姉さんは国王からの依頼、という事もあって、その衣装レンタル代は当然経費で落としますよ、と豪気な所を見せてくれた。
ま、僕らも『お得意様』だしね。
「しっかし、確かにこの格好はちょっと慣れないね」
僕はタキシード風味……だけど、戦闘服とも言えなくもない程度に戦うのに無理のない格好を見回して言う。
装飾品の豪華さが、なんだか落ち着かない。
「私もちょっと、このドレスはふんわりしすぎてて……ズボンが良かったなぁ」
リーピアも僕に同意し、普段は着ない可憐なドレスに戸惑っている。
「あはは、でもよく似合うよ。そういう可愛い格好のリーピアも、僕は好きだよ」
彼女の恰好を素直に褒めると、リーピアは赤くなって照れる。
「ありがとう。スレイドのそういう言葉も、最近は慣れてきたわ。照れるけど」
僕らの様子を見てブライアはニコニコする。
「ふふ、スレイドさんもリーピアさんも、すっかり夫婦みたいになって」
するとフリッターがいつものように茶化した。
「ヒューヒュー! お熱いお熱い!」
クッソうざいその煽りを見てガルデは嘆息する。
「お前な」
言いつつ彼も僕らの惚気っぷりには、苦笑を禁じ得ないようだ。
「よし、準備できたね」
僕はいつもと違って全然迅速じゃない行動で、最後にボタンを留めて貰ったフリッターを見て、言った。
「バッチリ!」
「ああ」
「いつでも行けるっス!」
「では、行きましょうか!」
そして、魔王討伐記念式典への、僕らの参加は始まる。
(つづく)
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