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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第8話 誕生日はケチャップ色
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3時間目 友情のデザート(3)

 幼稚舎の砂場で突如始まったみっちゃんとカナブンちゃんの二人のバトル。

 二人の横には水の入ったバケツが並べられている。

 みっちゃんとカナブンちゃんは睨み合い、そして、こくりがスタートの合図をする。


「第一階砂の像対決の試合開始です」


 みっちゃんは開始と同時にバケツを掴んで水をばらまき、カナブンちゃんはスコップで砂をすくってバケツの中に入れていく。

 と言うわけで、始まったのは砂場の砂を使った図工対決。

 どちらがより凄い作品を作れるのか、競い合うのだ。


 二人を見守るこくりは審判だ。

 公平にこの戦いをジャッジする為に、その眠気眼な無表情で二人を見る。


「きゃあっ。水が跳ねましたわ!」


「ふっふっふっ。ダイヤさん、悪いけど早くもわたしが勝ったも同然みたいだね」


「何ですって!?」


「お水を怖がっていたら、砂遊びは出来ないんだよ!」


 最初は全然そんな事が無かったのに、今のみっちゃんはノリノリである。

 こくりが決闘だなんて言いだした時は動揺しっぱなしだったけど、決闘内容が砂で像を作るなんてものだから、安心してやる気になったのだ。

 逆にカナブンちゃんは動揺して、少し引き気味だ。


 カナブンちゃんは根っからのお嬢さまなので、泥だらけになったりと汚れる事が苦手なのだ。

 しかし、みっちゃんがあおった事で、カナブンちゃんの闘志に再び火がついた。


「お友達だとしても、美都子さんには負けませんわ!」


 カナブンちゃんもみっちゃんと同じく、水が跳ねても砂まみれになっても、気にせず作品を作り始めた。

 そして、二人の戦いの行く末を見守るこくり。

 二人の芸術センスがキラリと光り、どんどんと完成に近づいていく。


 みっちゃんが砂を固めて作っているのは、ペットのてんぷら。

 たぬたぬしい見た目を目指し、若干にゃんこに見えなくもないたぬき。


 カナブンちゃんが砂を固めて作っているのは、大きなわんこ。

 こちらもみっちゃんと同じくカナブンちゃんが飼っているペットで、シベリアンハスキーだ。


 両者ともに譲らない真剣さに、こくりも真剣な眠気眼を向けて、ぐ~とお腹を空かせて鳴らす。

 するとそんな時、大事件が発生してしまう。


いいううぅおおおおおおお!」


 不意に聞こえたみっちゃんを呼ぶ声。

 その声は何やら怒気を孕んでいて、その声をよく知っているみっちゃんが顔を青ざめさせてハッとなる。

 そして、みっちゃんだけでなく、こくりもカナブンちゃんも来訪者に視線を向けた。


「いつまで遊んでるの! お母さんずっと校門で待ってたんだよ!」


「ひゃいいいいい! ごめんなさい!」


 怒鳴り声を上げて現れたのは、みっちゃんのママン。

 何故こんなにも激おこなのかなんて、言うまでも無く当然の事。

 みっちゃんが放課後の勉強を終えた後に、いつものように職員室で電話を借りて、迎えに来てもらっていたのだ。

 そして、みっちゃんはその事を思いっきり忘れていた。

 とんだ大失態である。

 しかし、その時だ。


 決闘の場に突然現れた乱入者を目の前にして、カナブンちゃんが前に出る。

 そして、みっちゃんを庇うように立ち、みっちゃんの母親を睨みあげた。


「美都子さんのお母様かと存じますが、いきなり事情を聞かずに怒鳴り上げるなど、笑止ですわね。もう少しお子さんの事を――」


「事情も何も、しっかり君と遊んでいるのをこの目で見たから怒ってるの! それに君ねえ。うちの娘を庇ってくれるのはありがとう。だけど、君も同じよ! あっちを見なさい!」


 カナブンちゃんの言葉を遮り、カナブンちゃんにも怒るみっちゃんママ。

 言われてカナブンちゃんが視線を他に移すと、その先には、オロオロした様子の執事の姿が。

 と、言うわけで、カナブンちゃんも執事を待たせて砂遊びである。

 偉そうなことは言えません。

 怒られて当然なのだ。

 しかし、カナブンちゃんはちっとも悪いと思わない。


「あら? わたくしの執事がどうかしまして?」


「どうかしまして? じゃないでしょお! 何かあったんじゃって心配してたのよ! だから私が連れて来たの! 謝りなさい! 美都子もよ!」


「ひいいいい! ごめんなさいいいい!」


「なんでわたくしが謝らなけ――」


「ほら! ダイヤさんも謝って!」


 みっちゃんが慌てて頭を下げ、更にはカナブンちゃんの頭を掴んで下げさせようとする。


「――ちょっと! 美都子さんおやめなさいな! わたくしは――」


「いいから! 早く謝って! ごめんなさいしよ?」


「嫌ですわ! 執事なんて待たせとけばいいのですわ!」


「こくりは謝った方が良いと思います」


「何ですって!?」


 みっちゃんが慌て、カナブンちゃんが抵抗する中、そこにこくりが颯爽と何かをモグモグしながら現れる。


「あの執事のお爺さんが、カナブンちゃんと遊んでくれたお礼にとバームクーヘンをくれました。あのお爺さんは良い人です。バウムクーヘンも美味しいので謝るべきです」


「あなたは買収されただけではございませんの! わたくしは悪い事なんてしてないから謝らないですわ!」


「決闘は法律で禁止された悪い事です。謝るべきです」


「あなたが決闘と言いだしたのでしょう!?」


 最早めちゃくちゃである。

 バウムクーヘンに釣られて裏切ったこくりに、真っ青な顔でママンに怯えるみっちゃんと、絶対に謝りたくないカナブンちゃん。

 みっちゃんママは激おこで目が怖いし、執事さんはそんなみっちゃんママに逆に動揺してしまっている。

 そんなカオスなこの空間が解除されたのは、理事長の実果とお狐さまがそれから少し経って現れた時の事であった。

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