19.リーピアのヤキモチ
普段前書き書かないんですけどちょっと宣伝です。
今回は『まちがいだらけのプリンセス』や『妄想★マテリアライゼーション』とのクロスオーバーネタが多めです。そちらも気になった方は是非読んでみて下さいね。
https://book1.adouzi.eu.org/n6777gl/ 『まちがいだらけのプリンセス』
https://book1.adouzi.eu.org/n8271gl/ 『妄想★マテリアライゼーション』
「リクラスタに帰る前に、王都寄って行きましょうよ」
ドラゴンの道を引き返し、ひと段落したリーピアが提案した。
「そうだね。帰りは前ほど魔族はいなかったけど、疲れちゃったし」
僕もすぐさまその提案に乗った。
「収穫祭の時期は過ぎているが、いつも王都は賑わってはいるしな」
「お、良いっスね。こっち来るときは直行だったから寄りませんでしたし」
「王都に訪れるのも久しぶりですわ」
ガルデ、フリッター、シースさんもそれぞれの思いを抱えて、僕たち一向は王都ベルロンドへ立ち寄る事にした。
◆◆◆
「いやぁ~~~っ、さっすが王都っスね! 相変わらず、人の賑わいっぷりが違うっス!」
大きな声で感激するフリッター。
「私も随分久々。スレイドやガルデも来たことあるわよね?」
「僕は……前のギルドに居た時じゃあなかったかな? 1年位前のはずだし」
「俺は王都に程近いリクラスタに住んでいるから、王都とは目と鼻の先でしょっちゅう来ていたな。近頃はそうでもなかったが」
リーピアの質問に僕らはそれぞれ答える。
僕はシースさんに水を向けてみた。
「シースさんは? いつここへ来られたんですか?」
するとシースさんは答えた。
「ええと……まだわたくしが北大陸から旅立って3年もしないうちだった気がしますから……5年は前ですわね」
その経歴から何となくシースさんの年齢が伺えるように思えた。
一人旅が長いようだし、やっぱり20代後半くらいかな?
「あの頃はまだ、聖都アストリアも健在でしたし……今ほど世が荒れてはいませんでしたわね」
そう。聖都と呼ばれるアストリア王国が滅ぼされたのは、おおよそ5年前の事。
魔族の侵攻は未だに各地に火種をばら撒いているが、特に世界中で大騒ぎになったのは『教会』の大本山がある聖都アストリアの滅亡によるところが大きい。
これにより信仰と人心は乱れ、特に聖職者を生業とするものは大いに悲しんだという。
リーピアの出身国である『セスタ』も、アストリアと交流の盛んな国だったらしく、その悲しみようは酷いものだったとか。
僕は敬虔な信仰を持つ人間ではないが、その話を聞いて『一刻も早く魔王が勇者に倒され、この世界から滅びますように』と祈らずにはいられなかった。
「あらいやだ、湿っぽくなってしまいましたね。大丈夫、勇者トルス様と聖女リエル様が、きっと魔王グレイファーを打ち倒してくれますわ」
直接勇者と聖女に出会ったというシースさんはそんな風に言って憚らない。
よほどその2人が強そうだったのだろうな。
僕はそう尋ねてみたが、シースさんはいいえ、強そうかどうかは分かりません、と答える。
「ただ……あのお二人からは、何故かとても強い絆と、そして絶対に負けないという強い意志を感じられた……神のお導きがわたくしを彼らの元に遣わし、彼らは魔界へと旅立った……何と言いますか、運命的なものを感じたのですわ」
「運命……か」
僕は運命をそこまで信じたことはなかったけれど。
リーピアに出会って『無敵催眠』の能力に目覚めた事、これまで仲間に出会えたことは、運命の導きというものを信じてみようかと思えるに値する、十分な出来事だったと思う。
もしかしたら、この世には本当に『神様』って奴がいるのかもしれないね。
◆◆◆
「じゃあ、リクラスタまで帰りましょうか!」
「え~っ、もう少し王都を楽しみませんか?」
「もう、フリッターったら。さっさと冒険者ギルドに報告しなくちゃ」
「ああ、それからまた王都には来れば良いさ。どうせすぐ近くだ」
僕らは王都を後にする。物資の補給や酒場での軽い休憩を挟み、ある程度疲れを癒したところで、目と鼻の先のリクラスタへ帰る事になった。
「では、わたくしはこの辺りでお別れですわね」
「あれ、シースさんはこれからどうするの?」
僕は名残惜しくなり、つい引き留めるような口調になってしまう。
何故かリーピアがジトッと僕を見ているが、気にしない。
「特に急ぎというわけではありませんが……ともあれ、魔界経由で中央大陸に来る前にいた北大陸に、一旦戻ろうかと思いますわ」
そういえば、シースさんは北大陸の不思議な魔法陣から魔界を通じて、中央大陸まで飛んできちゃったのだとか。なので、本来ならシースさんが巡礼の旅を続けていた北大陸へ戻ろうというのも自然な話だった。
「そっか、短い間だったけど、楽しかったよ。またどこかで!」
「ええ、是非またお会いできることを楽しみにしておりますわ!」
シースさんはそう言うと、王都から港町のほうへと歩いていく。
「……むっふっふ、スレイドさんってば、ああいう大人のタイプの女性が好みなんスかね?」
ややあってフリッターがからかい口調で言ってきた。
「いや、別にそんな訳じゃ……何がおかしいのさ」
「いやぁ、ホラ。リーピアがさっきからず~っとニラんでまスからねぇ。怖い怖い」
「ちょっと、フリッター! 聴こえてるわよ!!」
「やれやれ……おい、そろそろ行くぞ」
ガルデがそんな僕たちの様子を見て呆れたように言う。
「なんスかぁ、ガルデも混ざりましょうよぉ」
フリッターはガルデに絡むが、無視された。
「ちぇっ、ガルデってばホント、スレイド以上にカタブツなんスから」
ぶつぶつと文句を言いながらもついてくるフリッター。
リーピアはというと、確かに不機嫌そうだった。
「リーピア? 本当にどうしたのさ」
「何でもありませんけど? 私が何か気にしてるとでも!?」
露骨に気にしてるな、と思いながらも僕は藪蛇になるのを避けて押し黙る。
リーピアはどうも、僕に対して多少の好意があるみたいだけど、それって本当にそういう関係に発展するような感情なのかなぁ……。
僕は不思議に思う。普段は全然そういう事言わないし、からかってくるばっかりで別に良い雰囲気になったりもしない。
でも、僕が他に気になる女性がいるみたいなシチュエーションになると(実際に気があるとはひとっことも言っていないけど)、こうなっちゃうんだから、複雑だなぁ。
僕はそんな風に、リーピアの気持ちの複雑さを推し量りつつリクラスタへと帰るのだった。
(つづく)
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