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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二弾:ドアマット悪役令嬢は断罪を切望する~フラグ回避に奔走したら、とんでもない事態になりました~

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エピローグ

 令嬢達から特に人気なのは、サー・ハロルド!

 彼は他の護衛騎士とは違い、兄と同じ、銀髪にアメシストのような瞳なのだ。しかも長い銀髪は、サラサラ。もう令嬢達は、ハロルドが答えようが答えまいが関係なく、何やら熱心に話しかけている。


 これが自国の令嬢だったら、もしかするとビシッと「任務中です。申し訳ない」と一言告げたかもしれない。でも今、ハロルドを取り囲むのは、これから婚姻関係で結ばれるかもしれない、ローゼンクランチ王国の令嬢達なのだ。


 冷たくあしらうこともできず、かつ兄はというと……なんだか戸惑うハロルドを見て、少し楽しんでいるような? どうやら兄は、茶目っ気がかなりあるようだ。


「皇女様、今宵は星があまり見えない代わりに、月がとても美しく見えているそうですよ。まだ初秋ですが冷えるといけないので、少しだけ、テラスに出てみますか?」


 この提案に応じると、ヴィクターは自身の近衛騎士に声をかける。


 すると近衛騎士は、バニラ色の柔らかそうな触り心地のショールを、私に渡してくれた。


「殿下、わざわざご用意いただいていたのですか……!」

「実はギフトとして贈るつもりだったのです。丁度良かったですよ。良かったらそのままお持ち帰りください」

「ありがとうございます」


 こういうさりげないヴィクターの気遣いの積み重ねに、彼への好感度が増していた。渡されたショールを羽織り、ヴィクターのエスコートでテラスに出ると、夜空には大きな月の姿が見えている。


 月がとても近く感じた。クレーターまで肉眼で見えるなんて、すごいわ……。


「皇女様は……間もなく帰国ですか」


 その言葉にドキッとして、ヴィクターの方を見る。彼の視線は目の前に広がる庭園に向けられているが、でもその瞳は夜の花々を見てはいない。


「そうですね……。継母達の裁判も終わりました。本格的な冬になる前に、万年雪のある山を越えた方がいいと、兄は言っていましたので、間もなくかと」


「なるほど。確かにそうなると、そろそろですね……」


 あまりにも寂しそうな横顔にたまりなくなり、私は決意した。

 言うなら、今だわ、と。


「殿下」

「はい」


 月明かりを受け、キラキラと輝くヴィクターが私を見た。

 髪や体のラインは月光を受け、煌めいているのに、その瞳は暗く沈んでいる。

 悲しい気持ちをこらえ、笑顔になろうとしている彼に、自然と胸がキュンとしてしまう。

 大丈夫、今から、心からの笑顔になれるわ、と思いながら、口を開く。


「ここ数か月、王都に滞在し、殿下と一緒に過ごした時間。それはまさに夢のようで、とても楽しいものでしたよ。ここ数年間、私は暗い地の底を這うような日々を送っていました。そのせいで忘れていた笑顔。それを取り戻す時間を、殿下のおかげで持てたと思います」


 私の言葉を聞いたヴィクターは、ハッとした表情になり、そっと私の手を取る。まるで私の辛い気持ちを、その手を通じて受け止めてくれるような、取り除きたいと思っているような、そんな様子に思えた。


「……ただ、まだ足りません」

「えっ」

「私は……もっと殿下と一緒にいたいです。これからも、この先も。ずっと、ずーっと。殿下のおそばにいたいです」

「皇女様、それは……」


 ヴィクターの表情は先ほどからは一転、その碧い瞳がキラキラと煌めいている。


「私も殿下と同じ気持ちです」

「それはつまり……わたしが皇女様を好きなように」

「私も殿下のことをお慕いしています」

「……!」


 泣きそうで、でも嬉しい。複雑な表情のヴィクターが、静かに私を抱き寄せた。



 乙女ゲームの悪役令嬢に転生し、その事実に気づき、早い段階から断罪回避に向け、動き出した。しかしゲームでは明かされていなかった子供時代の悪役令嬢は、かなり過酷。赤ん坊の時点で誘拐され、娼館に売られそうになったり、闇人身売買ブローカーにさらわれたり、継母とその娘に虐待されたり……。


 まさにドアマット悪役令嬢となってしまい、それならまだ断罪される悪役令嬢になりたい……と願う事態になった。


 そこからのまさかの大逆転で、兄とゲームに登場するヒロインの攻略対象であるヴィクターに助けられ、ウィンザーフィールド帝国という大国の皇女であるという出生の秘密も明らかになる。


 ヒロインは既に攻略対象の一人とハッピーエンド。


 ここから先は、ゲームでは描かれない世界を生きて行くことになった。


 ドアマット悪役令嬢だった私は、その後どうなったのか。


 それは素敵な婚約者ができ、愛する人と共に、懐かしい故郷へと帰国した。そこで両親と再会し、何日も何日もかけ、話をした。そして――。


「本日のウェディングドレスも、とても素敵ですよ、皇女様! ローゼンクランチ王国で着るウェディングドレスは、大人っぽいですよね。ですが今日のドレスはフリルも満点。ふんわりとしたプリンセスラインで、ベールも長く、本当に可愛らしいですわ!」


 侍女の言葉に姿見に映る自分を見て、笑みがこぼれる。

 これは悪役令嬢が着るドレスではなく、まさにヒロインが着るようなドレスよね。

 でも、もうヒロインも悪役令嬢も関係ない。

 今日は一人の皇女として、愛する人と結ばれるのだから!


 慣例に習い、ウェディングドレスも、ウェディングドレスを着た姿も。まだヴィクターには見せていない。ファーストミートで私を見たら、ヴィクターはどんな反応をしてくるかしら?


「イリシーヤ、大聖堂までのエスコートは、わたしだ。ヴァージンロードは父上だけどね。さあ、行こうか」


 モーニングコートをビシッと着こなした兄に声をかけられた私は、笑顔でドレッサースツールから立ち上がった。


~ fin. ~

お読みいただき、ありがとうございます!

ドン底からのハッピーエンドでした☆彡

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本作の評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


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