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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第8話 誕生日はケチャップ色
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7時間目 いつも隣に私のアバター(4)

「変態とは失礼だなあ。私は変態じゃないよ」


 こくりとみっちゃんの会話を聞いていたドッペルゲンガーはそう言うと、みっちゃんと瓜二つのその顔をしょんぼりさせた。

 流石は見た目が8歳になったばかりのみっちゃんと同じ顔だけはある。

 しょんぼりとしたその顔からは哀愁あいしゅうが漂い、常人であれば戸惑ってしまう程のもの。

 しかし、こくりには通用しない。


 こくりはしょんぼりした顔の偽みっちゃんに向かって、燐火りんかの炎を直ぐに放つ。

 だけど、残念な事にそれは届かなかった。

 何故ならば、放った直後にみっちゃんママが咄嗟に庇ったからだ。


「きゃああって、あら? 燃えない……あ。それより美都子みつこ、ケガは無い?」


「うん。無いよ、ママ」


「……ママ?」


「お母さん騙されないで! それはわたしじゃないよ!」


「そ、そうね。でも……」


 みっちゃんは必死に教えるけど、みっちゃんママとしては「はい。そうですか」とはいかない。

 例え偽物だとしても、例え「お母さん」ではなくて「ママ」と呼んできたとしても、見た目は可愛い愛娘なのだ。

 黙って見過ごすなんて、絶対に出来ないだろう。


 ただ、この状況はこくり的には非情に不味かった。

 偽みっちゃんを退治したくても、みっちゃんママやカナブンちゃんにも見えてしまえているから、どうにもやりにくい。

 どれだけ倒そうとしても、今みたいに護られてしまえば倒せないのだ。


「こうなったら奥の手を使います」


 こくりは相変わらずの眠気眼な無表情をそのままに、まるでこの時を待っていたかのように、目をシイタケに変えて十字を光らせる。

 そして、全身から燐火の炎を発生させて、ゆっくりと偽みっちゃんに近づいていく。


「変態みっちゃん、フードファイトしましょう」


「フードファイト……っ!?」


「待って!? こくりちゃん! その呼び方は変えよう!? それだと私まで変態っぽく聞こえちゃうよ!」


 こくりの申し出に、偽みっちゃんが驚き、本物みっちゃんが背後で困惑して叫ぶ。

 しかし、こくりの燐火の炎は灯っていて、既に戦いは始まっているのだ。

 みっちゃんの訴えは、こくりの耳には届かない。


「一時間の制限時間内に、いっぱいご飯を食べた方の勝ちです。こくりが勝ったら、大人しく更衣室に帰って下さい」


「こくりちゃん、流石にそれで更衣室に戻るわけ――」


「いいよ、こくりちゃん」


「――いいの!?」


 まさかの返答に驚くみっちゃん。

 しかし、それだけでは終わらない。


「私が勝ったら、一週間その尻尾をモフモフするよ! 先月おもちを食べすぎて太った私の食いっぷりを見せてあげる!」


「ちょっとおお! なんでそんなこと知ってるの!? 誰にも喋ってないのに! しかもばらさないで!」


 やはりドッペルゲンガーは恐ろしい妖だ。

 その猛威はフードファイトが始まる前から発揮して、みっちゃんの内緒がばらされてしまった。


 まだ8歳で幼いとは言え、みっちゃんもやっぱり女の子だ。

 気にしていた体重の話を持ち出され、顔を真っ赤にして既に満身創痍である。


「な、何が何だか分からないけど、美都子さん哀れですわね」


「美都子はまだ子供なんだから、体重なんて気にしなくていいのよ」


「ダイヤさんとお母さんは何も言わないで!」


 みっちゃん達がギャーギャーと騒ぐ中で、こくりと偽みっちゃんが向かい合って椅子に座る。

 真剣な無表情こくりと、ニタァッとした気持ちの悪い笑みを浮かべる偽みっちゃん。

 そして、みっちゃんの「誕生日なのにいい!」と言う悲痛な叫びを合図にして、二人は同時に食事を始めた。

 しかし、最初はこくりに分が悪かった。


「いただきます」


 お利口さんのこくりは、しっかりといただきますをして食べ始めたのだ!

 だけど、お利口さんとは程遠い偽みっちゃんはそれをしない。

 まさかのスタートに出遅れると言うハンデを背負ってしまったこくりは、ピザ一切れ分の差をつけられてしまった。


「大変ですわ! 狐栗こくりさんが出遅れましてよ!」


「うん、そうだね……あれ? ダイヤさんはこくりちゃんの青い炎を見ても驚かないの?」


「今時CGで驚く人なんていませんわよ。先程あれを浴びても、あなたのお母様は何とも無かったでしょう? 驚くほどの事ではありませんわ」


「そ、そうだね」


「美都子、お母さんは今から二人が食べる料理を作るわね」


「あ、うん……え? 作るの?」


 みっちゃんママが何故かはりきり出して、台所で料理を始める。

 すると、まるで入れ替わるかのように、お狐さまとグマ子がてんぷらと一緒にやって来た。


「あれー? みつこちゃんが二人いるわ~」


「クューン?」


「むむう。美都子よ、これはどうなっておるのだ? 何故もう一人おるお主と、燐火を全身に纏った狐栗が競うように食事をしておるのだ?」


「わたしが聞きたいよ」

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