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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第7話 年越しノーズ
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6時間目 年末挑戦ガール(4)

 学園の七不思議の一つ“ハナだらけの生物室”。

 それは生物室に咲く満開のハナ。

 しかし、そのハナは花にあらず。


 こくりが駆けつけた事で目を覚ましたみっちゃんは、初等部の生物室に一人・・でやって来ていた。

 しかも、お狐さまのお守りを持っていない。

 どう考えても危険だが、これには理由があった。


(上手におとり役がんばるぞー)


 みっちゃんが心の中で気合を入れて、生物室の中を動き回る。

 と言うわけで、みっちゃんはおとりをする為に、あやかしを遠ざけてしまうお守りを持たずに一人で来たのだ。

 しかも、これはなんとみっちゃん本人の提案である。


 こくりとお狐さまは危ないと止めたのだが、隠れて見守ってくれれば大丈夫だと、みっちゃんが説得したのだ。

 それに、実はみっちゃんも少しオコだった。


 みっちゃんはこくりの家に行くのを本当に楽しみにしていた。

 それなのに、夢落ちにされてしまった。

 そう言う事もあり、例え妖が相手だろうと、みっちゃんはノリノリで立ち向かうのである。

 しかし――


「アレー? ワタシノバッグドコカナー?」


 ――みっちゃんは棒読みのダイコン役者だった。


 そんなわけで始まったみっちゃんの囮作戦。

 概要がいようは、目を覚ましたから鞄を取りに来たみっちゃんが、言葉に出して探しているアピールする事で、妖を誘いだす。

 と言う単純な作戦。


「ドコカナー? ナイナー?」


 みっちゃんの華麗なる棒読み小芝居。

 演技が下手すぎで、その努力と勇気と……後は、うん。

 挑戦しようと言うその心構えは、立派だし認めよう! みたいな感じの雰囲気。

 お世辞にも上手いと言えないこの演技。


 ところが、荷が重すぎたかと思えるこの作戦は、意外と上手く妖を釣り上げる事に成功する。

 そして、みっちゃんは「ぴぇ……っ」と小さく悲鳴を上げて、動きを止める。


 みっちゃんの目の前に……いいや、周囲に現れたのは、床や壁や天井に咲く一面の畑。

 この怪異の正体は“女の子の匂いを嗅ぎたいと言う、欲にまみれた思念”が集合して生まれた変異体の妖。


 そう、“ハナだらけの生物室”とは、女の子の匂いを嗅ぐ“鼻だらけの生物室”の事だったのだ。

 被害にあった少女たちが記憶を無くしていたのは、決して直接害を与えられたわけでは無い。

 このあまりにも気味が悪い光景を目にして、気を失うついでにトラウマとなって、それを見た前後の記憶が抹消されただけだった。

 それ程に見事に鼻が咲き乱れ、おぞましく目に映るのだ。


 尚、夢の中で起きた体験は、この妖の善意? からくるもの。

 匂いを嗅がせてもらったお返しに、良い夢をと出たサービスだった。

 とは言え、被害者からしたら、そんなサービスはいらないし恐怖でしかない。


 それはそうと、この怪異、実は時間を選ばない。

 流石はハナだけあって、朝でも昼でも見事に咲いてしまう。

 但し、条件は無害な少女が一人でいる時だけ。

 しかも、新校舎と旧校舎をワープ感覚で行き来して逃げる。

 だから、お狐さまやこくりは捕まえる事が出来なかった。


 そして今、無害なみっちゃんの小さな悲鳴を聞き、こくりが颯爽さっそうと現れる。


「変態を焼却です」


 狐耳のカチューシャをピクリと動かし、お尻の青白い炎で出来たモフモフ狐尻尾を揺らめかせ、“燐火りんか”の炎を火炎放射の如くき散らす。

 炎は全て燐火なので、もちろん実害は全く無いが、みっちゃんは慌てるように炎の外へと逃げ出した。


「うぅ……気持ち悪い。見るの二回目なら平気だと思ったけど、やっぱ無理ぃ~」


「よく頑張ったな、美都子みつこ。おかげでうれいのない良い新年を迎えた」


「うん……うん? 新年……?」


「はい。12時回ってます」


「え……? えええええええええええ!? うそおおおおお!」


 みっちゃんは慌てて生物室にある時計を見る。

 すると、確かに12時を既に過ぎていて、今は12時3分だった。


「そんなああああああ……」


 妖女学園初等部一年絹蔦(きぬつた)美都子みつこ6才。

 鼻おばけと一緒に年を越してしまったまさかの展開。


 あまりにもショックでがっくりと項垂れて、みっちゃんはしょぼんとする。

 すると、こくりは変態鼻おばけを焼却しながら、相変わらずの眠気眼な無表情を向けて、珍しく口角を上げた。


「明けましておめでとうございます。みっちゃん、今年もよろしくお願いします」


「……うん。明けましておめでとう、こくりちゃん。今年もよろしくね」


 青白い炎で燃える変態鼻おばけを背景にして、こくりとみっちゃんは新年を迎えたのだった。

<行進時間と頻度の変更のお知らせです>


7月(明日)から、生活環境が変わる為、更新頻度と時間帯を変更します。

変更日時は今のところ勝手ながらに不明の為、ツイッターで更新のお知らせをするのでよろしくお願いします。

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