62.パライヴァの本音
当たり前だがパライヴァ達は冒険者ギルドから重大な規約違反をしかけた件について、厳重注意を受けた。
僕らは流石に彼女らのしでかした事を黙っている訳にも行かないので、キッチリ本人らを連行して、罪を告白させたのだ。
「……やれやれでしたね」
またも男女関係のもつれでこうなったのか、みたいな顔をしてブライアが肩を落としていた。
「予想外だったよ。あの瞬間まで、パライヴァが僕に気があるなんて思う訳ないじゃない?」
僕だって、まさかのまさかだった。
パライヴァがあんなに威圧的に、僕に対して上から目線で接してきてたのが、彼女の歪んだ愛情だったなんて。
てっきり『籍を置く気はないか』だの『伴侶になれ』ってのは、僕を屈服させたい一心からの修辞だと思っていたのに……ま、まさか、本気の告白だったなんて。
「モテモテっスね、スレイドは」
いつものからかい口調で言うフリッター。
勘弁してよ、もう。
あんな怖いお嫁さん、欲しくない。
「やっぱり私のカン、当たってたんだ。妙にこう、本気の色目使ってくんなー、あの女、って思ってたのよ」
リーピアは知ってたわ、みたいな顔をする。
彼女の嫉妬、確かに『女のカン』としては超一流だったね。
僕は彼女のそういう意味不明な嫉妬に対して、やや疎ましく思っていたが……今回ばかりは、リーピアの慧眼に脱帽せざるを得なかった。
「まったく、スレイドの女難には恐れ入る。俺は、ごめんだな」
ガルデも珍しく揶揄するように言う。
「ホント、困ったもんだよ……」
僕は今回の件で思い知った。
もう、女性だけのギルドとの共闘なんて、二度とごめんだ、と。
リーピアからは要らぬ嫉妬を招くし、相手がガチならなお困る。
どうも、雰囲気的に『取り巻き三人』も僕に気があった風だったし。
ただの女色三人組じゃなかったんだね。
……ていうか、その気がある状態で僕に裸見せてくるって、ちょっと一足飛び過ぎない?
リーピアからの再三の肉体的誘惑にも割と辟易してた所があったけど、耐性のない1年前の僕はもっとウブだったから、女性の裸を見ただけでもう何も考えられなくて、ただジッと目を瞑って耐えてたんだけどね。
「はぁ……ハーレムなんて、ロクなもんじゃないよ」
僕がそう呟くと、フリッターが死ぬほど笑っていた。
「ぶっ、あっ、あっはっはっはっはっは!! そ、そうっスね!! スレイドが言うと、めちゃくちゃ納得するっスよ、それ!!!」
何が可笑しいんだか。
ブライアまでくすくす笑ってるし。
「ふふ、スレイドさんはやっぱり、リーピアさん一筋で硬派を貫くのが向いていますよ。ハーレム向きの性格、してませんもんね」
今回は別に余計な一言でもなかったかな、と思う。
本当に、その通りだね。
ガルデは同情したような目線で僕を見ていた。
「何さ」
「いや……本当に、色恋沙汰は、面倒、だな」
その言葉にはフリッターとのあれこれも含まれているんだろうか。
ガルデの心中は、少し計り知れない所があった。
そしてリーピアは。
「ま、色々訊きたい事はあるけど、ひとまずは……お疲れ様!」
ちゅ、と軽くほっぺにキスしてくる。
その様子を見てフリッターがいつものようにヒューヒューとウザい煽りをし、
ブライアはひゃっ、急に……と顔を覆って、
ガルデは微笑ましそうな表情で僕らを見ていた。
「も、もう。リーピア、皆が見てる前での不意打ちは駄目だよ」
僕は困ったように照れ、でも、ちゃんとした恋人からのこういうアプローチはやっぱり嬉しいな、と思い、今回の女難の件を心から洗い流してくれたリーピアには感謝するのだった。
(つづく)
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