65.ガルデの女運
「超速強化の丁度いい実験台ってないかしら?」
リーピアがそんな風に言ってきた。
僕は考える。
「うーん、やっぱ素早すぎる相手だよね。いつぞやの『岩飛び兎』みたいな」
そういえば、フリッターに出会ったのも『岩飛び兎』の岩山だった。
それを聞いてガルデも感慨深そうに言った。
「そうだな。危険もないし、今の俺達でも連中を捕まえるのは至難の業だ。新能力を試すにはうってつけだろう」
フリッターも同意する。
「じゃ、久々に行くっスか。あの岩山」
この中で唯一そのエピソードを直接知らないブライアは、興味深そうに言う。
「それって、確かスレイドさんたちとフリッターさんが会った場所ですよね?」
僕は頷く。
「そうだよ。フリッターとの出会いは、思えば僕たちの商売敵、みたいな感じだったよね」
僕が思い出しながら言う。
「そっスね。ガルデがアタシをまんまと口車に乗せて、仲間に引き入れた訳っスけど」
やや皮肉な口調でジトッとガルデを見て、フリッターが言った。
「口車とは、人聞きが悪いな。俺は単に、お前の能力を買っただけさ」
ガルデはうそぶくが、まあ、正直アレは僕らの騙し討ちみたいなトコがあった。
僕もリーピアも、その点についてはやや、後ろめたさはある。
「怨んじゃいないし、『無敵催眠』の恩恵に存分に与れている身で言うのもなんスけど、ガルデって意外と、スレイドに負けず劣らず人たらしなトコあるっスよね」
フリッターはガルデをからかうように言う。
「俺がスレイドを勧誘したのは、そういう感じじゃないけどな……」
そういえば、僕とガルデの出会いって、僕がガルデ達のギルドに参加したいって言ったとかじゃなく、パライヴァの時と同じように能力適性を考えての事だっけ。
「アズビーが誘惑の魔法を得意としていたから、正直パライヴァの件もあって最初から嫌な予感はちょっとあったんだけど」
僕はそんな風に、珍しく過去の事を振り返った。
「まぁ、アズビーはどちらかというとお前というか、誰にも興味がないタイプの女だったがな……自分の女としての魅力を、武器にする事だけしか考えていないタイプというか」
ガルデはかつてのギルマスとして、仲間の女魔道士の人となりを分析する。
「スレイドだけじゃなく、ガルデも大概、女運に恵まれないっスねぇ」
からかうようにフリッターは言うが、ガルデは否定する。
「そうでもないさ。お前らに出会えたのは、良い出会いだと思ってる」
何でもないような一言だったが、それはフリッターを赤面させるには十分で、僕もリーピアもブライアも『うわぁ』と顔をニヤけさせるにも十分すぎた。
「そっ……そうっスか……」
ガルデは気付いていないようだが、フリッターはその言葉を最後に何も言わず、へへ、と笑っていた。
「さて、じゃあ行こうか?」
僕はその場を取り仕切り、『岩飛び兎』のクエストに向かうことにした。
(つづく)
お久しぶりです。ノクターンばっかり書いてて、最近こっちの連載を放置してました。
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