67.魔王討伐の真実
普段前書き書かないんですけどちょっと宣伝です。
今回は『まちがいだらけのプリンセス』や『妄想★マテリアライゼーション』とのクロスオーバーネタが多めです。そちらも気になった方は是非読んでみて下さいね。
https://book1.adouzi.eu.org/n6777gl/ 『まちがいだらけのプリンセス』
https://book1.adouzi.eu.org/n8271gl/ 『妄想★マテリアライゼーション』
「魔王グレイファーが討伐された記念の式典を」
「王都で開催する?」
「はい、そうなんです」
僕らはいつものように冒険者ギルドの受付のお姉さんから話を伺っていた。
リーピアも僕も、困惑しつつその情報の確度に心から『やった!』と感じていた。
魔王討伐が成された、というのは、実はもう数ヶ月前から流れていた噂だ。
しかし、王都で記念式典が開催される、という事は、魔王が討伐されたという情報の信憑性を俄然高めた。
「本当に魔王、倒されたんですね……」
「だな。王都で記念式典となれば、間違いあるまい」
「でも何で数ヶ月も情報伏せてたんスかね? やっぱ混乱の元になるから?」
ブライア、ガルデ、フリッターもそれぞれの思いを言い募る。
僕はフリッターの疑問と同じことを考えていた。
「そうだよね。すぐにでも発表すれば国民だって、全世界の人々だって大喜びなのに」
するとリーピアが口を挟む。
「魔王って人類が団結するための旗印になってる所あるでしょ。戦後の利権とかでモメてたんじゃない?」
僕は素直に、リーピアのその視点に驚く。
そんな政治的な視点を彼女が持ち合わせると思っていなかったからだ。
「なるほど。各国の思惑か」
ガルデも頷く。
「つまんない話ですねぇ……」
「ホントホント。人間同士で争い合って何になるんスか」
ブライアは露骨に嫌な顔をする。
フリッターも同意する。
「しょうがないわよ。人間には根本的に欲望があるんだし。私達だって、国の代表だったらどう考えるか分かったもんじゃないわ」
政に携わる者のような事を言うリーピアに、僕はもしかして彼女の家族の誰かがそうだったのかな、と思い至る。
そう考えると、彼女が5歳から冒険の旅に出ていたという話も、やや腑に落ちるものがある。
今、ここで深掘りする話ではないが……。
と、僕達が推測を並べ立てていると、お姉さんが補足した。
「そういう側面もあるんでしょうけれど、噂によると、勇者トルス様に同行していた聖女リエル様が、魔王の代わりに『現在暴れている野良魔族や魔物』を平定する役目を担われた、とか。しかも、聖女リエル様って、あの聖都アストリアのお姫様だっていう噂ですよ」
その情報に一番驚愕したのは、リーピアだった。
「えぇっ!? アストリアのお姫様、生きてたの!? し、しかもそれが、魔王討伐を為した聖女様!? で、出来すぎなくらいの復讐劇ね……」
リーピアの出身国・西大陸の小国セスタは、聖都アストリアと深い交流のあった、敬虔な聖職者が多い国だったらしい。
故に、そんな彼女にとってアストリアのお姫様の貴種流離譚は、かなり劇的なドラマと映ったらしい。
「確かに、凄いですね。魔王に滅ぼされた国のお姫様が、魔王を討伐するパーティの一員だなんて……って言っても、勇者様と聖女様の二人組でしたっけ?」
ブライアも驚いていた。
「たった二人で魔王討伐を成すとはな。やはり勇者というのは規格外の強さなのだな」
ガルデは納得しつつ畏怖の念を抱いているようだった。
「でも、そのお姫様が魔物を平定するからって、なんで情報隠すんスか? 聖女のなんか凄い聖なるパワーとかで、魔物を浄化していくとかそんな話なら、全然いいニュースじゃないっスか」
フリッターが尤もな事を言う。
すると、お姉さんは声を潜めて言った。
「それが、ですね……これはごくごく一部の冒険者さんにしか明かしていないんですけれど」
と、一段と顔を険しくして、羊皮紙にサラサラと書いて、僕らに文面で見せた。
『聖女リエル様の正体は、魔族とのハーフだったとか。しかも、次期魔王として、魔界・人間界の魔族たちを平定する、という噂が流れています。これも、意図的なのかも知れませんが、ショックが大きい情報でしょう。勇者様がたの思惑は分かりませんが、その情報をいかにして穏便に人々の間に膾炙させるかが、数ヶ月も時間を要したポイントだと思われます』
僕らは驚愕の事実を知り、流石に言葉を失った。
聖女が魔族とのハーフだった。
その聖女が次期魔王になる。
「そりゃあ、明かせないよね」
僕は開いた口が塞がらない。
しかし、どうして魔族とのハーフであるお姫様が人間側に味方してくれたんだろう。
色々謎だが、彼女らには彼女らの事情があるんだろうな。
もし機会があれば、話を聞きたいところだ。
「生まれてきて、一番驚いたかも……」
聖職者の国セスタ出身のリーピアにとっては、天地がひっくり返るような出来事だろう。
聖なる国、聖都アストリアの姫君が、よりにもよって忌むべき魔族との合いの子だなんて。
「世の中、複雑怪奇な事だらけっスね」
「全くだな」
「いやあ……でも、なんだかロマンティックですよね。勇者様に同行していたのが、敵対するはずの魔族とのハーフであるお姫様、だなんて。吟遊詩人の間で語り継がれそう」
フリッターとガルデが話に驚くばかりなのに対して、ブライアはそんな事を言う。
「確かにそうだね。脚色して、吟遊詩人の間での人気演目になること間違いなしだよ」
僕は笑った。
そして、この話と『討伐式典』の話がどう繋がるのかは、この後にまたお姉さんから話を聞いて、僕らはみたび驚く事になった。
(つづく)
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